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益軒家訓 / 幼児須教

一幼き時の敎は、事繁くすべからず。事繁くして煩勞なれば、學問を疎んずるもの也。むづかしくして其氣を屈すべからず。年數と性質と應ぜざる事を、强て責むべからず。年比に隨ひ應じて敎ふべし。又生附を見て、其過ぎたるを抑へ、不足を補ひて、中に叶はしむべし。性質の惡しき所を、常に誡め匡すべし。凡小兒を育つるに、義方の訓をなすべし。姑息の愛をなすべからず。怠るをゆるす事なかれ。氣隨をゆるし、私欲を長ずべからず。

新字:一幼き時の教は、事繁くすべからず。事繁くして煩労なれば、学問を疎んずるもの也。むづかしくして其気を屈すべからず。年数と性質と応ぜざる事を、強て責むべからず。年比に随ひ応じて教ふべし。又生附を見て、其過ぎたるを抑へ、不足を補ひて、中に叶はしむべし。性質の悪しき所を、常に誡め匡すべし。凡小児を育つるに、義方の訓をなすべし。姑息の愛をなすべからず。怠るをゆるす事なかれ。気随をゆるし、私欲を長ずべからず。

書き下し

一幼き時の教は、事繁くすべからず。事繁くして煩労なれば、学問を疎んずるもの也。むづかしくして其気を屈すべからず。年数と性質と応ぜざる事を、強て責むべからず。年比に随ひ応じて教ふべし。又生附を見て、其過ぎたるを抑へ、不足を補ひて、中に叶はしむべし。性質の悪しき所を、常に誡め匡すべし。凡小児を育つるに、義方の訓をなすべし。姑息の愛をなすべからず。怠るをゆるす事なかれ。気随をゆるし、私欲を長ずべからず。

現代語訳

幼いときの教えは、あれこれ多くしてはなりません。事が多くて煩わしいと、学問を嫌うようになるものです。難しくしてその気持ちをくじいてはなりません。年齢や性質に合わないことを、無理に求めてはなりません。年ごろに従い、それに応じて教えるべきです。また生まれつきを見て、行き過ぎたところは抑え、足りないところは補って、ちょうどよいところにかなうようにすべきです。性質の悪いところは、常に戒めて正すべきです。およそ子どもを育てるには、正しい道にかなった教えをすべきです。その場しのぎの甘い愛情をかけてはなりません。怠けるのを許してはなりません。わがままを許して、私欲を伸ばさせてはなりません。

解説

詰め込みを避け、年齢と性質に応じて教えよ、という教育の原則を述べています。行き過ぎを抑え不足を補って中にかなわせるという考え方は、益軒が学んだ朱子学の「中庸」の発想です。「義方の訓」は春秋左氏伝の隠公三年に見える言葉で、子を愛するなら正しい道で教えよという意味です。その場しのぎの甘やかし(姑息の愛)を戒める一方で、無理な要求もするなと言うところに、益軒の均衡のとれた教育観が表れています。今の習い事や受験勉強の与え方を考えるうえでも参考になります。

この章句が説くこと

教育子育て中庸甘やかし性質

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