言志四録 / 言志耋録 第二百四十五条 水火は霊物
水火。靈物也。民非水火。則不生活。水火。又能焚溺人。天地生殺之權。全在水火。
新字:水火。霊物也。民非水火。則不生活。水火。又能焚溺人。天地生殺之権。全在水火。
書き下し
水火は、霊物なり。民は水火に非ざれば、則ち生活せず。水火は、又能く人を焚溺す。天地生殺の権は、全く水火に在り。
現代語訳
水と火は霊妙なものである。人々は水と火がなければ生きていけない。しかし水と火はまた、人を焼き、溺れさせることもある。天地が生かし殺す権能は、すべて水と火にある。
解説
水と火の二面性を説いた一条です。「民は水火に非ざれば生活せず」は孟子の尽心篇に見える言葉で、飲み水も煮炊きも、水と火なしには成り立ちません。ところが同じ水と火が、洪水や火事となって人を溺れさせ、焼き殺しもします。一斎は、天地が万物を生かしも殺しもする力は、すべてこの水と火にあるとまで言います。火事の多い江戸に暮らした人々にとって、水と火の恐ろしさは身近なものでした。前条の易の議論から続き、次の二条でも水と火を論じています。人を生かす力は、扱いを誤れば人を損なう力でもある。権限や資源、技術など、自分が手にしている強い力をどう扱っているかを考える材料になります。
この章句が説くこと
水火二面性畏敬自然生殺
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