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言志四録 / 言志後録 第七十一条 胎中の我を思察す

人當自思察在母胎中之我。心意果如何。又當自思察出胎後之我。心意果如何。人皆並全忘不記也。然我體既具。必有心意。則今試思察胎胞中心意。必是渾然純氣專一。無善無惡。只有一點靈光耳。方生之後。靈光之發竅。先知好惡。好惡即是非。即知愛知敬之所由出也。思察到此。可以悟我性之爲天。我體之爲地。

新字:人当自思察在母胎中之我。心意果如何。又当自思察出胎後之我。心意果如何。人皆並全忘不記也。然我体既具。必有心意。則今試思察胎胞中心意。必是渾然純気専一。無善無悪。只有一点霊光耳。方生之後。霊光之発竅。先知好悪。好悪即是非。即知愛知敬之所由出也。思察到此。可以悟我性之為天。我体之為地。

書き下し

人当に自ら母胎中に在るの我を思察すべし。心意果して如何。又当に自ら胎を出でし後の我を思察すべし。心意果して如何。人皆並びに全く忘れて記せざるなり。然れども我が体既に具はれば、必ず心意有り。則ち今試みに胎胞中の心意を思察するに、必ず是れ渾然たる純気専一にして、善無く悪無く、只一点の霊光有るのみ。方に生まるるの後、霊光の竅を発するや、先づ好悪を知る。好悪は即ち是非なり。即ち愛を知り敬を知るの由りて出づる所なり。思察此に到らば、以て我が性の天たり、我が体の地たるを悟るべし。

現代語訳

人は、母の胎内にいたときの自分を、自ら思い察してみるべきである。その心はいったいどのようなものであったか。また、胎内から生まれ出た後の自分を思い察してみるべきである。その心はどのようなものであったか。人は皆、どちらもすっかり忘れて覚えていない。しかし自分の体がすでに備わっていた以上、必ず心はあったはずである。そこで今試みに胎内での心を思い察してみると、それはきっと渾然として純粋な気が一つにまとまり、善もなく悪もなく、ただ一点の霊妙な光があるだけであったろう。生まれ出たのち、その霊光が目や耳などの穴(竅)から外へ発すると、まず好むことと憎むことを知る。好悪とはすなわち是非の判断であり、親を愛することを知り、年長者を敬うことを知る心も、ここから出てくるのである。思い察してここまで至れば、自分の性(本性)は天から、自分の体は地から受けたものであることを悟ることができる。

解説

生まれる前と生まれた直後の自分の心を想像してみよ、という思考実験のような一条です。胎内の心は善悪に分かれる以前の「一点の霊光」であり、生まれて感覚が開くと、まず好き嫌いが生じ、そこから是非の判断や、孟子のいう「愛を知り敬を知る」良知良能が出てくると一斎は説きます。「無善無悪」の語は王陽明の四句教を思わせ、朱子学を奉じつつ陽明学にも通じた一斎らしい省察です。性は天から、体は地から受けたという結論は、次の条の「天根・天機」へと続きます。判断に迷うとき、損得や習慣が積み重なる前の素直な好悪に立ち返ってみるという視点を与えてくれます。

この章句が説くこと

性霊光好悪良知天地内省

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