言志四録 / 言志晩録 第百五十六条 賢士の徳は権貴に驕る
權貴之德。在下賢士。賢士之德。在驕權貴。
新字:権貴之徳。在下賢士。賢士之徳。在驕権貴。
書き下し
権貴の徳は、賢士に下るに在り。賢士の徳は、権貴に驕るに在り。
現代語訳
権力や地位のある者の徳は、賢明な士にへりくだるところにある。賢明な士の徳は、権力や地位のある者に対して誇り高くふるまうところにある。
解説
権貴と賢士、それぞれの徳を対にして示した一条です。権力を持つ者の美徳は、賢者の前で身を低くすること。賢者の美徳は、権力者の前で卑屈にならず、誇りを保つこと。ここでの「驕る」は傲慢になれという意味ではなく、権勢に媚びず、節を曲げないことを言っています。前の二条からの流れで、力を持つ者と見識を持つ者の関係を考えているのです。両者がともにこの徳を備えるとき、はじめて健全な協力が成り立ちます。『孟子』にも、徳を持つ士は王侯にもおもねらないという議論があります。経営者と専門家、上司と有能な部下など、立場と見識が分かれている関係のあり方を考える材料になります。
この章句が説くこと
謙虚気骨権力と見識賢者人の遇し方
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