五行大義 / 第十四論雑配・第二論配声音
兩敵相當。使人去敵營一百二十步。以管注耳聽之。聞隆隆如車。如雷。如鼓聲者。宮也。其將寬和有信。聞金石相和。轟轟擊攻。如鍾磬霹靂聲者。商也。其將威怒好殺。宜數忿之。聞如奔馬炎炮掣裂聲者。徵也。其將猛烈勇敢。難與爭鋒。聞肅肅習習。如動樹木。如人呼愁愁聲者。角也。其將仁恕不可欺。聞滔滔如流水揚波。激氣相笑聲者。羽也。其將貪冒多姧謀。審此五音。以知敵性。候風之聲。亦皆如之。此竝論音聲之狀。故以備釋。
新字:両敵相当。使人去敵営一百二十歩。以管注耳聴之。聞隆隆如車。如雷。如鼓声者。宮也。其将寛和有信。聞金石相和。轟轟撃攻。如鍾磬霹靂声者。商也。其将威怒好殺。宜数忿之。聞如奔馬炎炮掣裂声者。徴也。其将猛烈勇敢。難与争鋒。聞粛粛習習。如動樹木。如人呼愁愁声者。角也。其将仁恕不可欺。聞滔滔如流水揚波。激気相笑声者。羽也。其将貪冒多姧謀。審此五音。以知敵性。候風之声。亦皆如之。此並論音声之状。故以備釈。
書き下し
両敵相当たらば、人をして敵営を去ること一百二十歩にして、管を以て耳に注ぎて之を聴かしむ。隆隆として車の如く、雷の如く、鼓声の如きを聞く者は、宮なり。其の将は寛和にして信有り。金石相和し、轟轟として撃攻し、鍾磬霹靂(へきれき)の声の如きを聞く者は、商なり。其の将は威怒して殺を好む。宜しく数々(しばしば)之を忿(いか)らすべし。奔馬炎炮(えんぽう)掣裂(せいれつ)の声の如きを聞く者は、徴なり。其の将は猛烈勇敢にして、与(とも)に鋒を争い難し。粛粛習習として、樹木を動かすが如く、人の呼びて愁愁たる声の如きを聞く者は、角なり。其の将は仁恕にして欺くべからず。滔滔として流水の波を揚げ、激気相笑う声の如きを聞く者は、羽なり。其の将は貪冒(どんぼう)にして姧謀(かんぼう)多し。此の五音を審らかにして、以て敵の性を知る。風を候(うかが)うの声も、亦皆之の如し。此れ並びに音声の状を論ず、故に以て備えて釈す。
現代語訳
「二つの軍が向かい合ったときは、人を敵の陣営から百二十歩のところまで行かせ、管を耳に当てて敵陣の音を聴かせる。ごろごろと車のような、雷のような、太鼓のような音が聞こえるなら、それは宮である。その将軍は寛大で穏やかで、信義がある。金と石が打ち合わさるように、とどろいて打ちかかり、鍾や磬や落雷のような音が聞こえるなら、それは商である。その将軍は威張って怒りっぽく、殺すことを好む。たびたびこれを怒らせるのがよい。駆ける馬や、燃えはぜる炎、引き裂くような音が聞こえるなら、それは徴である。その将軍は猛々しく勇敢で、正面から鋒を交えるのは難しい。さわさわ、そよそよと木々を揺らすような、人が呼んで愁えるような音が聞こえるなら、それは角である。その将軍は思いやりが深く、欺くことはできない。ざあざあと流れる水が波を立て、気が激して笑い合うような音が聞こえるなら、それは羽である。その将軍は欲深く、悪だくみが多い。この五つの音を聞き分けて、敵の性質を知るのである。風をうかがって聞く音も、みなこれと同じである」。これらはどれも音と声のありさまを論じたものであるから、ここに備えて解き明かしておく。
解説
この章句が説くこと
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六韜・五音武王 太公に問ひて曰く、「律音の声、以て三軍の消息、勝負の決を知るべきか」と。太公曰く、「深き哉、王の問ひや。夫れ律管は十二、其の要は五音あり。宮・商・角・徴・羽、此れ其の正声にして、万代 易はらず。五行の神は、道の常なり、以て敵を知るべし。金・木・水・火・土、各々其の勝つ所を以て之を攻む。古者、三皇の世、虚無の情もて以て剛彊を制す。文字あること無く、皆な五行に由る。五行の道は、天地の自然なり。六甲の分は、微妙の神なり。其の法は、天 清浄にして陰雲風雨なきを以て、夜半に軽騎を遣はし、往きて敵人の塁に至り、去ること九百歩の外にて、偏く律管を持して耳に当て、大呼して之を驚かす。声ありて管に応ずれば、其の来たること甚だ微かなり。角の声 管に応ずれば、当に白虎を以てすべし。徴の声 管に応ずれば、当に玄武を以てすべし。商の声 管に応ずれば、当に朱雀を以てすべし。羽の声 管に応ずれば、当に勾陳を以てすべし。五管の声 尽く応ぜざる者は、宮なり、当に青龍を以てすべし。此れ五行の符、勝ちを佐くるの徴、成敗の機なり」と。武王曰く、「善き哉」と。太公曰く、「微妙の音は、皆な外候あり」と。武王曰く、「何を以て之を知らん」と。太公曰く、「敵人 驚動すれば、則ち之を聴く。枹鼓の音を聞く者は、角なり。火光を見る者は、徴なり。金鉄矛戟の音を聞く者は、商なり。人の嘯呼の音を聞く者は、羽なり。寂寞として聞くこと無き者は、宮なり。此の五つの者は、声色の符なり」と。
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五行大義・第十四論雑配・第二論配声音子産曰く、章(あら)われて五声と為る、と。蔡伯喈云う、耳に通ずる者を声と為す、と。青は角声を作し、白は商声を作し、黒は羽声を作し、赤は徴声を作し、黄は宮声を作す。律歴志に云う、角とは触なり。陽気蠢動(しゅんどう)し、万物地に触れて生ずるなり。徴(ち)とは祉なり。万物大いに盛んにして蕃祉(はんし)するなり。宮とは中なり。中央に居り、四方に暢(の)び、唱始施生して、四声の経為り。商とは章なり。物成りて章明なり。羽とは宇なり。物蔵して聚萃(しゅうすい)し、之を宇覆(うふく)するなり、と。楽緯に云う、春気和すれば、則ち角声調い、夏気和すれば、則ち徴声調い、季夏の気和すれば、則ち宮声調い、秋気和すれば、則ち商声調い、冬気和すれば、則ち羽声調う、と。楽記に曰く、宮は君為り。故に宮乱るれば則ち荒(すさ)み、其の君驕る。商は臣為り。商乱るれば則ち陂(かたむ)き、其の臣壊る。徴は事為り。徴乱るれば則ち哀しみ、其の事勤む。羽は物為り。羽乱るれば則ち危うく、其の財匱(とぼ)し。角は民為り。角乱るれば則ち憂え、其の民怨む。五者乱れざれば、則ち天下和平にして、弊敗の音無し、と。素問に云う、木は音角、声に在りては呼と為す。火は音徴、声に在りては笑と為す。土は音宮、声に在りては歌と為す。金は音商、声に在りては哭と為す。水は音羽、声に在りては呻と為す、と。楽記に曰く、楽とは、音の由りて生ずる所なり。其の本は人心の物に感ずるに在り。是の故に哀心感ずる者は、其の声噍(しょう)にして以て殺(さい)す。楽心感ずる者は、其の声嘽(せん)にして以て緩やかなり。喜心感ずる者は、其の声発して以て散ず。怒心感ずる者は、其の声粗にして以て厲(はげ)し。貞心感ずる者は、其の声直にして以て廉なり。愛心感ずる者は、其の声和して以て婉なり。六者は、性に非ざるなり。
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五行大義・第十四論雑配・第二論配声音兌は秋分を主る。天地万物人功皆以て定まる。故に聖王は法りて天を承け、以て爵禄を定む。爵禄は其の能を過ぎず。宮は君為り、商は臣為り。商は章なり。臣の君の功徳を章明にするを言う。尊卑に位有り、位に物有り、物に宜しき有り。功成る者は爵賞し、功敗るる者は刑罰す。故に楽は鍾を用う。乾は立冬を主る。陰陽終わりて復た始まり、万物死して復た蘇る。故に聖王は法りて天を承け、以て刑法を制す。一を誅して千を動かし、一を殺して万を感ぜしめ、死者をして恨まず、生者をして怨まざらしむ。故に楽は柷梧(しゅくご)を用う、と。国語に曰く、瓦糸琴瑟は宮を尚(たっと)び、鍾金は羽を尚び、石は角を尚び、匏竹は徴を尚び、革木は商を尚ぶ。呂以て楽を和し、律以て声を平らかにす。金石以て之を動かし、糸竹以て之を行い、歌以て之を詠じ、匏以て之を宣べ、瓦以て之を賛(たす)け、革木以て之を節す。物其の常を得るを楽と曰い、奪う所を撃と曰い、相保つを和と曰い、細大踰(こ)えざるを平と曰う、と。瓦糸は皆大なり、故に宮を尚ぶ。子母相応ずるの道なり。鍾金の羽を尚ぶも、亦然り。石の角を尚ぶとは、石は金なり、角と牝牡(ひんぼ)相和するの義為り。匏は土なり、竹は木なり、徴を尚ぶも、亦子母相応ずるなり。革木は倶に角にして、商を尚ぶも、亦牝牡相和するを以てなり。宮声は和にして以て舒び、其の和は博くして以て柔らかく、脾を動かす。商声は散じて以て明らかに、其の和は温にして以て虚しく、肺を動かす。角声は防にして以て約やかに、其の和は静にして以て清く、肝を動かす。徴声は敗にして以て疾(はや)く、其の和は平にして以て均しく、心を動かす。羽声は疾にして以て虚しく、其の和は短にして以て散じ、腎を動かす。黄帝兵決に云う、
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五行大義・第十四論雑配・第二論配声音物に感じて而る後に動く。声を審(つまび)らかにして以て音を知り、音を審らかにして以て楽を知り、楽を審らかにして以て政を知りて、治道備わる、と。故に詩序に曰く、声文を成す、之を音と謂う。治世の音は安らかにして以て楽しむ、其の政和すればなり。乱世の音は怨みて以て怒る、其の政乖(そむ)けばなり。亡国の音は哀しみて以て思う、其の民困しめばなり、と。大戴礼の観人篇に云う、誠其の中に在れば、必ず諸(これ)を外に見る。其の見(あらわ)るるを以て、其の隠るるを占い、其の細を以て、其の大を占う。声は其の実に象る。気初めて物を生じ、物生じて声有り。声に剛柔清濁有り、好悪咸(み)な声に発す。故に心気嘩誕(かたん)なる者は、其の声流散し、心気順信なる者は、其の声順節あり、心気鄙戻(ひれい)なる者は、其の声腥醜(せいしゅう)なり、心気寛柔なる者は、其の声温和なり。故に聖人は其の声を聴き、其の色を観て、其の善悪を知る、と。夫れ独り発する者は之を声と謂い、合和する者は之を音と謂う。毛詩序に云う、声文を成す、之を音と謂う、と。故に五声に因りて八音有り。楽緯に云う、物は三を以て成り、五を以て立つ。三と五とは八の如し、故に音は八を以てす、と。八音は、金・石・糸・竹・土・木・匏(ほう)・革なり。以て宮・商・角・徴・羽を発す。金は鍾為り、石は磬(けい)為り、糸は絃為り、竹は管為り、土は塤(けん)為り、木は柷圄(しゅくぎょ)為り、匏は笙為り、革は鼓為り。鼓は震を主り、笙は巽(そん)を主り、柷圄は乾を主り、塤は艮(ごん)を主り、管は坎(かん)を主り、絃は離を主り、磬は坤を主り、鍾は兌(だ)を主る。楽緯の汁図徴(きゅうとちょう)篇に云う、坎は冬至を主る。宮とは君の象なり。人に君有りて、然る後に万物成る。気に黄鍾(こうしょう)の宮有りて、然る後に万物調う。天下を始めて正す所以なり。
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説苑・修文凡そ音は、人心に生ずる者なり、情中に動きて聲に形る、聲文を成す之を音と謂う。是の故に治世の音は安んじて以て樂しく、其の政和す。亂世の音は怨みて以て怒り、其の政乖く。亡國の音は哀しみて以て思い、其の民困しむ。聲音の道は、政と通ずるなり。宮は君と為り、商は臣と為り、角は民と為り、徵は事と為り、羽は物と為る。五音亂るれば則ち法無し。法無きの音は、宮亂るれば則ち荒れ、其の君驕る。商亂るれば則ち陂き、其の官壞る。角亂るれば則ち憂い、其の民怨む。徵亂るれば則ち哀しみ、其の事勤す。羽亂るれば則ち危うく、其の財匱し。五者皆亂るれば、代相淩ぐ、之を慢と謂う。此くの如くなれば則ち國の滅亡日無し。鄭・衛の音は、亂世の音なり、慢に比す。桑間・濮上の音は、亡國の音なり、其の政散じ、其の民流れ、上を誣いて私を行いて止むべからず。
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