言志四録 / 言志耋録 第二十四条 紅炉点雪
私欲之難制。由志之不立。志立。眞是紅爐點雪。故立志爲徹上徹下工夫。
新字:私欲之難制。由志之不立。志立。真是紅炉点雪。故立志為徹上徹下工夫。
書き下し
私欲の制し難きは、志の立たざるに由る。志立てば、真に是れ紅炉点雪なり。故に立志は徹上徹下の工夫たり。
現代語訳
私欲が抑えがたいのは、志が立っていないからである。志が立てば、私欲はまさに真っ赤に燃える炉に落ちた一片の雪のように、たちまち消えてしまう。だから立志は、上から下まで貫く根本の工夫なのである。
解説
私欲を抑えられないのは意志が弱いからではなく、志が立っていないからだと一斎は言います。志がしっかり立てば、私欲は赤々と燃える炉の上に落ちた一片の雪のように、触れたとたんに消えてしまう。「紅炉点雪」は禅でもよく使われる語で、迷いが跡形もなく消える様子を表します。欲を一つずつ抑え込もうとするより、心の中心に大きな火を燃やすほうが確かだという考えです。だから立志は、初学者から熟達者まで、学問の全体を貫く工夫だというのです。誘惑や目先の利益に流されるとき、我慢の足りなさより目的の曖昧さを疑ってみる価値があります。
この章句が説くこと
立志私欲克己紅炉点雪修養
関連する章句
-
言志四録・言志耋録 第二十五条 持志の工夫は太だ難し持志の工夫は太だ難し。吾往々事の意に忤ふに遭へば、輙ち暴怒を免れず。是れ志を持する能はざるの病なり。自ら恥ぢ自ら怯る。書して以て警と為す。
-
言志四録・南洲手抄閑想客感は、志の立たざるに由る。一志既に立てば、百邪退き聴く。之を清泉湧出せば、旁水渾入することを得ざるに譬ふべし。
-
言志四録・言志録 第二百二十一条 公欲は無かるべからず私欲は有るべからず。公欲は無かるべからず。公欲無ければ則ち人を恕すること能はず。私欲有れば則ち物を仁すること能はず。
-
言志四録・言志晩録 第百八十条 小欲は克ち難し欲に大小有り。大欲の発するは、我自ら知る。己に克つこと或いは易し。小欲は則ち自ら其の欲たるを覚えず。己に克つこと却つて難し。
-
言志四録・言志録 第六条 学は立志より要なるは莫し学は志を立つるより要なるは莫し。而して志を立つるも亦之を強ふるに非ず。只本心の好む所に従ふのみ。
-
言志四録・言志耋録 第二十二条 立志の立の字立志の立の字は、竪立・標置・不動の三義を兼ぬ。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る