言志四録 / 言志耋録 第二百四十七条 大砲気船も水火の理
水火。是天地之大用。憑物成形。無有定體。近觀西洋所出。奇巧小大器物。葢皆盡水火之理。以製之。如大砲氣船。亦不外於水火之理。
新字:水火。是天地之大用。憑物成形。無有定体。近観西洋所出。奇巧小大器物。葢皆尽水火之理。以製之。如大砲気船。亦不外於水火之理。
書き下し
水火は、是れ天地の大用にして、物に憑りて形を成し、定体有ること無し。近ごろ西洋より出づる所の奇巧小大の器物を観るに、蓋し皆水火の理を尽くして、以て之を製す。大砲・気船の如きも、亦水火の理に外ならず。
現代語訳
水と火は天地の大きな働きであって、物に依って形をなし、決まった形体を持たない。近ごろ西洋から出てくる、精巧な大小の器物を見ると、思うにみな水と火の理を究め尽くして作られている。大砲や蒸気船のようなものも、やはり水と火の理にほかならない。
解説
水と火の議論を、西洋の技術の理解へとつなげた一条です。水と火は決まった形を持たず、物に宿って形をとる。西洋から入ってくる精巧な器物は、この水と火の理を突き詰めて作られており、大砲も蒸気船もその例外ではないと一斎は見ます。火薬の爆発で弾を飛ばす大砲、水を火で熱した蒸気で進む船は、まさに水と火の力の応用です。ペリー来航の前後、八十を越えた一斎が、西洋の技術を得体の知れないものとしてではなく、自分の知る理で理解しようとしている姿がうかがえます。新しい技術に出会ったとき、驚くだけでなく、その原理を自分の言葉で捉え直そうとしているか、考えるきっかけになります。
この章句が説くこと
水火西洋技術窮理原理
関連する章句
-
言志四録・言志耋録 第二百四十六条 天地の用は水火天地の用は、水火より大なるは莫し。天地は体なり。満世界は皆水火なり。故に敬すべき者は、水火に如くは莫く、懼るべき者も、亦水火に如くは莫し。
-
言志四録・言志耋録 第二百四十五条 水火は霊物水火は、霊物なり。民は水火に非ざれば、則ち生活せず。水火は、又能く人を焚溺す。天地生殺の権は、全く水火に在り。
-
言志四録・言志晩録 第百九条 攻法あれば守法あり攻法有れば、必ず守法有り。大炮を禦ぐに、聞く、西蕃は鍛へたる牛革を用ふと。形は屋ほど大なりと。須らく査すべし。
-
言志四録・言志後録 第百三十三条 水火は中に適ふべし人物は水火を凝聚して、此の体軀を成す。故に水火に非ざれば生活せず。好む所も亦水火に在り。但だ宜しく中に適ひて偏勝せざらしむべし。水勝てば則ち火滅し、火勝てば則ち水涸る。体軀も亦保つ能はず。
-
言志四録・言志録 第百六十九条 洋説の理に近きを戒む泰西の説、已に漸く盛んなるの機有り。其の所謂窮理は、以て人を驚かすに足る。昔者程子は仏氏の理に近きを以て害と為せり。而るに今洋説の理に近きは、仏氏より甚だし。且つ其の出す所の奇技淫巧は、人を奢侈に導き、人をして覚えず駸駸然として其の中に入らしむ。学者当に亦淫声美色を以て之を待つべし。
-
言志四録・言志後録 第百三十四条 煙茶を嗜む自戒酒は、是れ水火の合なり。水は其の形にして火は其の気なり。故に体軀之を喜ぶ。煙茶は近代に起る。然れども人亦多く之を好む。茶は能く水の味を発し、煙は能く火の味を和するを以てなり。然れども多く服すべからず。多く服すれば則ち人を害す。況んや酒に於ては害尤も甚だし。余煙茶を嗜む。故に書して以て自ら戒む。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る