言志四録 / 言志耋録 第七十一条 視るに心を以てすれば明らか
視以目則暗。視以心則明。聽以耳則惑。聽以心則聰。言動亦同一理。
新字:視以目則暗。視以心則明。聴以耳則惑。聴以心則聰。言動亦同一理。
書き下し
視るに目を以てすれば則ち暗く、視るに心を以てすれば則ち明らかなり。聴くに耳を以てすれば則ち惑ひ、聴くに心を以てすれば則ち聡し。言動も亦同一理なり。
現代語訳
目で見れば物事はかえって暗く、心で見ればはっきりと見える。耳で聞けば迷い、心で聞けばよく聞き分けられる。言うことや振る舞うことも、同じ道理である。
解説
目で見るだけでは物事はかえって暗く、心で見てはじめて明らかになる。耳で聞くだけでは惑い、心で聞いてはじめて聡くなる。感覚器官はあくまで入り口であって、見たり聞いたりしたものを判断するのは心だ、ということです。『大学』の「心焉に在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず」とも通じます。一斎はさらに、言うことや行うことも同じだと付け加えます。口先だけの言葉や、心の伴わない振る舞いは、どこか空疎になるのです。会議で資料を目で追い、報告を耳で聞いていても、心がそこになければ本当の問題は見えません。注意を向けることの意味を改めて考えさせる一条です。
この章句が説くこと
心眼聴く力注意言動聡明
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