孟子 / 告子章句上
孟子曰、今有無名之指屈而不信。非疾痛害事也。如有能信之者、則不遠秦楚之路。為指之不若人也。指不若人、則知惡之。心不若人、則不知惡。此之謂不知類也。
新字:孟子曰、今有無名之指屈而不信。非疾痛害事也。如有能信之者、則不遠秦楚之路。為指之不若人也。指不若人、則知悪之。心不若人、則不知悪。此之謂不知類也。
書き下し
孟子曰く、「今、無名の指、屈して信びざる有り。疾痛して事に害あるに非ざるなり。如し能く之を信ばす者有れば、則ち秦楚の路をも遠しとせず。指の人に若かざるが為なり。指の人に若かざるは、則ち之を惡むことを知る。心の人に若かざるは、則ち惡むことを知らず。此を之れ類を知らずと謂うなり。」
現代語訳
孟子は言う。 「今かりに、薬指が曲がって伸びない人がいるとしよう。別に痛みを感じたり仕事に差障りがあるわけでもないが、これを伸ばしてくれる人がいたとしたら、その人が秦や楚の遠方の国の人でも、ものともせずに出かけるだろう。それは指が人並みでないのが恥ずかしいからだ。指が人並みで無ければ、恥ずかしいということは知っているのに、心は人並みでなくても、それを恥ずかしいことだとは知らない。こういうのを、物事の比較軽重を知らぬというものだ。」
解説
自分の容姿や服の汚れ、仕事での些細なミスなどは気にしてすぐに直そうとするのに、自分の心の中にある妬みや偏見、不誠実さといった見えない欠点には無頓着になりがちです。他人からどう見られるかという外見や体裁ばかりを重んじ、本当に大切にすべき自分の内面の美しさを磨くことを怠っていないでしょうか。物事の本当の軽重を見極め、見た目だけでなく、心の歪みを正すことにもエネルギーを注ぐことが、より魅力的な人間になるための第一歩となります。内面と向き合う勇気を持ちましょう。
この章句が説くこと
優先順位内面を磨く見極め誠実さ
関連する章句
-
孟子・盡心章句上孟子曰く、「知者は知らざること無きなり。當に務むべきを之れ急と為す。仁者は愛せざること無きなり。賢を親しむを急にするを之れ務と為す。堯舜の知にして物に遍からざるは、先務を急にすればなり。堯舜の仁にして人を愛するに遍らざるは、賢を親しむを急にすればなり。三年の喪を能くせずして、緦(シ)・小功を之れ察し、放飯・流歠(セツ)して、齒決すること無きを問う、是を之れ務めを知らずと謂う。」
-
孟子・告子章句上孟子曰く、「人の身に於けるや、愛する所を兼ぬ。愛する所を兼ぬれば、則ち養う所を兼ぬ。無尺寸の膚も愛せざること無ければ、則ち尺寸の膚も養わざること無きなり。其の善不善を考うる所以の者は、豈に他有らんや。己に於て之を取るのみ。體に貴賤有り、小大有り。小を以て大を害すること無く、賤を以て貴を害すること無かれ。其の小を養う者は小人為り、其の大を養う者は大人為り。今場師有り。其の梧檟(ゴ・カ)を舎てて、其の樲棘(ジ・キョク)を養わば、則ち賤場師と為さん。其の一指を養いて、而も其の肩背を失いて知らざれば、則ち狼疾人と為さん。飲食の人は、則ち人之を賤む。其の小を養いて以て大を失うが為なり。飲食の人も失うこと有る無ければ、則ち口腹豈に適だ尺寸の膚の為のみならんや。」
-
論語・顔淵篇子貢、政を問う。子曰く、「食を足し、兵を足し、民之を信ず。」子貢曰く、「必ず已むを得ずして去らば、斯の三者に於いて何をか先にせん。」曰く、「兵を去らん。」子貢曰く、「必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて何をか先にせん。」曰く、「食を去らん。古より皆死有り、民信無くんば立たず。」
-
『韓非子』功名第二十八人臣の憂は一を得ざるに在り、故に曰く、「右手圓を書き、左手方を書けば、兩つながら成る能わず。」
-
史記 伍子胥列伝其の後五年、呉王、斉の景公死して大臣寵を争ひ、新君弱しと聞き、乃ち師を興して北のかた斉を伐つ。伍子胥諫めて曰く、「句踐食に味を重ねず、死を弔ひ疾を問ふは、且に用ゐる所有らんと欲すればなり。此の人死せずんば、必ず呉の患ひと為らん。今呉の越有るは、猶ほ人の腹心の疾有るがごときなり。而るに王越を先にせずして乃ち斉を務むるは、亦た謬らずや」と。呉王聴かず、斉を伐ち、大いに斉の師を艾陵に敗り、遂に鄒・魯の君を威して以て帰る。益々子胥の謀を疏んず。
-
説苑・貴德趙簡子春臺を邯鄲に築く、天雨ふりて息まず、左右に謂ひて曰く、「種を趨むる無かるべきか」と。尹鐸対へて曰く、「公事急なれば、種を厝きて臺に懸く、夫れ種を趨めんと欲すと雖も、得る能はざるなり」と。簡子惕然として、乃ち臺を釈きて役を罷めて曰く、「我臺を以て急と為すも、民の急に如かず、民臺を為さざるを以て、故に吾が愛を知らん」と。