言志四録 / 言志後録 第百六十二条 乗除は一理
乘除一理。福幸。乘數也。患難。除數也。歸之平數。則無福幸。無患難。故乘除只是屈伸消長之迹耳。
新字:乗除一理。福幸。乗数也。患難。除数也。帰之平数。則無福幸。無患難。故乗除只是屈伸消長之迹耳。
書き下し
乗除は一理なり。福幸は乗数なり。患難は除数なり。之を平数に帰すれば、則ち福幸無く、患難無し。故に乗除は只だ是れ屈伸消長の迹のみ。
現代語訳
掛け算と割り算は一つの道理である。幸福は掛ける数であり、患難は割る数である。これを差し引きの平らな数に戻してしまえば、幸福もなく患難もない。だから掛け算と割り算は、ただ伸び縮みし、消えたり増えたりする跡にすぎない。
解説
幸福と災難を算術の掛け算と割り算にたとえた、一斎らしい一条です。幸福は数を大きくする乗数、災難は小さくする除数ですが、両方をならしてみれば元の平らな数に戻り、幸も不幸も残らない。つまり禍福とは、易でいう屈伸消長、すなわち陰陽が伸び縮みし満ち欠けする動きの跡にすぎないと言うのです。次の条でこの考えを患難に遭ったときの心得に応用しています。好調なときに有頂天にならず、不調のときに絶望しないための見方として、業績の波に一喜一憂しがちな立場の人には、長い目で全体をならして見る視点を与えてくれます。
この章句が説くこと
禍福屈伸消長易平常心運
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