言志四録 / 言志耋録 第二百九十六条 老人と謀るは午中
欲就老人謀事。宜在午中前後。至於昏暮。則思慮易錯。
書き下し
老人に就きて事を謀らんと欲せば、宜しく午中の前後に在るべし。昏暮に至れば、則ち思慮錯り易し。
現代語訳
老人に相談して物事を計ろうとするなら、昼ごろの前後にするのがよい。日暮れになると、考えが誤りやすくなる。
解説
老人に相談事を持ちかけるなら昼前後がよい、夕暮れになると考えが誤りやすくなるから、と一斎は言います。八十を過ぎた自らの経験から出た、きわめて具体的な助言でしょう。年を取ると、一日のうちでも頭のはたらく時間帯とそうでない時間帯の差が大きくなる。それを自覚し、周囲にも伝えているところに、一斎の率直さが表れています。この後の数条でも、老いによる判断力の衰えとその自戒が続きます。年長者に限らず、人の判断力は時間帯や疲労によって大きく揺らぐものです。重要な判断や相談をいつ行うかを意識するだけでも、誤りを減らせるかもしれません。
この章句が説くこと
老い判断力時間帯相談自覚
関連する章句
-
言志四録・言志耋録 第二百九十八条 書して以て自ら警む老人は強壮を弱視する勿れ。幼冲を軽侮する勿れ。或は過慮少断して、事期を錯誤する勿れ。書して以て自ら警む。
-
言志四録・言志晩録 第二百六十二条 壮者を蔑視する勿れ吾壮齢の時、事事矩を踰ゆ。七十以後、事事矩に及ばず。凡そ事有る時は、須らく少壮の者と商議して、以て吾が逮ばざるを輔くべし。老大を挟みて以て壮者を蔑視すること勿くんば、可なり。
-
言志四録・言志耋録 第二百九十九条 老人の錯記誤認老人は数年前の事に於て、往往錯記誤認有り。今漫りに人に語れば、少差を免れず。或は障碍を做す。慎まざるを容れず。
-
言志四録・言志耋録 第三百条 老人は気急なり老人は気急なり。事、速成を好む。自重すること能はず。含畜すること能はず。又妄りに人の言を信じ、其の虚実を察すること能はず。警めざるべけんや。
-
言志四録・言志晩録 第二百六十六条 老人は尤も言を慎むべし老人の話は多く信を取る。尤も宜しく言を慎むべし。
-
言志四録・言志耋録 第二百九十七条 有徳の老人は昏瞶無し極老人は思慮昏瞶す。譬へば猶ほ水に影して物倒れ、舟行きて岸動くがごとく、彼此を弁ぜず。唯だ有徳の老人は此の昏瞶無し。之を養ふこと素有るを以てなり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る