言志四録 / 言志後録 第十三条 小吏の心を抑遏せず
有小吏。苟能盡心職掌。爲長官者。宜勸奬而誘掖之。雖時有不當之見。而亦宜姑容之。徐徐諭說。决不可抑遏之。抑遏則意阻氣撓。後來遂不盡其心。
新字:有小吏。苟能尽心職掌。為長官者。宜勧奨而誘掖之。雖時有不当之見。而亦宜姑容之。徐徐諭説。決不可抑遏之。抑遏則意阻気撓。後来遂不尽其心。
書き下し
小吏有り、苟も能く心を職掌に尽くさば、長官たる者は、宜しく勧奨して之を誘掖すべし。時に不当の見有りと雖も、而も亦宜しく姑く之を容れて、徐徐に諭説すべし。決して之を抑遏すべからず。抑遏すれば則ち意阻み気撓み、後来遂に其の心を尽くさず。
現代語訳
身分の低い役人がいて、もし自分の職務に心を尽くしているならば、上に立つ長官は、励まし褒めて、導き助けてやるべきである。ときに的外れな意見があったとしても、ひとまずそれを受け入れて、ゆっくりと言い聞かせるべきである。決して押さえつけてはならない。押さえつければ意欲がくじけ気力がなえて、その後はついに心を尽くさなくなってしまう。
解説
上司が部下にどう接するかを、きわめて具体的に述べた条です。職務に熱心な下役がいれば、長官は励まし、導き助けよ。的外れな意見を言ってきても、まずは受け止め、時間をかけて説き聞かせよ。頭ごなしに抑えつければ、意欲がくじけ、以後は二度と本気を出さなくなる、と一斎は言います。直前の条(後録第十二条)で「誘掖して之を導くは教の常なり」と教育の術を並べたのに続き、それを役所の現場に当てはめたものと読めます。昌平坂学問所の儒官として、若い役人や学生の気質を見てきた人の実感でしょう。部下の提案が未熟なとき、否定から入っていないか。その一言がその後の働きぶりを左右することを思い出させる一条です。
この章句が説くこと
部下育成誘掖寛容意欲上司の心得
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