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言志四録 / 言志晩録 別存 第二十七条 一種放下の工夫

公在對州。余呈書及居敬工夫。公復書曰。以居敬見警。可謝。然吾有一種放下工夫。以此活道理應萬變而已。居敬不必拘拘。又有一書曰。吾此役有三可怖。山陰道蝮蛇。山陽道風犬。韓人膳羞。是也。外此則千仭之峰。萬里之海。無一足動心者矣。韓人調理羶臭。可厭。故以此爲戲。公壯時豪邁葢如此。

新字:公在対州。余呈書及居敬工夫。公復書曰。以居敬見警。可謝。然吾有一種放下工夫。以此活道理応万変而已。居敬不必拘拘。又有一書曰。吾此役有三可怖。山陰道蝮蛇。山陽道風犬。韓人膳羞。是也。外此則千仭之峰。万里之海。無一足動心者矣。韓人調理羶臭。可厭。故以此為戯。公壮時豪邁葢如此。

書き下し

公対州に在り。余書を呈して居敬の工夫に及ぶ。公書を復して曰く、「居敬を以て警めらる、謝すべし。然れども吾に一種放下の工夫有り。此を以て道理を活かして万変に応ずるのみ。居敬は必ずしも拘拘たらず」と。又一書有りて曰く、「吾此の役に三つの怖るべき有り。山陰道の蝮蛇、山陽道の風犬、韓人の膳羞、是れなり。此の外は則ち千仞の峰、万里の海、一として心を動かすに足る者無し」と。韓人の調理は羶臭にして厭ふべし。故に此を以て戯れと為す。公の壮時の豪邁、蓋し此くの如し。

現代語訳

公(林述斎)が対馬にいたとき、私は手紙を差し上げ、その中で居敬(心を引き締めて慎む)の修養に言い及んだ。公は返書で言った。「居敬をもって戒めてくれたこと、ありがたく思う。しかし私には一種の『放下』(とらわれを捨て去る)の工夫がある。これによって道理を生き生きと働かせて、あらゆる変化に応じるだけである。居敬に必ずしもこだわる必要はない」。また別の手紙ではこう言った。「今度の役目には怖いものが三つある。山陰道のまむし、山陽道の狂犬、そして朝鮮人の料理である。そのほかは、千仞の高峰も万里の大海も、一つとして心を動かすほどのものはない」。朝鮮の料理は生臭くていやなものだったので、これを冗談にしたのである。公の壮年のころの豪放さは、このようなものであった。

解説

対馬滞在中の述斎と一斎の手紙のやりとりです。一斎が朱子学の修養法である「居敬」、つまり心を引き締めて慎むことを説くと、述斎は感謝しつつ、自分には「放下」の工夫があると答えました。放下は禅の語で、執着を捨て去ることです。心を固く締めるより、とらわれを手放すことで道理を生かし、どんな変化にも応じるというのです。さらに、怖いのはまむしと狂犬と朝鮮料理だけで、険しい山も大海も恐れないと冗談を書き送っています。朱子学の正統を守る立場にありながら型にとらわれない述斎の闊達さと、それを「豪邁」と記した一斎の敬愛が伝わります。緊張を強いるだけでは変化に応じきれないことを考えさせる話です。

この章句が説くこと

居敬放下臨機応変豪邁ユーモア

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