言志四録 / 言志耋録 第二百五十五条 臣無きを患ふること莫かれ
爲人君者。莫患於無臣。宜患於無君。卽君德也。爲人臣者。莫患於無君。宜患於無臣。卽臣道也
新字:為人君者。莫患於無臣。宜患於無君。即君徳也。為人臣者。莫患於無君。宜患於無臣。即臣道也
書き下し
人君為る者は、臣無きを患ふること莫かれ。宜しく君無きを患ふべし。即ち君徳なり。人臣為る者は、君無きを患ふること莫かれ。宜しく臣無きを患ふべし。即ち臣道なり。
現代語訳
君主たる者は、良い臣下がいないことを憂えてはならない。自分に君主たるにふさわしいものが欠けていることを憂えるべきである。それがすなわち君主の徳である。臣下たる者は、良い君主がいないことを憂えてはならない。自分に臣下たるにふさわしいものが欠けていることを憂えるべきである。それがすなわち臣下の道である。
解説
上も下も、相手の不足を嘆く前に自分の不足を憂えよと説いた一条です。君主が「良い臣下がいない」と嘆くのではなく、自分が君主として欠けていないかを憂える。臣下が「良い主君に恵まれない」と嘆くのではなく、自分が臣下として欠けていないかを憂える。論語の「人の己を知らざるを患へず、己の能無きを患ふ」と同じ形の考え方で、それがそのまま君徳であり臣道だと一斎は言います。対句になっていることで、責任を相手に押しつけ合う構図そのものが崩されています。「部下が育たない」「上司に恵まれない」と感じたとき、その言葉を自分に向け直してみる、という問いを与えてくれる一条です。
この章句が説くこと
君臣自省責任上下統率
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