言志四録 / 言志耋録 第百四十五条 頼る所有りて大業を規る
凡人有所賴。而後大業可規也。我有所守。而後外議不起也。若其妄作私智。所以招罪也。
新字:凡人有所頼。而後大業可規也。我有所守。而後外議不起也。若其妄作私智。所以招罪也。
書き下し
凡そ人は頼る所有りて、而る後に大業規るべし。我に守る所有りて、而る後に外議起らず。若し其れ妄作私智は、罪を招く所以なり。
現代語訳
およそ人は、頼みとするところがあって初めて、大きな事業を計画することができる。自分に守るところがあって初めて、外からの非難が起こらない。もし根拠なくみだりに事を起こし、自分だけの小ざかしい知恵をはたらかせるならば、それは罪を招くもととなる。
解説
大きな事業を起こすには拠りどころが、外からの批判を受けないためには守るべき一線が要る、と説いた一条です。拠りどころとは、道理であり、信頼できる人であり、確かな準備でもあるでしょう。それを欠いたまま「妄作」、すなわち根拠なく事を起こし、「私智」、すなわち自分だけの浅い知恵で押し切れば、失敗して咎めを受ける。一斎は次の条で、舟の楫艣と門の鎖鑰という比喩を使ってこの二つを言い換えています。新しい事業や改革に踏み出すとき、自分が何に頼り、何を守ろうとしているのかを言葉にできるかどうか。その点検の手がかりになる一条です。
この章句が説くこと
事業拠りどころ守り私智慎み
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