言志四録 / 言志晩録 第百四十四条 閫内に女学所を
方今諸藩置講堂及演武塲。以課子弟。但至宮閫。則未聞有敎法。吾意欲於閫內區爲女學所。使衆女官學女事。宜延女師謹飭者。使之講解女誠女訓國雅諸書。幷女禮筆札鬪香茶儀。各有師以課之。旁復許箏曲絃歌不淫靡者。則閫內必肅然。
新字:方今諸藩置講堂及演武塲。以課子弟。但至宮閫。則未聞有教法。吾意欲於閫内区為女学所。使衆女官学女事。宜延女師謹飭者。使之講解女誠女訓国雅諸書。幷女礼筆札闘香茶儀。各有師以課之。旁復許箏曲絃歌不淫靡者。則閫内必粛然。
書き下し
方今諸藩講堂及び演武場を置き、以て子弟に課す。但だ宮閫に至りては、則ち未だ教法有るを聞かず。吾が意は閫内に於て区して女学所と為し、衆女官をして女事を学ばしめんと欲す。宜しく女師の謹飭なる者を延き、之をして女誡・女訓・国雅の諸書を講解せしめ、并びに女礼・筆札・闘香・茶儀、各々師有りて以て之を課すべし。旁ら復た箏曲絃歌の淫靡ならざる者を許さば、則ち閫内必ず粛然たらん。
現代語訳
今、諸藩は講堂や武芸の稽古場を設けて、藩士の子弟に学ばせている。ただ奥向きについては、まだ教育の方法があるとは聞かない。私の考えでは、奥向きの中に一区画を設けて女学所とし、多くの奥女中たちに女性の務めを学ばせたい。慎み深く行いの正しい女性の師を招いて、『女誡』や女訓書、和歌・国文の諸書を講義させ、あわせて女性の礼法、書道、香道、茶の湯についても、それぞれ師をつけて教えるのがよい。そのかたわら、箏の曲や三味線の歌のうち、みだらでないものを許すならば、奥向きは必ず引き締まって整うであろう。
解説
藩の奥向きに女性のための学問所を設けよという、一斎の具体的な提案です。当時、諸藩は藩校や演武場を整えて男子の教育に力を入れていましたが、奥女中たちには体系だった教育がありませんでした。一斎は、班昭の『女誡』などの女訓書や和歌・国文の講義に、礼法・書道・香道・茶道を加え、節度ある音曲も許すという、学問と教養を組み合わせた課程を構想しています。前条で権力が奥向きに入り込む内症を憂えたのを受け、その根本の手当てとして教育を考えたのでしょう。内容には時代の枠がありますが、問題を嘆くだけでなく教育の仕組みで応えようとする姿勢は明快です。育成の仕組みが届いていない層が組織にないかを考えさせる一条です。
この章句が説くこと
教育女子教育奥向き人材育成教養
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