言志四録 / 言志後録 第八条 往時の経歴を追思す
人當追思往時經歷事迹。某年所爲。孰是當否。孰是生熟。某年所謀。孰是穩妥。孰是過差。以此爲將來鑑戒可也。不然。徒爾汲汲營營。算前途。計來日。亦何益之有。又尤當憶起幼穉時事。父母鞠育乳哺之恩。顧復懷抱之勞。撫摩憫恤之厚。訓戒督責之切。凡其所以艱苦而長養我者。無不悉以追思之。則今之所以自愛吾身。不肯自輕者。亦宜無所不至。
新字:人当追思往時経歴事迹。某年所為。孰是当否。孰是生熟。某年所謀。孰是穏妥。孰是過差。以此為将来鑑戒可也。不然。徒爾汲汲営営。算前途。計来日。亦何益之有。又尤当憶起幼穉時事。父母鞠育乳哺之恩。顧復懐抱之労。撫摩憫恤之厚。訓戒督責之切。凡其所以艱苦而長養我者。無不悉以追思之。則今之所以自愛吾身。不肯自軽者。亦宜無所不至。
書き下し
人は当に往時経歴の事迹を追思すべし。某年為す所、孰れか是れ当否、孰れか是れ生熟。某年謀る所、孰れか是れ穏妥、孰れか是れ過差。此を以て将来の鑑戒と為して可なり。然らずんば、徒爾に汲汲営営として、前途を算へ、来日を計るも、亦何の益か之れ有らん。又尤も当に幼穉の時の事を憶ひ起こすべし。父母鞠育乳哺の恩、顧復懐抱の労、撫摩憫恤の厚き、訓戒督責の切なる、凡そ其の艱苦して我を長養せし所以の者、悉く以て之を追思せざる無くんば、則ち今の自ら吾が身を愛して、肯へて自ら軽んぜざる所以の者も、亦宜しく至らざる所無かるべし。
現代語訳
人はかつて経験してきた事柄を思い返すべきである。ある年にしたことは、どれが適切でどれが不適切だったか、どれが未熟でどれが熟していたか。ある年に計画したことは、どれが穏当でどれが行き過ぎや誤りだったか。これを将来の手本や戒めとするのがよい。そうでなければ、ただあくせくと先行きを算段し、将来の計画を立てても、いったい何の益があろうか。また何よりも、幼いころのことを思い起こすべきである。父母が乳を与えて育ててくれた恩、振り返り見守り抱きかかえてくれた苦労、なでさすりいたわってくれた手厚さ、戒め叱ってくれた切実さなど、およそ苦労して自分を養い育ててくれたことを、残らず思い返すならば、今こうして自分の身を大切にし、決して自分を軽んじないようにする心も、行き届かないところはなくなるだろう。
解説
この章句が説くこと
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『酔古堂剣掃』集法・靜坐して然る後に氣の浮けるを知る靜坐して然る後に平日の氣の浮けるを知り、默を守りて然る後に平日の言の躁がしきを知り、事を省きて然る後に平日の閑を貴ぶを知り、戶を閉ぢて然る後に平日の交はりの濫りなるを知り、欲を寡なくして然る後に平日の病ひの多きを知り、情に近づきて然る後に平日の念の刻なるを知る。
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葉隠・聞書第一浪人の身にて、上を怨み候事〔あり〕。何某(なにがし)浪人、内実(ないじつ)に非を知りて崩す。前方(ぜんぽう)仰付(おおせつけ)御断(おことわ)り、二度目に御請誓詞(おうけせいし)の事。同筋(どうすじ)にて浪人の事。斯様(かよう)の我が非を存ぜざる間(あいだ)は、帰参有るまじき事。今にも御情(おなさけ)無きの、誰がにくい者などと計(ばか)り、胸をこがし候て、なお天道(てんとう)の悪(にく)みを受くるなり。何某の評判に、御罰(おばち)よと申されたるとなり。人がのがれぬなり。罪一人に有りと思い返され候え。
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尚書・無逸小人汝を怨み汝を詈らば、則ち皇に自ら德を敬しめ。
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尚書・冏命愆ちを繩し謬りを糾し、其の非心を格す。
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孟子・離婁章句下孟子曰く、「君子の人に異なる所以の者は、其の心を存するを以てなり。君子は仁を以て心を存し、禮を以て心を存す。仁者は人を愛し、禮有る者は人を敬す。人を愛する者は、人恒に之を愛し、人を敬する者は、人恒に之を敬す。此に人有り、其の我を待つに横逆を以てすれば、則ち君子必ず自ら反するなり。『我必ず不仁ならん、必ず禮無からん。此の物奚ぞ宜しく至るべけんや。』と。其の自ら反して仁なり。自ら反して禮有り。其の橫逆由ほ是のごとくなるや、君子必ず自ら反するなり。『我必ず不忠ならん。』と。自ら反して忠なり。其の橫逆由ほ是のごとくなるや、君子曰く、『此れ亦た妄人なるのみ。此の如くんば、則ち禽獸と奚ぞ擇ばんや。禽獸に於いて又何ぞ難ぜん。』是の故に、君子には終身の憂い有るも、一朝の患い無きなり。乃ち憂うる所の若きは則ち之れ有り。『舜も人なり、我も亦た人なり。舜は法を天下に為し、後世に傳う可し。我は由ほ未だ鄉人為るを免れざるなり。』是は則ち憂う可きなり。之を憂えば如何にせん。舜の如くせんのみ。夫の君子の若きは、患いとする所は則ち亡し。仁に非ざれば為す無きなり。禮に非ざれば行う無きなり。一朝の患い有るが如きは、則ち君子は患いとせず。」
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論語・顔淵篇司馬牛、君子を問う。子曰く、「君子は憂えず懼れず。」曰く、「憂えず懼れざれば、斯れ之を君子と謂うか。」子曰く、「内に省みて疚しからずんば、夫れ何をか憂え何をか懼れん。」
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