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言志四録 / 言志後録 第百二十条 艮背の工夫

艮背工夫。神守其室。即敬也。即仁也。起居食息。不可放過。非懸空捕影之心學。

新字:艮背工夫。神守其室。即敬也。即仁也。起居食息。不可放過。非懸空捕影之心学。

書き下し

艮背の工夫は、神其の室を守る。即ち敬なり、即ち仁なり。起居食息、放過すべからず。空に懸り影を捕ふるの心学に非ず。

現代語訳

「其の背に艮まる」(『易』艮卦)という工夫は、精神がその宿る所(身)をしっかり守ることである。それはすなわち敬であり、すなわち仁である。立ち居振る舞いや食事、呼吸に至るまで、おろそかに見過ごしてはならない。これは宙に浮いたものに頼り、影をつかもうとするような空虚な心学ではない。

解説

「艮背」は『易』艮卦の「其の背に艮まる」に基づく語で、心を背に止めて外物に引かれないようにする修養法として、宋明の儒者に重んじられました。一斎はこれを、精神が自分の宿る家をしっかり守ることだと言い換え、それがそのまま敬であり仁であると述べます。大切なのは後半です。立つ、座る、食べる、息をするといった日常の一挙一動をおろそかにしないことが工夫であって、現実から離れた観念をもてあそぶ心学ではないと釘を刺しています。心の修養を説く一斎が、常に身体と日常に足場を置いていたことがわかります。心構えの話を抽象論で終わらせず、日々の具体的な所作にどう落とし込むかを考える手がかりになります。

この章句が説くこと

艮背敬仁日常の修養心学

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