導師導古典を学びたいすべての人に

学則 / 答安澹泊書

夫不佞以宋儒爲新奇。而足下少服文恭先生之敎。意者必習於宋說者。則必以不佞爲異端邪說。唾而罵之。是以不佞之爲此書。握筆踟躕者久之。然是而不言。足下必以隨筆爲不佞終身之見耳。匿其蘊以阿人者。不佞於交義耻之。故敢陳之。乃以此而獲罪於足下。亦所不辭也。惟足下亮之。

新字:夫不佞以宋儒為新奇。而足下少服文恭先生之教。意者必習於宋説者。則必以不佞為異端邪説。唾而罵之。是以不佞之為此書。握筆踟躕者久之。然是而不言。足下必以随筆為不佞終身之見耳。匿其蘊以阿人者。不佞於交義耻之。故敢陳之。乃以此而獲罪於足下。亦所不辞也。惟足下亮之。

書き下し

夫れ不佞は宋儒を以て新奇と為す。而して足下は少くして文恭先生の教へに服す。意ふに必ず宋説に習ふ者ならん。則ち必ず不佞を以て異端邪説と為し、唾して之を罵らん。是を以て不佞の此の書を為る、筆を握りて踟躕すること之を久しうす。然れども是にして言はずんば、足下必ず随筆を以て不佞終身の見と為さんのみ。其の蘊を匿して以て人に阿るは、不佞交義に於て之を恥づ。故に敢へて之を陳ぶ。乃ち此を以て罪を足下に獲るも、亦た辞せざる所なり。惟だ足下之を亮とせよ。

現代語訳

私は宋儒の説を新奇なものと考えています。一方あなたは若い頃から文恭先生(朱舜水)の教えに服してこられました。思うに、きっと宋儒の説に慣れ親しんでおられるでしょう。それならば、必ず私を異端邪説の徒として、唾を吐いて罵られることでしょう。そのため私はこの手紙を書くのに、筆を握ったまま長いことためらいました。しかしここで言わなければ、あなたはきっと『随筆』を私の生涯の見解だと思われるでしょう。胸の内を隠して人におもねるのは、友としての交わりの道に照らして恥ずべきことです。だからあえて申し上げるのです。これによってあなたのお怒りを買うことになっても、甘んじて受けます。どうかあなたにはご了察いただきたいと思います。

解説

澹泊は若くして朱舜水に学んだ人であり、宋学に親しむ相手に宋学批判を書き送るのは礼を失いかねない。徂徠は筆を握って長くためらったと正直に記す。それでも言わなければ旧著を自分の終生の見解と誤解されるので、胸の内を隠して人におもねるのは交わりの義に恥じると述べ、怒りを買うのも辞さないと覚悟を示す。学説の違いを越えて相手を対等な友として遇する態度がここにある。立場の違う上司や取引先に本音を伝えるとき、敬意と率直さを両立させる手本として読める。

この章句が説くこと

誠実交友率直宋儒礼朱舜水

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る