言志四録 / 言志録 第二百三十七条 一に吾が識を以て断ず
窮經必有義理文理湊合處。一以吾識斷之。斯爲得。
新字:窮経必有義理文理湊合処。一以吾識断之。斯為得。
書き下し
経を窮むるには、必ず義理・文理の湊合する処有り。一に吾が識を以て之を断ず。斯れを得たりと為す。
現代語訳
経書を究めていくと、必ず道理の筋と文章の筋とがぴたりと合う所がある。それをもっぱら自分の見識によって判断する。そうしてこそ会得したといえる。
解説
「義理」は書かれている道理、「文理」は文章の脈絡や構成です。経書を読み込んでいくと、意味の筋と文の筋とが一点で噛み合う所があり、そこを見つけたときに解釈が定まる、と一斎は言います。そして、その判断は先儒の注に頼らず、最後は自分の見識で下すものだとします。前の二条で心で得ることを説き、ここでは「識」、つまり判断力を持ち出している点に注意したいところです。心で感じるだけでなく、文章の論理とも合っていることが条件になっています。資料を読んで結論を出すとき、内容の筋と文面の筋の両方が通っているかを確かめ、最後は自分の責任で断じているかを問う一条です。
この章句が説くこと
読書見識判断力義理学問の方法
関連する章句
-
言志四録・言志録 第二百三十六条 此の心に考拠す経を窮むるには、須らく此の心に考拠し、此の心に引証するを要すべし。如し徒に文字上に就きて考拠引証し、輒ち経を窮むること此に止まると謂はば、則ち陋甚し。
-
言志四録・言志録 第二百三十五条 意味は我が心を以て透入す経書の文字は、文字を以て之を注明するは可なり。意味は則ち当に我が心を以て透入して之を得べし。畢竟文字を着くる能はず。
-
言志四録・言志耋録 第三条 経書を読むは我が心を読むなり経書を読むは、即ち我が心を読むなり。認めて外物と做すこと勿れ。我が心を読むは、即ち天を読むなり。認めて人心と做すこと勿れ。
-
言志四録・南洲手抄経を読むは、宜しく我れの心を以て経の心を読み、経の心を以て我の心を釈すべし。然らずして徒爾に訓詁を講明するのみならば、便ち是れ終身曾て読まざるなり。
-
言志四録・言志録 第六十条 経を離るるも亦是れ学古人は経を読みて以て其の心を養ひ、経を離れて以て其の志を弁ず。則ち独り経を読むのみ学と為すにあらず、経を離るるも亦是れ学なり。
-
言志四録・言志録 第百四十条 経を読むの注脚方に経を読む時は、須らく我が遭ふ所の人情事変を把りて注脚と做すべし。事を処するの時に臨みては、則ち須らく倒に聖賢の言語を把りて注脚と做すべし。事理融会して、学問の日用を離れざるの意思を見得るに庶からん。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る