言志四録 / 言志晩録 第二百七十八条 夜気を養ふ
嚮晦宴息。萬物皆然。故就寢時。宜空虛其懷以養夜氣。不然。枕上思惟。夢寢不安。於養生爲碍。
新字:嚮晦宴息。万物皆然。故就寝時。宜空虚其懐以養夜気。不然。枕上思惟。夢寝不安。於養生為碍。
書き下し
晦に嚮ひて宴息するは、万物皆然り。故に寝に就く時は、宜しく其の懐を空虚にして以て夜気を養ふべし。然らずして枕上に思惟すれば、夢寝安からず、養生に於て碍と為る。
現代語訳
日が暮れるころに休息するのは、万物がみなそうである。だから床に就くときは、胸の内を空っぽにして夜気を養うべきである。そうせずに枕の上であれこれ考えていると、夢見も眠りも安らかでなく、養生の妨げとなる。
解説
「晦に嚮ひて宴息す」は易の随卦象伝の「君子以て晦に嚮ひて入りて宴息す」に基づき、日暮れに休むのは天地自然の理だという意味です。「夜気」は『孟子』告子上篇の語で、夜のうちに静かに回復する清らかな気、良心のもとになる気を指します。一斎は、寝るときには心を空にして夜気を養えと言い、床の中で考えごとをすれば眠りが浅くなり養生を害すると戒めます。心身の休養を、儒学の古典に根ざした言葉で説いている点が特徴です。仕事の懸案を寝床まで持ち込み、眠れないまま朝を迎えるという経験は多くの人にあるでしょう。一日の終わりに心を手放す時間をどうつくるかを考えさせる一条です。
この章句が説くこと
夜気睡眠養生休息心の空虚
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