酔古堂剣掃 / 集法・靜坐して然る後に氣の浮けるを知る
靜坐然後知平日之氣浮,守默然後知平日之言躁,省事然後知平日之貴閑,閉戶然後知平日之交濫,寡欲然後知平日之病多,近情然後知平日之念刻。
新字:静坐然後知平日之気浮,守黙然後知平日之言躁,省事然後知平日之貴閑,閉戸然後知平日之交濫,寡欲然後知平日之病多,近情然後知平日之念刻。
書き下し
靜坐して然る後に平日の氣の浮けるを知り、默を守りて然る後に平日の言の躁がしきを知り、事を省きて然る後に平日の閑を貴ぶを知り、戶を閉ぢて然る後に平日の交はりの濫りなるを知り、欲を寡なくして然る後に平日の病ひの多きを知り、情に近づきて然る後に平日の念の刻なるを知る。
現代語訳
静かに座ってみて、はじめて普段の気持ちが浮ついていたことを知ります。黙っていてみて、はじめて普段の言葉が騒がしかったことを知ります。用事を減らしてみて、はじめて普段いかに閑が尊いかを知ります。戸を閉ざしてみて、はじめて普段の交わりが見境なかったことを知ります。欲を少なくしてみて、はじめて普段の病の多さを知ります。人情に寄り添ってみて、はじめて普段の考えが冷酷だったことを知ります。
解説
反対のことをしてみて、はじめて普段の自分の姿が見えると説いた一則です。静坐、守黙、省事、閉戸、寡欲、近情の六つを実際にしてみると、それまで気づかなかった浮つき、騒がしさ、慌ただしさ、交友の乱れ、病の多さ、心の冷たさが見えてきます。渦中にいると自分のことは分からないものです。一度立ち止まり、逆の状態に身を置いてみることが、最もよい自己点検になります。原文の貴閑は費閑の写し違いかもしれず、それなら普段いかに閑を浪費していたかを知る意味になります。ときどき意識して静かな時間を持ちたいものです。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
内省静坐修身寡欲閑適
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