言志四録 / 言志録 第二百三十六条 此の心に考拠す
窮經須要考據於此心。引證於此心。如徒就文字上考據引證。輙謂窮經止此。則陋甚。
新字:窮経須要考拠於此心。引証於此心。如徒就文字上考拠引証。輙謂窮経止此。則陋甚。
書き下し
経を窮むるには、須らく此の心に考拠し、此の心に引証するを要すべし。如し徒に文字上に就きて考拠引証し、輒ち経を窮むること此に止まると謂はば、則ち陋甚し。
現代語訳
経書を究めるには、自分のこの心に照らして考え確かめ、この心に引き当てて証拠とすることが必要である。もしただ文字の上だけで考証し証拠を引いて、経書を究めるとはこれに尽きると思うならば、はなはだ見識が狭い。
解説
「考拠」「引証」は、清朝で盛んになった考証学の用語です。文献を博捜し、字句の出典や異同を確かめる学問で、一斎の時代の日本にも大きな影響を与えていました。一斎はその手法を否定するのではなく、考証の拠りどころを「此の心」に置けと言います。経書の言葉が自分の心の実感と照らし合って初めて、本当に読んだことになるという考えです。前の条の「我が心を以て透入す」を、当時の学界の潮流に向けて言い直したものと読めます。データや前例を集めること自体が目的になっていないか。集めた情報を自分の判断の芯とどう結びつけているかを省みる手がかりになります。
この章句が説くこと
考証心学読書学問の方法自得
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