童子問 / 卷中
問治道之要。曰。文勝其武。則國祚修。武勝其文。則國脈蹙。賞勝其罰。則刑罰淸。而民心安。罰勝其賞。則刑罰亂。而民心搖。
新字:問治道之要。曰。文勝其武。則国祚修。武勝其文。則国脈蹙。賞勝其罰。則刑罰清。而民心安。罰勝其賞。則刑罰乱。而民心揺。
書き下し
治道の要を問ふ。曰く、文其の武に勝てば、則ち国祚修し。武其の文に勝てば、則ち国脈蹙まる。賞其の罰に勝てば、則ち刑罰清くして、民心安し。罰其の賞に勝てば、則ち刑罰乱れて、民心揺らぐ。
現代語訳
政治の要点を問う。答える。文が武にまされば国の命運は長くなり、武が文にまされば国の命脈は縮まる。賞が罰にまされば刑罰は清らかで民の心は安らぎ、罰が賞にまされば刑罰は乱れて民の心は揺らぐ。
解説
治道の要を問われて、仁斎は対句で簡潔に答える。文が武にまされば国の命運は長く、武が文にまされば命脈は縮む。賞が罰にまされば刑罰は清く民心は安らぎ、罰が賞にまされば刑罰は乱れ民心は揺らぐ。力による支配や罰による統制より、教化と褒賞を重んじる姿勢は、仁を政治の根本に置く仁斎の王道論そのものである。わずか五十字余りの章だが組織運営の原則として今も通用し、叱責や処分ばかりが目立つ職場では、人の心は落ち着かず、萎縮して離れていく。認め、ほめ、育てることを統制より厚くすることが、組織を長く安定させる要である。
この章句が説くこと
王道賞罰文武民心仁治道
関連する章句
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『童子問』卷中問ふ。何を以てか賞罰能く其の功罪に当たることを得ん。曰く、賞罰各其の功罪に当たらんことを欲する者は、政を為す者の心なり。然れども賞罰各其の功罪に当たらんと欲すれば、則ち罰は必ず過ぎて、賞は必ず及ばず。罰過ぎて賞及ばざれば、則ち人心睽く。人心睽けば、則ち国危ふし。故に聖人は其の賞を過ぎて、其の罰を減ず。其の賞を過ぎて、其の罰を減ずれば、則ち賞罰自ら其の当を得。書に曰く、罪の疑はしきは惟軽くし、功の疑はしきは惟重くす。其の不辜を殺さんよりは、寧ろ不経に失せよ、と。是れなり。孔子曰く、惟仁者のみ能く人を好み、能く人を悪む、と。蓋し人の善を好むは、毎に及び難く、而して人の悪を悪むは、必ず過ぎ易し。惟仁人は人を愛すること深し。故に好悪能く其の実に中る。賞罰の能く其の功罪に当たるも、亦然り。
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