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言志四録 / 言志耋録 第三十一条 苦種は薬と成る

困心衡慮。發揮智慧。暖飽安逸。埋沒思慮。猶之苦種成藥。甘品成毒。

新字:困心衡慮。発揮智慧。暖飽安逸。埋没思慮。猶之苦種成薬。甘品成毒。

書き下し

心に困しみ慮りに衡たるは、智慧を発揮す。暖飽安逸は、思慮を埋没す。猶ほ苦種の薬と成り、甘品の毒と成るがごとし。

現代語訳

心に苦しみ、思いがつかえて悩むことは、知恵を引き出す。暖かく満腹で安楽にしていることは、思慮を埋もれさせてしまう。ちょうど苦い種が薬となり、甘い物が毒となるようなものである。

解説

「心に困しみ慮りに衡たる」は、『孟子』告子下篇の「心に困しみ慮りに衡たりて、而る後に作る」に基づく句です。心を悩ませ、思いがゆきづまって苦しむときにこそ、人は知恵を振り絞り、新しいものを生み出す。反対に、暖かく腹が満ちて安楽な暮らしは、考える力を鈍らせる。苦い薬が体を治し、甘い物が体を損なうのと同じだ、と一斎は言います。前条からの気質の変化の議論を受け、苦労が人を鍛えることを具体的に述べたものです。順調なときほど考えることをやめていないか。困難な局面を、知恵が育つ機会としてとらえ直す視点を与えてくれます。

この章句が説くこと

逆境知恵安逸困苦思慮

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