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言志四録 / 言志録 第八十六条 大臣権を弄するの風

大臣弄權之風。多自幼主而起。權一下移。不可復收。主年既長。仍擁虛器。沿襲成風。則患遺後昆矣。但大臣得其人。則獨無此患耳。

新字:大臣弄権之風。多自幼主而起。権一下移。不可復収。主年既長。仍擁虚器。沿襲成風。則患遺後昆矣。但大臣得其人。則独無此患耳。

書き下し

大臣権を弄するの風は、多く幼主より起る。権一たび下に移れば、復た収むべからず。主の年既に長ずるも、仍ほ虚器を擁す。沿襲して風を成せば、則ち患ひ後昆に遺す。但だ大臣其の人を得れば、則ち独り此の患ひ無きのみ。

現代語訳

大臣が権力をもてあそぶ風潮は、多くは幼い君主の代から起こる。権力がいったん下に移ると、二度と取り戻すことはできない。君主が成長しても、なお名ばかりの地位を抱えているだけになる。それが代々受け継がれて慣習となれば、災いを子孫にまで残すことになる。ただ大臣にふさわしい人物を得たときだけは、この災いがない。

解説

幼君のもとで大臣が実権を握り、それが慣習となって君主が「虚器」、すなわち名ばかりの存在になってしまう過程を描いた一条です。前条の「権力に在れば権遂に下に帰す」を具体的な歴史の型として示したものと読めます。摂関政治や、江戸幕府・諸藩で家老や側用人が実権を握った例を、一斎も念頭に置いていたでしょう。しかし結びは制度論ではなく、「其の人を得れば」患いはないという人物論です。次の条では、その「其の人」の在り方が説かれます。事業承継や若いトップを支える立場の人にとって、補佐と専横の境目がどこにあるかを考える材料になります。

この章句が説くこと

為政権力補佐事業承継慣習

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