導師導古典を学びたいすべての人に

言志四録 / 言志後録 第百七条 当下を料理す

人做事。目前多粗脫。徒思量來日事。譬如行旅人。齷齪思量前程。太不可。人須先料理當下。如居處恭。執事敬。言忠信。行篤敬。至於寢不尸。居不容。一寢一食。造次顚沛。亦皆當下事。其料理當下得恰好處。即并過去將來。亦自得恰好耳。

新字:人做事。目前多粗脱。徒思量来日事。譬如行旅人。齷齪思量前程。太不可。人須先料理当下。如居処恭。執事敬。言忠信。行篤敬。至於寝不尸。居不容。一寝一食。造次顛沛。亦皆当下事。其料理当下得恰好処。即并過去将来。亦自得恰好耳。

書き下し

人事を做すに、目前多く粗脱にして、徒らに来日の事を思量す。譬へば行旅の人の、齷齪として前程を思量するが如し。太だ不可なり。人は須らく先づ当下を料理すべし。居処恭しく、事を執りて敬し、言忠信、行篤敬の如き、寝ねて尸せず、居りて容づくらざるに至るまで、一寝一食、造次顛沛も、亦皆当下の事なり。其の当下を料理して恰好の処を得れば、即ち并せて過去将来も、亦自ら恰好を得るのみ。

現代語訳

人が物事を行うとき、目の前のことは多くおおざっぱで手抜かりがあるのに、いたずらに明日以降のことばかり考えている。たとえば旅人が、せかせかとこの先の道のりばかり思い悩むようなものである。はなはだよくない。人はまず、今ここのこと(当下)をきちんと処理しなければならない。ふだんの居ずまいはうやうやしく、仕事に当たっては慎み、言葉は誠実で偽りなく、行いは手厚く慎み深くあること、さらには寝るときは死体のように手足を投げ出さず、家にいるときは堅苦しく取りつくろわないことに至るまで、一度寝て一度食べることも、とっさの時やつまずいた時も、みな今ここのことである。その今ここのことを処理してちょうどよいところを得れば、過去も将来も、あわせておのずからちょうどよくなるのである。

解説

先のことばかり心配して、目の前の事がおろそかになることを戒めた条です。一斎は、旅人が道のりばかり気にしてせかせかするようなものだとたとえ、まず「当下」、つまり今ここを整えよと言います。例に挙げられているのはすべて『論語』の言葉で、「居処恭、執事敬」は子路篇、「言忠信、行篤敬」は衛霊公篇、「寝ねて尸せず、居りて容づくらず」は郷党篇、「造次顛沛」は里仁篇です。聖人の教えは特別な場面ではなく、寝食や立ち居振る舞いの一つ一つにあるというのです。今を丁寧に処理すれば過去も未来もおのずと整うという結びは力強い言葉です。計画や将来の不安に気を取られがちなときほど、目の前の一件を仕上げることに立ち返る意味を教えてくれます。

この章句が説くこと

当下今を生きる敬日常実践

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る