益軒家訓 / 幼児須教
一凡先祖父母に孝するの道は、奉養祭禮に限らず、聖學を知り、仁義の道を行ひ、其家業を勤めて、其名を揚げ、父母先祖の名をあらはすを以て、孝行の道とすべし。孝經の首章を、よく體認すべし。一先祖は子孫の根本なり。年季隔り遠しといへども、おもひ慕ひて尊敬すべし。時節の祭愼み厚うすべし。但國法に背くべからず。
新字:一凡先祖父母に孝するの道は、奉養祭礼に限らず、聖学を知り、仁義の道を行ひ、其家業を勤めて、其名を揚げ、父母先祖の名をあらはすを以て、孝行の道とすべし。孝経の首章を、よく体認すべし。一先祖は子孫の根本なり。年季隔り遠しといへども、おもひ慕ひて尊敬すべし。時節の祭慎み厚うすべし。但国法に背くべからず。
書き下し
一凡先祖父母に孝するの道は、奉養祭礼に限らず、聖学を知り、仁義の道を行ひ、其家業を勤めて、其名を揚げ、父母先祖の名をあらはすを以て、孝行の道とすべし。孝経の首章を、よく体認すべし。一先祖は子孫の根本なり。年季隔り遠しといへども、おもひ慕ひて尊敬すべし。時節の祭慎み厚うすべし。但国法に背くべからず。
現代語訳
およそ先祖や父母に孝行する道は、養うことや祭りをすることに限りません。聖人の学を知り、仁義の道を行い、その家業を勤めて、自分の名を揚げ、父母や先祖の名をあらわすことを孝行の道とすべきです。孝経の首章をよく体得すべきです。先祖は子孫の根本です。年月が隔たって遠くなっていても、思い慕って尊敬すべきです。季節ごとの祭りは慎んで手厚くすべきです。ただし国の法に背いてはなりません。
解説
孝行とは親を養い祭ることにとどまらず、自ら道を行い家業に励んで名を揚げ、親や先祖の名を世に表すことだと説いています。孝経の首章(開宗明義章)には「身を立て道を行い、名を後世に揚げ、以て父母を顕すは孝の終りなり」とあり、益軒はこれを体得せよと言います。先祖を遠くても慕い、祭りを手厚くせよという教えには、家の連続を重んじる当時の価値観が表れています。自分がまっとうに生きること自体が親への恩返しになる、という考えは、今も大切にしたい視点です。
この章句が説くこと
孝先祖孝経家業名
関連する章句
-
論語・為政篇子游孝を問う。子曰く、「今の孝者は、是れ能く養うと謂う。犬馬に至るまで、皆能く養うこと有り。敬せずんば、何を以て別たんや。」
-
論語・為政篇子夏孝を問う。子曰く、「色難し。事有れば弟子其の労に服し、酒食有れば先生に饌(まかな)う。曾て是を以て孝と為さんや。」
-
論語・学而篇子曰く、「父在せば其の志を観、父没すれば其の行いを観る。三年父の道を改むること無くんば、孝と謂う可し。」
-
論語・為政篇孟懿子孝を問う。子曰く、「違(たが)うこと無かれ。」樊遅御(ぎょ)す。子之に告げて曰く、「孟孫我に孝を問う。我対えて曰く、違(たが)うこと無かれと。」樊遅が曰く、「何の謂(いい)ぞや。」子曰く、「生きては之に事(つか)うるに礼を以てし、死しては之を葬るに礼を以てし、之を祭るに礼を以てす。」
-
論語・為政篇孟武伯孝を問う。子曰く、「父母は唯其の疾(やまい)を之憂う。」
-
論語・里仁篇子曰く、三年父の道を改むること無きは、孝と謂う可し。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る