言志四録 / 言志耋録 第六十四条 悪を隠すは人に、改過は己に
隱惡揚善。於人如此。勿用諸己。遷善改過。於己如此。不必責諸人。
新字:隠悪揚善。於人如此。勿用諸己。遷善改過。於己如此。不必責諸人。
書き下し
悪を隠して善を揚ぐるは、人に於て此の如くす。諸を己に用ふること勿れ。善に遷り過を改むるは、己に於て此の如くす。必ずしも諸を人に責めず。
現代語訳
悪いところは隠して良いところを称揚する、というのは他人に対してすることであって、自分に当てはめてはならない。善に移り過ちを改める、というのは自分に対してすることであって、必ずしも他人に求めることはない。
解説
「悪を隠して善を揚ぐ」は『中庸』で舜の徳をたたえた言葉、「善に遷り過を改む」は前条にも引かれた益卦の言葉です。一斎は、この二つを向ける相手を取り違えるなと言います。人の欠点は伏せて長所を称えるのは他人に対してすることで、自分に対しては欠点を隠してはいけない。善に移り過ちを改めるのは自分に課すことで、他人に厳しく求めるものではない。人は往々にして逆をしがちで、自分の欠点には甘く、他人の過ちには厳しくなります。自分に厳しく人に寛容であれという教えを、古典の言葉で整理した条です。部下の長所を見つけて伝え、自分の過ちは率直に認める。その姿勢の根拠として読むことができます。
この章句が説くこと
隠悪揚善改過寛容自責人の用い方
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