言志四録 / 言志晩録 第二百三十七条 緩ならず急ならず、天行の如し
人做事。須要不緩不急。如天行一般。吾性急迫。有時過緩。書以自警。
書き下し
人の事を做すは、須らく緩ならず急ならず、天行の如く一般なるを要すべし。吾が性は急迫にして、時有りて過緩なり。書して以て自ら警む。
現代語訳
人が事を行うには、遅すぎず急ぎすぎず、天の運行のように常に一定であることが必要である。私は性分がせっかちで、それでいて時には緩みすぎることもある。これを書き記して、自らの戒めとする。
解説
事を行う理想の速さを、天の運行に見立てた一条です。天は日々休まず、速すぎも遅すぎもせず巡ります。『易経』乾卦の「天行は健なり、君子以て自ら彊めて息まず」を踏まえた発想です。興味深いのは後半で、一斎は自分がせっかちである一方、時には緩みすぎると告白し、戒めとして書き留めています。急ぎすぎと緩みすぎは正反対に見えますが、どちらも一定の歩調を保てないという点で同じ根から出ています。晩年になってもなお自分の性分と向き合い続けた一斎の姿が見えます。仕事でも、締め切り前に慌て、余裕があると後回しにするという波はよくあることです。自分の歩調の癖を知り、一定のリズムを保つ工夫を考える手がかりになります。
この章句が説くこと
緩急天行自戒継続性分
関連する章句
-
言志四録・言志晩録 第二百三十八条 心は則ち緩急を忘る昼夜に短長有れども、天行には短長無し。惟だ短長無し、是を以て能く昼夜を成す。人も亦然り。緩急は事に在り、心は則ち緩急を忘れて可なり。
-
言志四録・言志耋録 第百十五条 寛事は捷く、急事は徐ろに寛事を処するには、捷く做すを要す。然らざれば稽緩に失す。急事を処するには、徐ろに做すを要す。然らざれば躁遽に失す。
-
言志四録・言志録 第四条 天道は漸を以て運る天道は漸を以て運り、人事は漸を以て変ず。必至の勢は、之を郤けて遠からしむること能はず、又之を促して速かならしむること能はず。
-
言志四録・言志後録 第七十条 世を渉るは旅の如し人の世を渉るは行旅の如く然り。途に険夷有り、日に晴雨有り。畢竟避くるを得ず。只だ宜しく処に随ひ時に随ひて緩急を相るべし。速かならんことを欲して以て災ひを取ること勿れ。猶予して以て期に後るること勿れ。是れ旅に処するの道にして、即ち世を渉るの道なり。
-
言志四録・言志後録 第百七十条 事を処するは平平穏穏凡そ事を処するには、須らく平平穏穏なるを要すべし。人の視聴を駭かすに至りては、則ち事善しと雖も或は小過に傷つく。
-
言志四録・南洲手抄一息の間断無く、一刻の急忙無し。即ち是れ天地の気象なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る