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言志四録 / 言志晩録 第三十条 一家に拘らず

惺窩羅山課其子弟。經業大略依朱氏。而其所取舍。則不特宋儒。而及元明諸家。鵞峰亦於諸經有私考。有別考。乃知其不抅一家者顯然。

新字:惺窩羅山課其子弟。経業大略依朱氏。而其所取舎。則不特宋儒。而及元明諸家。鵞峰亦於諸経有私考。有別考。乃知其不抅一家者顕然。

書き下し

惺窩・羅山の其の子弟に課するや、経業は大略朱氏に依る。而して其の取舎する所は、則ち特に宋儒のみならず、元明の諸家に及ぶ。鵞峰も亦諸経に於て私考有り、別考有り。乃ち其の一家に拘らざる者顕然たるを知る。

現代語訳

藤原惺窩と林羅山が弟子たちに課した経書の学業は、おおよそ朱子の説に拠っていた。しかし、何を取り何を捨てるかについては、ただ宋の儒者だけでなく、元・明の諸家にまで及んでいた。林鵞峰もまた諸経について私考や別考を著している。これによって、彼らが一家の説にこだわらなかったことは明らかであるとわかる。

解説

前条に続き、林家の学問が一家の説に拘泥しなかったことを示した条です。惺窩と羅山は弟子に経書を教えるのに大筋では朱子の注に拠ったが、取捨の範囲は宋儒にとどまらず元明の諸家に及んだ。羅山の子の林鵞峰も諸経について独自の私考・別考を著した、と一斎は具体的に挙げ、一家に拘らないことは明らかだと結びます。晩録の冒頭近くで繰り返される朱陸兼取の議論は、昌平坂学問所で朱子学以外を排する寛政異学の禁以後の空気の中で、林家本来の学風を思い起こさせるものでもありました。基本の型を持ちながら、他の知見を広く取り入れる。専門を持つ人が視野を狭めないための姿勢として読めます。

この章句が説くこと

兼取学風取捨柔軟性林家

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