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福翁自伝 / 攘夷論・仏国公使無法に威張る

その飜訳をする間に、時の仏蘭西のミニストル・ベレクルと云う者が、どう云う気前だか知らないが大層な手紙を政府に出して、今度の事に就て仏蘭西は全く英吉利と同説だ、愈よ戦端を開く時には英国と共々に軍艦を以て品川沖を暴れ廻ると、乱暴な事を云うて来た。誠に謂れのない話で、丸でその趣は今の西洋諸国の政府が支那人を威すと同じ事で、政府は唯英仏人の剣幕を見て心配する計り。私には能くその事情が分る、分れば分るほど気味が悪い。

新字:その翻訳をする間に、時の仏蘭西のミニストル・ベレクルと云う者が、どう云う気前だか知らないが大層な手紙を政府に出して、今度の事に就て仏蘭西は全く英吉利と同説だ、愈よ戦端を開く時には英国と共々に軍艦を以て品川沖を暴れ廻ると、乱暴な事を云うて来た。誠に謂れのない話で、丸でその趣は今の西洋諸国の政府が支那人を威すと同じ事で、政府は唯英仏人の剣幕を見て心配する計り。私には能くその事情が分る、分れば分るほど気味が悪い。

書き下し

その飜訳をする間に、時の仏蘭西のミニストル・ベレクルと云う者が、どう云う気前だか知らないが大層な手紙を政府に出して、今度の事に就て仏蘭西は全く英吉利と同説だ、愈よ戦端を開く時には英国と共々に軍艦を以て品川沖を暴れ廻ると、乱暴な事を云うて来た。誠に謂れのない話で、丸でその趣は今の西洋諸国の政府が支那人を威すと同じ事で、政府は唯英仏人の剣幕を見て心配する計り。私には能くその事情が分る、分れば分るほど気味が悪い。

現代語訳

その翻訳をしている間に、当時のフランス公使ベレクールという者が、どういう料簡かわかりませんが、大層な手紙を政府に出してきて、今度のことについてフランスはまったくイギリスと同意見だ、いよいよ戦いを開く時には英国と共に軍艦で品川沖を暴れ回ると、乱暴なことを言ってきました。まことにいわれのない話で、まるでその趣は今の西洋諸国の政府が中国人を脅すのと同じことで、政府はただ英仏人の剣幕を見て心配するばかりです。私にはその事情がよくわかり、わかればわかるほど気味が悪い。

解説

文久三年の償金問題に、フランス公使ベレクールが英国に同調して脅しをかけてきた場面です。福沢は、これを後年の列強が中国を脅す手口と同じだと見ています。つまり当時の日本は、欧米の力の論理にさらされていた立場でした。情報を翻訳しながら全体像が見える人ほど、不安が大きくなるというのも実感のこもった指摘です。現代でも、意思決定の場にいない人が楽観している間に、現場で状況を把握している担当者だけが重圧を負う場面があります。情報の格差が心理に及ぼす影響を考えさせます。

この章句が説くこと

フランス公使威嚇品川沖剣幕情報翻訳

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