言志四録 / 言志晩録 第七十五条 香気室に満つれば蚊虻入らず
端坐讀經時。間思妄念。自然消滅。猶香氣滿室。蚊蝱不能入。不似瞑目調息之空觀。
新字:端坐読経時。間思妄念。自然消滅。猶香気満室。蚊蝱不能入。不似瞑目調息之空観。
書き下し
端坐して経を読む時は、間思妄念、自然に消滅す。猶ほ香気室に満つれば、蚊虻入る能はざるがごとし。瞑目調息の空観に似ず。
現代語訳
端座して経書を読むときは、雑念や妄想は自然に消えてなくなる。ちょうど香の香りが部屋に満ちていれば、蚊や虻が入ってこられないようなものである。目を閉じて呼吸を整えて空を観ずるやり方とは似ていない。
解説
前の条に続き、読書と静坐を一つにする工夫を語っています。端座して経書を読んでいると、雑念や妄念は無理に払わなくても自然に消えていく。それは部屋に香りが満ちると蚊や虻が入ってこないのと同じだ、という比喩が鮮やかです。雑念を追い払おうとするのではなく、心を良いもので満たせば、雑念の入る余地がなくなるというのです。一斎はこれを、目を閉じ呼吸を整えて心を空にしようとする禅的な観法とは違うと区別しています。儒者として心を空にするのではなく、道理で満たすことを選んだのでしょう。気が散って集中できないとき、無理に雑念を消そうとするより、打ち込める対象で心を満たす方が早いのかもしれません。
この章句が説くこと
集中雑念読書静坐心の養い
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