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智囊 / 狡黠・袁術諸妾

司隸馮方女有國色,避亂揚州,袁術登城見而悅之,遂取焉。諸婦教以「將軍貴人,重節氣,宜數涕泣以示憂愁也。若此,必加重。」馮女後見術,每垂泣,術果以為有心,益寵之。諸婦乃共絞殺,陷之於廁,言其哀怨自殺,術以其不得志而死,厚加殯斂。

新字:司隸馮方女有国色,避乱揚州,袁術登城見而悦之,遂取焉。諸婦教以「将軍貴人,重節気,宜数涕泣以示憂愁也。若此,必加重。」馮女後見術,毎垂泣,術果以為有心,益寵之。諸婦乃共絞殺,陥之於廁,言其哀怨自殺,術以其不得志而死,厚加殯斂。

書き下し

司隷の馮方の女に国色有り、乱を揚州に避く、袁術は城に登りて見て之を悦び、遂に取る。諸婦教うるに「将軍は貴人にして、節気を重んず、宜しく数ば涕泣して以て憂愁を示すべし。此くの若くすれば、必ず加重せん」と。馮女は後に術に見ゆる毎に垂泣す、術は果たして以て心有りと為し、益ます之を寵す。諸婦は乃ち共に絞殺し、之を廁に陥れ、其の哀怨して自殺せりと言う、術は其の志を得ずして死せりと以い、厚く殯斂を加う。

現代語訳

司隷校尉の馮方の娘は国中に並ぶ者のない美貌の持ち主で、戦乱を避けて揚州にいた。袁術は城に登って彼女を見かけて気に入り、とうとう側に迎えた。他の妾たちは馮氏に教えた。「将軍は身分の高い方で、節操を重んじます。何度も涙を流して憂いの色を見せるとよいでしょう。そうすれば、きっとますます大切にされますよ。」馮氏はその後、袁術に会うたびに涙を流した。袁術は、やはり心に思うところがあるのだと考え、ますます寵愛した。妾たちはそこで、みなで彼女を絞め殺し、便所に投げ込んで、悲しみと恨みから自害したのだと言った。袁術は、彼女が志を遂げられずに死んだと考え、手厚く弔った。

解説

寵愛を競う妾たちが、新参者に偽りの助言をして自滅に追い込む、冷たい話です。親切な助言の形で相手に不利な行動を取らせ、その結果を殺害の口実に使いました。袁術は、涙を節操の表れと解釈し、死を悲嘆の自害と受け取っており、自分の見たい物語を事実に当てはめています。管理職が学べるのは、競争相手が出す善意の助言の裏を一度は疑うことと、報告を受ける側が、自分の好みに合う解釈に流れていないか確かめる姿勢です。人事の現場でも、新人に近づいて助言を与える先輩が、利害を持っていないかは見落としやすい点です。なお原文の記録は簡略で、細部の事情は確かではありません。

この章句が説くこと

垂泣絞殺袁術人を見抜く判断信用

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