五常訓 / 巻之一・総論
一元亨利貞の四德は、天道の物を生じ給ふ生理の、春夏秋冬の四時に行はるゝ次第にて、其始終なり。天道の行はるゝ序、其時を以ていへば春夏秋冬とし、其理を以ていへば元亨利貞とし、其氣は生長收藏とす。元ははじめとよむ。生理の始なり。時においては春とす。春は元氣初て行はれて、萬物生ず。是天道の、萬物を生ずる德の初なり。人にうけては仁とす。亨はとほるとよむ。生理の通るなり。時においては夏とす。夏は萬物さかんに長ず。人にうけては禮とす。利は遂ぐるなり。生理のとぐるなり。時においては秋とす。秋は萬物の生理收りて、草木みのる。是利なり。人にうけては義となる。貞は正しとよむ。生理の正しく成れるなり。時においては冬とす。
新字:一元亨利貞の四徳は、天道の物を生じ給ふ生理の、春夏秋冬の四時に行はるゝ次第にて、其始終なり。天道の行はるゝ序、其時を以ていへば春夏秋冬とし、其理を以ていへば元亨利貞とし、其気は生長収蔵とす。元ははじめとよむ。生理の始なり。時においては春とす。春は元気初て行はれて、万物生ず。是天道の、万物を生ずる徳の初なり。人にうけては仁とす。亨はとほるとよむ。生理の通るなり。時においては夏とす。夏は万物さかんに長ず。人にうけては礼とす。利は遂ぐるなり。生理のとぐるなり。時においては秋とす。秋は万物の生理収りて、草木みのる。是利なり。人にうけては義となる。貞は正しとよむ。生理の正しく成れるなり。時においては冬とす。
書き下し
一元亨利貞の四徳は、天道の物を生じ給ふ生理の、春夏秋冬の四時に行はるる次第にて、其始終なり。天道の行はるる序、其時を以ていへば春夏秋冬とし、其理を以ていへば元亨利貞とし、其気は生長収蔵とす。元ははじめとよむ。生理の始なり。時においては春とす。春は元気初て行はれて、万物生ず。是天道の、万物を生ずる徳の初なり。人にうけては仁とす。亨はとほるとよむ。生理の通るなり。時においては夏とす。夏は万物さかんに長ず。人にうけては礼とす。利は遂ぐるなり。生理のとぐるなり。時においては秋とす。秋は万物の生理収りて、草木みのる。是利なり。人にうけては義となる。貞は正しとよむ。生理の正しく成れるなり。時においては冬とす。
現代語訳
元亨利貞の四徳は、天の道が物を生じられる生きる理が、春夏秋冬の四季に行われる順序であって、その始めと終わりです。天の道が行われる順序は、その時でいえば春夏秋冬とし、その理でいえば元亨利貞とし、その気は生長収蔵とします。元は「はじめ」と読みます。生きる理の始まりです。時においては春とします。春は元気が初めて行われて、万物が生じます。これは天の道が万物を生ずる徳の始まりです。人に受けては仁とします。亨は「とおる」と読みます。生きる理が通ることです。時においては夏とします。夏は万物が盛んに伸びます。人に受けては礼とします。利は遂げることです。生きる理が遂げられることです。時においては秋とします。秋は万物の生きる理が収まって、草木が実ります。これが利です。人に受けては義となります。貞は「ただし」と読みます。生きる理が正しく成ったことです。時においては冬とします。
解説
この章句が説くこと
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『童子問』卷上問ふ、平生論孟を熟読すと雖も、然れども未だ其の要領を得ず。願はくは詳らかに教へられんことを。曰く、可なり。聖門学問の第一字は是れ仁なり。義以て配と為し、礼以て輔と為し、忠信以て之が地と為す。仁の義に与けるや、猶ほ陰の陽に与けるがごとし。故に曰く、義以て配と為すと。相離るることを得ざるを言ふなり。礼は防閑の在る所なり。故に曰く、礼以て輔と為すと。礼に非ざれば則ち以て仁を存すること無きを言ふなり。己を尽くす之を忠と謂ひ、実を以てする之を信と謂ふ。乃ち学問の基本なり。故に曰く、忠信以て之が地と為すと。猶ほ屋を造るに基址有るがごとし。是れ其の総要なり。皆夫の仁の徳を成す所以なり。
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『五常訓』巻之二・仁之上一仁は義礼智信を兼ねて其中にあれども、五の者をならべ云ふ時は、各一理ありて、仁を相助くべし。仁の理、義を得ざれば宜しく行はれず。礼を得ざれば節分なくして立たず。智を得ざれば善悪を明かに知らず。信を得ざれば偽りありて守りがたし。四の者皆そなはりて、仁の道行はる。然れば義礼智信は、もと仁より出でて、仁をたすくる理なり。
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『慎思録』巻之一仲虺の誥に曰く、克く寛に克く仁に、信を兆民に彰かにすと。六経の仁信を言ふは、此に始まる。又曰く、義を以て事を制し、礼を以て心を制すと。六経の義礼を言ふは、此に始まる。又曰く、天乃ち王に勇智を錫ふと。六経の智勇を言ふは、此に始まる。湯誥に曰く、惟れ皇いなる上帝、衷を下民に降す。恒の性有るに若ひ、克く厥の猷を綏んずるは、惟れ后なりと。六経の性を言ふは、此に始まる。太甲に曰く、鬼神は常に享くること無し、克く誠なるに享くと。六経の誠を言ふは、此に始まる。
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『五常訓』巻之一・総論一仁義二理あるにあらず。仁の節あるは義なり。仁義の二を以て、礼智を兼ぬ。故に仁をいへば、義は其内にこもる。仁義をいへば、礼智は其内にこもる。仁は礼を兼ね、義は智を兼ぬ。春は夏を兼ね、秋は冬を兼ぬるが如し。夏は春気の長ずるなり。冬は秋気のかくるるなり。仁義を以て礼智を兼ぬるは、礼は仁のあらはるるなり。礼義三百、威儀三千は、皆仁の発せるなり。是仁礼一理なり。智は義のかくれたるなり。義の、善悪をたちわかつ事、利刀の物を断つが如くなるは智の、是非することの明なるより出づ。是義智一理なることを見つべし。仁礼は陽に属し、義智は陰に属す。仁義の二をいへば、春生じ夏長ずるは仁なり。秋収り冬蔵るるは義なり。四徳にわかちていへば、春は仁なり。夏は礼なり。秋は義なり。冬は智なり。
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