言志四録 / 言志耋録 第六十三条 忍の字と敏の字
懲忿窒慾。重一忍字。遷善改過。重一敏字。
書き下し
忿を懲らし慾を窒ぐは、一の忍の字を重んず。善に遷り過を改むるは、一の敏の字を重んず。
現代語訳
怒りを抑え欲をふさぐには、「忍(こらえる)」の一字が大切である。善に移り過ちを改めるには、「敏(すばやい)」の一字が大切である。
解説
前の条に続き、『易経』の二つの卦の言葉を並べています。損卦の「忿を懲らし慾を窒ぐ」と、益卦の「善を見れば則ち遷り、過有れば則ち改む」です。一斎は、前者には「忍」、後者には「敏」の一字が要だと言います。怒りや欲に対しては、ぐっとこらえて時間を置くこと。善いことや自分の過ちに対しては、ためらわずすぐに動くこと。修養には、遅らせるべきものと急ぐべきものがあるという整理です。実際には逆になりがちで、怒りには即座に反応し、過ちの修正は先延ばしにしてしまいます。どこでこらえ、どこで素早く動くか、その使い分けを考えるうえで簡潔な指針になります。
この章句が説くこと
忍敏改過遷善自制
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