中朝事実 / 賞罰章・刑罰の公正と賞罰の総論
諸神歸罪過於素戔鳴尊。而科之以千座置戶。遂促徵矣。至使拔髮以贖其罪。亦曰。拔其手足之爪贖之。已而竟遂降焉。 謹按。是行刑罪贖流之始也。凡刑者衆以惡之。事以涉衆。其著不可掩。而後察之行其罰。尊之無狀。至六合常闇。所其繫最博大也。故衆議行之刑。又贖其科。可謂刑罪之公。自是至人皇。刑法大定。律令周施。天下悉知刑之可懲矣。蓋罰以恥之。刑以害之。神聖豈欲之乎。否乃善終不長。道終不行也。故詳聽斷之法。謹詳讞之議。伸寃抑之屈。親死因之決。以愼刑憲。正典獄之任。存欽恤之誠。戒濫縱者。歷代聖主之明戒也。人一死而不生。身一黥而不復。事一謬。則千悔亦不補。故以至誠臨焉。以至明致之。而可得其中其孚也。〔以上行罰之義。〕 以上公賞罰之省。謹按。賞則勸。罰則懲者。情之恒也。神聖因其人情。以制政正其道。是所以刑賞爲大柄也。凡賞罰之道。在建極於其初。而省效於其後也。其制不明于初。則人不知守其準的。其效不糺於後。則人不能克其終。法之明也。猶久則怠。緩則弊。故有巡守巡察之省。以陟黜其政。著芳臭於其時。是治平之大權也。唯欲人之歡。欲人之畏。而數賞刑。私一人之喜怒。逞一時之好惡。不以天下之公。則人狎之輕之。賞刑不得勸懲之實也。或疑。明聖之君。刑賞錯不用。然則刑賞者衰世之政乎。愚謂。明聖之君。審賞刑而不惑。故稱諸明聖。凡登用黜退者。擧錯君子小人之道也。既有人則有喜怒好惡。既有君臣則有慶賞刑罰。何唯人而已乎。天地有春生秋殺。以一齊萬物乎。外朝唐虞之盛。擧十六相。錯四凶。大功二十爲天子。其天命天討是也。不知。唐虞之外亦有聖明之君。然乃賞罰之省。非所以爲治敎之要乎矣。
新字:諸神帰罪過於素戔鳴尊。而科之以千座置戸。遂促徴矣。至使抜髪以贖其罪。亦曰。抜其手足之爪贖之。已而竟遂降焉。 謹按。是行刑罪贖流之始也。凡刑者衆以悪之。事以渉衆。其著不可掩。而後察之行其罰。尊之無状。至六合常闇。所其繋最博大也。故衆議行之刑。又贖其科。可謂刑罪之公。自是至人皇。刑法大定。律令周施。天下悉知刑之可懲矣。蓋罰以恥之。刑以害之。神聖豈欲之乎。否乃善終不長。道終不行也。故詳聴断之法。謹詳讞之議。伸冤抑之屈。親死因之決。以慎刑憲。正典獄之任。存欽恤之誠。戒濫縦者。歴代聖主之明戒也。人一死而不生。身一黥而不復。事一謬。則千悔亦不補。故以至誠臨焉。以至明致之。而可得其中其孚也。〔以上行罰之義。〕 以上公賞罰之省。謹按。賞則勧。罰則懲者。情之恒也。神聖因其人情。以制政正其道。是所以刑賞為大柄也。凡賞罰之道。在建極於其初。而省効於其後也。其制不明于初。則人不知守其準的。其効不糺於後。則人不能克其終。法之明也。猶久則怠。緩則弊。故有巡守巡察之省。以陟黜其政。著芳臭於其時。是治平之大権也。唯欲人之歓。欲人之畏。而数賞刑。私一人之喜怒。逞一時之好悪。不以天下之公。則人狎之軽之。賞刑不得勧懲之実也。或疑。明聖之君。刑賞錯不用。然則刑賞者衰世之政乎。愚謂。明聖之君。審賞刑而不惑。故称諸明聖。凡登用黜退者。挙錯君子小人之道也。既有人則有喜怒好悪。既有君臣則有慶賞刑罰。何唯人而已乎。天地有春生秋殺。以一斉万物乎。外朝唐虞之盛。挙十六相。錯四凶。大功二十為天子。其天命天討是也。不知。唐虞之外亦有聖明之君。然乃賞罰之省。非所以為治教之要乎矣。
書き下し
諸神、罪過を素戔鳴尊に歸し、科するに千座置戶を以てし、遂に促め徵る。髮を拔かしめて以て其の罪を贖ふに至る。亦た曰く、其の手足の爪を拔きて之を贖はしむ、と。已にして竟に遂に降らしむ。 謹んで按ずるに、是れ刑・罪・贖・流を行ふの始めなり。凡そ刑は衆の以て之を惡み、事の以て衆に涉り、其の著はるること掩ふべからずして後に之を察して其の罰を行ふ。尊の無狀、六合常闇に至る。其の繫ぐ所、最も博大なり。故に衆議して之を刑し、又た其の科を贖はしむ。刑罪の公と謂ふべし。是れより人皇に至り、刑法大いに定まり、律令周く施かれ、天下悉く刑の懲らすべきを知る。蓋し罰は以て之を恥ぢしめ、刑は以て之を害す。神聖豈に之を欲せんや。否ずんば乃ち善終に長ぜず、道終に行はれざるなり。故に聽斷の法を詳らかにし、讞議を謹詳し、寃抑の屈を伸べ、死因の決を親しくし、以て刑憲を愼み、典獄の任を正し、欽恤の誠を存し、濫縱を戒むるは、歷代聖主の明戒なり。人一たび死すれば生きず。身一たび黥されば復せず。事一たび謬れば、則ち千悔も亦た補はず。故に至誠を以て臨み、至明を以て致して、其の中其の孚を得べきなり。〔以上、行罰の義。〕 以上、賞罰の省を公にす。謹んで按ずるに、賞すれば則ち勸め、罰すれば則ち懲らすは、情の恒なり。神聖、其の人情に因りて、以て政を制し其の道を正す。是れ刑賞を大柄と爲す所以なり。凡そ賞罰の道は、極を其の初めに建てて、效を其の後に省るに在り。其の制、初めに明らかならざれば、則ち人其の準的を守るを知らず。其の效、後に糺さざれば、則ち人其の終を克くする能はず。法の明らかなるも、猶ほ久しければ則ち怠り、緩ければ則ち弊す。故に巡守・巡察の省有りて、以て其の政を陟黜し、芳臭を其の時に著す。是れ治平の大權なり。唯だ人の歡を欲し、人の畏を欲して、數々賞刑し、一人の喜怒を私し、一時の好惡を逞しくして、天下の公を以てせざれば、則ち人之に狎れ之を輕んじ、賞刑勸懲の實を得ざるなり。或ひと疑ふ、明聖の君は、刑賞を錯きて用ひず。然れば則ち刑賞は衰世の政か、と。愚謂へらく、明聖の君は、賞刑を審らかにして惑はず。故に諸を明聖と稱す。凡そ登用黜退は、君子小人を擧錯するの道なり。既に人有れば則ち喜怒好惡有り。既に君臣有れば則ち慶賞刑罰有り。何ぞ唯だ人のみならんや。天地にも春生秋殺有り、以て萬物を一齊にするか。外朝は唐虞の盛んなる、十六相を擧げ、四凶を錯き、大功二十にして天子と爲る。其の天命天討是れなり。知らず、唐虞の外にも亦た聖明の君有り。然れば乃ち賞罰の省は、治敎の要と爲す所以に非ざらんや。
現代語訳
諸神は罪過を素戔嗚尊に帰し、千座の置戸の科(罰)を負わせ、ついに責めて取り立てた。髪を抜かせてその罪を贖わせるに至った。また、手足の爪を抜いて贖わせた、ともいう。やがて、ついに降らせた。 素行はこう考える。これは刑・罪・贖・流を行った始めである。およそ刑は、多くの人が憎み、事が多くの人に及び、その悪が明らかで隠せない状態になって後に、これを調べてその罰を行う。尊(素戔嗚尊)の無法は、天地四方が常闇になるほどであった。その及ぶところは最も大きかった。だから衆議してこれを刑し、またその科を贖わせた。刑罰の公正といえよう。これ以降、人皇の時代に至り、刑法が大いに定まり、律令がくまなく施行され、天下の人はみな刑が懲らしめるものだと知った。そもそも罰は恥を与えるもの、刑は害を与えるものである。神聖がこれを望むはずがあろうか。そうでなければ善は長く続かず、道は行われない。だから聴断の法を詳しくし、讞議(審議)を慎み、無実の者の屈を晴らし、死因の判断を自ら確かめて、刑の法を慎み、獄を司る任を正し、哀れみ慎む誠を存し、濫用や放縦を戒めるのが、歴代の聖主の明らかな戒めである。人は一度死ねば生き返らない。身は一度刺青されれば元に戻らない。事が一度誤れば、千たび悔いても補えない。だから至誠をもって臨み、至明をもって行ってこそ、その中正と信を得ることができる。(以上、行罰の義。) 以上、賞罰の省(吟味)を公にした。素行はこう考える。賞すれば励み、罰すれば懲りるのは、人情の常である。神聖はその人情に従って、政を制しその道を正した。これが刑賞を大きな柄とする所以である。およそ賞罰の道は、基準を初めに立て、その効果を後に省みることにある。その制度が初めに明らかでなければ、人は守るべき的を知らない。その効果を後に糾さなければ、人は終わりを全うできない。法が明らかでも、久しければ怠り、緩めば弊害が出る。だから巡守・巡察の省みがあって、その政を昇降させ、功罪を当時に明らかにする。これは治平の大きな権(権限)である。ただ人の歓心を得ようとし、人に畏れられようとして、しきりに賞罰を行い、一人の喜怒を私し、一時の好悪をほしいままにして、天下の公をもってしなければ、人はこれに慣れ軽んじて、賞罰が励まし懲らす実を得られない。ある人は疑う。明聖の君は、刑賞を置いて用いない。それなら刑賞は衰えた世の政ではないか、と。私は考える。明聖の君は、賞刑を詳しく吟味して惑わない。だから明聖と称される。およそ登用と退けは、君子と小人を挙げ置く道である。人がいれば喜怒好悪があり、君臣があれば慶賞刑罰がある。どうして人だけのことだろうか。天地にも春に生じ秋に殺す働きがあり、それによって万物を整えている。外朝(中国)は唐虞の盛んな時代に、十六人の相を挙げ、四凶を退け、大功を二十年で立てて天子となった。これはその天命・天討である。唐虞のほかにも聖明の君がいたかどうかはわからない。それでも、賞罰の省みが治教の要であることに変わりはないのである。
解説

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貞観政要・公平臣聞く、道徳の厚きは、軒・唐より尚(たっと)きは莫し。仁義の隆んなるは、舜・禹より彰(あき)らかなるは莫し。軒・唐の風を継ぎ、将に舜・禹の跡を追わんと欲せば、必ず之を鎮むるに道徳を以てし、之を弘むるに仁義を以てし、善を挙げて之に任じ、善を択びて之に従うべし。善を択び能に任ぜずして、之を俗吏に委ぬれば、既に遠度無く、必ず大体を失う。惟だ三尺の律を奉じて、以て四海の人を縄(ただ)し、垂拱無為を求めんと欲するも、得べからざるなり。故に聖哲の君臨するや、風を移し俗を易(か)うるに、厳刑峻法に資らず。仁義に在るのみ。故に仁に非ずんば以て広く施す無く、義に非ずんば以て身を正す無し。下に恵むに仁を以てし、身を正すに義を以てせば、則ち其の政は厳ならずして理まり、其の教えは粛(きび)しからずして成らん。然らば則ち仁義は理の本なり。刑罰は理の末なり。理を為むるに刑罰有るは、猶お御を執るに鞭策有るがごとし。人皆な化に従わば、刑罰は施す所無し。馬は其の力を尽くさば、則ち鞭策有るも用うる所無し。此に由りて之を言えば、刑罰は理を致すべからざること、亦た已に明らかなり。故に『潜夫論』に曰く、「人君の理は、道徳教化より大なるは莫し。民に性有り、情有り、化有り、俗有り。情性は心なり、本なり。俗化は行いなり、末なり。是を以て上君の世を撫するや、其の本を先にして其の末を後にし、其の心に順いて其の行いを履む。心情苟も正しければ、則ち奸慝は生ずる所無く、邪意は載する所無し。是の故に上聖は民の心を理むるに務めざる無し。故に曰く『訟を聴くは、吾も猶お人のごときなり。必ずや訟無からしめんか』と。之を道(みちび)くに礼を以てし、務めて其の性を厚くして其の情を明らかにす。民相い愛すれば、則ち相い傷害するの意無し。動けば義を思わば、則ち奸邪を畜(たくわ)うるの心無し。此くの若きは、律令の理むる所に非ず。此れ乃ち教化の致す所なり。聖人は甚だ徳礼を尊びて刑罰を卑しむ。故に舜は先ず契に敕して敬みて五教を敷かしめ、而る後に咎繇に任じて五刑を以てす。凡そ法を立つる者は、民の短を司りて、過誤を誅するを以てするに非ず。乃ち以て奸悪を防ぎて、禍患を救い、淫邪を検して、正道に内(い)るるなり。民は善化を蒙らば、則ち人に士君子の心有り。悪政を被らば、則ち人に奸乱を懐くの慮有り。故に善化の民を養うは、猶お工の曲豉(きょくし)を為すがごとし。六合の民は、猶お一蔭のごとし。黔首の属は、猶お豆麦のごとし。変化雲為は、将(ひき)いる者に在るのみ。良吏に遭わば、則ち忠信を懐きて仁厚を履む。悪吏に遇わば、則ち奸邪を懐きて浅薄を行う。忠厚積まば、則ち太平を致す。浅薄積まば、則ち危亡を致す。是を以て聖帝明王は、皆な徳化を敦くして威刑を薄くす。徳は、己を循(したが)わしむる所以なり。威は、人を治むる所以なり。民の生くるや、猶お金を鑠(と)かして炉に在るがごとし。方円薄厚は、镕制に随うのみ。是の故に世の善悪、俗の薄厚は、皆な君に在り。世の主、誠に能く六合の内、挙世の人をして、忠厚の情に感じて浅薄の悪無く、各々公正の心を奉じて、奸険の慮無からしめば、則ち醇釅(じゅんげん)の俗、復た茲に見(あら)われん」と。後王は未だ能く遵う能わずと雖も、専ら仁義を尚び、当に刑を慎み典を恤(あわ)れみ、哀敬にして私無かるべし。故に管子曰く、「聖君は法に任じて智に任ぜず。公に任じて私に任ぜず」と。故に天下に王として、国家を理む。
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『中朝事実』神治章・民の長を撰ぶ重みと治道の要天照太神、因りて天邑君を定む。即ち其の稲種を以て始めて天狭田及び長田に殖う。其の秋、垂穎八握にして、莫莫然として甚だ快し。 成務帝五年秋九月、諸国に令して、国郡に造長を立て、県邑に稲置を置かしむ。百姓安居し、天下無事なり。 謹んで按ずるに、是れ天人、民の長を建つるの始めなり。凡そ物相聚まれば、未だ嘗て長有りて以て統べざるはあらざるなり。鳥獣の群にも必ず其の先有り。況んや其の人をや。民に其の業有るをや。業には必ず教有り。人には必ず欲有り。其の教を知らざれば、則ち百穀時に違ひ、稼穡節を失ひて、民恒産を得ず。其の欲を制せざれば、則ち闘諍相起こり、獄訟日々に盛んにして、民は以て死亡に至る。故に神の霊、既に邑君有り、以て百穀を播時す。後世豈に忽せにすべけんや。成務帝、始めて国郡を分ち、封域を定む。造長は国郡を主り、稲置は県邑を司る。宜なるかな、百姓安居し、天下無事なること。夫れ天、烝民を生めども、自ら治むる能はず。遂に君有り。君万民を統ぶれども、独り理むる能はず。之を百官に付す。百官の理むる所は、其の揆惟れ万にして、其の繋る所は悉く民に在り。然れば乃ち百官の設けは、民の為に非ずや。人君の重きは、民の為に非ずや。既に天の民の為に己を立つるを知れば、則ち民を重んずるを以て先務と為さざる莫し。民を重んずるは、必ず民の長を撰ぶを重んずるに在り。人其の人に非ざれば、則ち官明らかならず。官明らかならざれば、則ち民情致すべからず。民情塞がれば、則ち民の長に非ざるなり。後世、民安く国豊かなるを得し者は、其の人を得しなり。民苦しみ国衰ふる有る者は、其の人を得ざるなり。故に郡主県令を軽んずるは、是れ民を軽んずるなり。民を軽んずるは、是れ天下国家を軽んずるなり。天下国家を軽んずるは、乾霊の国を授けたまふ徳に背き、天孫の統を垂れたまふ基を廃するに非ずや。四方嘉靖の休、万国咸寧の化は、其の機、端に此に在るなり。〔以上、民の長を建つ。〕 以上、治道の要を論ず。愚謂ふ、天下の治道、古今の論多岐なり。人君之に臨むに、未だ嘗て亡羊の失無くんばあらず。夫れ天下の本は国家に在り、国家の本は民に在り、民の本は君に在り。君明らかなれば則ち民安く、民安ければ則ち国治まり家斉ふ。国家治まり斉へば、則ち天下平らかなり。国家を治むるの道は、封建と郡県とに在り。侯王に封建すれば、則ち親を親しみ賢を賢とし、其の邦に因り、其の卿に命じ、方伯を建て、三監を立つ。天子巡狩して、礼を規し俗を観、黜陟の政を明らかにす。諸侯朝聘して、王室に勤め正朔を受け、退きては顔を違へざること咫尺の敬を存す。故に宗子は惟れ城、侯王は惟れ藩なり。郡県を以て守令に命ずれば、則ち任限を定め、吏務を察し、考課を明らかにし、賞罰を正し、按巡の察使を以て、其の土地人民の実を監す。然れば乃ち共に国家を維持し、大宝の祚、竟に傾くべからず。是れ国家治まりて後に天下平らかなるなり。凡そ人君の尊、下民の賤、九重の遠、市井の卑、若し軽んじて之を遠ざくれば、則ち其の阻つること猶ほ天壌の杳かなるがごとし。心誠に之を求むれば、猶ほ天の地を覆ひ、日月の万物を照らすがごとく、甚だ近くして掩ふべからざるなり。之を求むるの道は、養ふを以て先と為す。物は必ず養有り。草木鳥獣に水土羽毛枝葉有り、皆然り。況んや民をや。衣食給らざれば、則ち恒心無し。恒心無ければ、則ち刑罰に陥る。是れ人君の忍ぶべき道に非ず。養ふの道は、経界を定め、産業を考へ、農家を具へ、而る後に賦斂を正すに在り。既に庶く既に富めば、則ち教を以て本とす。衣食足りて教へざれば、則ち民又恒心を失ふ。教ふるの道は、人倫を秩し、風俗を正し、其の機を抑揚し、其の志を勧懲し、利を利とし楽を楽しむを以てするに在り。専ら愛すれば則ち情を縦にし欲を逞しくして、業を廃するを知らず。専ら戒むれば則ち民免れて恥無し。養教相持して民安し。然れども又天地常無く、民必ず幸否有り。故に其の備へを無事に設け、以て其の害を除き、窮民を救ひ、賑恤に周くす。否ざれば乃ち百姓必ず溝壑に転ぜん。人君荒政の設け、年穀の祈りは、是れ其の誠を尽くす所以なり。之を養ひ之を教ふるに、人君は一人の眇なるを以て、豈に天下の衆に及ばんや。故に其の長を建つ。長を建つるの道は、民間に保伍を立て、以て親しく之を察す。其の争訴論事は皆先づ焉に付し、而して之を規し之を和し、其の諍獄の機を防ぎ、背教の萌を折く。其の止むを得ざるに及びては、下吏之を計り、守令之を制す。伍には必ず長有り、村里には必ず老有り。之を郡県に総べ、諸国司に轄らしむ。是れ乃ち長を建つるの道なり。然れども其の議を致さず、其の道を尽くさざれば、則ち唯だ虚名にして実無し。古来、年限を定め、黜陟を明らかにするは、皆民の長を重んずるなり。民安ければ則ち国平らかなり。是れ民の国家に繋る所以なり。而して人君、天下を以て大宝と為し、拳拳として服膺し、恒に守るべきの道を致し、失ふべきの過ちを顧み、神聖開端の誠に因りて以て之を拡充すれば、則ち天壌と窮り無し。是れ治道の要なり。大都、人君の志に本づく所以なり。
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『新書』大政上誅賞に之れ慎む、故に其の不辜を殺さんよりは、寧ろ有罪を失せん。故に夫れ罪は、疑えば則ち之を附して己より去らしむ。夫れ功は、疑えば則ち之を附して己に与う。則ち此れ無罪にして誅せらるる有ること毋く、有功にして賞無き者有ること毋し。戒めよ、戒めよ。誅賞に之れ慎む、故に古の刑を立つるや、以て不肖を禁じ、以て怠惰の民を起こすなり。是を以て一罪疑わしければ則ち遂には誅せず、故に不肖は改むるを得るなり。故に一功疑わしければ則ち必ず倍かず、故に愚民は勧む可きなり。是を以て上に仁誉有りて下に治名有り。疑わしき罪は去るに従うは、仁なり。疑わしき功は与うるに従うは、信なり。戒めよ、戒めよ。其の下に慎む、故に誅して忌まず、賞して曲げず、民の罪を反して之を重くせず、民の功を滅して之を棄てず。故に上非を為せば、則ち諫めて之を止め、道を以て之を紀す。下非を為せば、則ち矜れみて之を恕し、道びきて之を赦し、柔らげて之を仮す。故に不肖の民有りと雖も、化して之に則る。故に昔者の帝王の、其の臣を貴ぶ所の者は、此くの如きのみ。