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智囊 / 得情・李德裕

李德裕鎮浙右。甘露寺僧訴交代常住什物,被前主事僧耗用常住金若干兩,引證前數輩,皆有遞相交領文籍分明,眾詞指以新得替人隱而用之,且云:「初上之時,交領分兩既明,及交割之日,不見其金。」鞫成具獄,伏罪昭然。未窮破用之所,公疑其未盡,微以意揣之,僧乃訴冤曰:「積年以來,空交分兩文書,其實無金矣,眾乃以孤立,欲乘此擠之。」公曰:「此不難知也。」乃召兜子數乘,命關連僧人對事,遣人兜子中,門皆向壁,不令相見;命取黃泥各模交付下次金樣以憑證據,僧既不知形狀,竟模不成,前數輩皆伏罪。

新字:李徳裕鎮浙右。甘露寺僧訴交代常住什物,被前主事僧耗用常住金若干両,引証前数輩,皆有逓相交領文籍分明,衆詞指以新得替人隠而用之,且云:「初上之時,交領分両既明,及交割之日,不見其金。」鞫成具獄,伏罪昭然。未窮破用之所,公疑其未尽,微以意揣之,僧乃訴冤曰:「積年以来,空交分両文書,其実無金矣,衆乃以孤立,欲乗此擠之。」公曰:「此不難知也。」乃召兜子数乗,命関連僧人対事,遣人兜子中,門皆向壁,不令相見;命取黄泥各模交付下次金様以憑証拠,僧既不知形状,竟模不成,前数輩皆伏罪。

書き下し

李徳裕、浙右に鎮す。甘露寺の僧、交代せる常住の什物を訴う。前の主事僧に常住の金若干両を耗用せられたりと。引証する前の数輩は皆な遞相に交領せる文籍分明なり。衆詞は、新たに替を得たる人が隠して之を用いしと指す。且つ云う、「初め上るの時、交領の分両既に明らかなり。交割の日に及んで、其の金を見ず」と。鞫して獄を具え、伏罪昭然たり。未だ破用の所を窮めず。公、其の未だ尽くさざるを疑い、微かに意を以て之を揣るに、僧乃ち冤を訴えて曰く、「積年以来、空しく分両の文書を交せしのみ。其の実は金無きなり。衆は乃ち孤立せるを以て、此に乗じて之を擠さんと欲す」と。公曰く、「此れ知り難からず」と。乃ち兜子数乗を召し、命じて連関の僧人をして事に対せしめ、人を兜子の中に遣り、門は皆な壁に向けて相見えしめず。命じて黄泥を取り、各々下次の金の様を模して交付し、以て証拠に憑らしむ。僧は既に形状を知らず、竟に模成らず。前の数輩は皆な伏罪す。

現代語訳

李徳裕が浙西を鎮守していたとき、甘露寺の僧が、引き継ぎの常住財産について訴え出た。前任の主事僧に、寺の共有の金を何両か使い込まれたというのだ。証拠として挙げる前の数人の記録は、順に受け渡しをした文書がはっきりしていた。皆の言い分は、新しく交代で着任した人が隠して使ったのだというものだった。さらに言った。「初めて着任したとき、引き継ぎの重さははっきりしていました。引き渡しの日になって、その金が見えなかったのです」と。取り調べて判決をまとめ、罪に服することは明らかであった。ただ、使い込んだ先をまだ追及しきれていなかった。公は、真相が尽くされていないと疑い、そっと探りを入れた。すると僧は冤罪を訴えて言った。「長年、ただ金の分量の文書を受け渡してきただけで、実際には金など無かったのです。皆は、私が孤立しているのに乗じて、私を陥れようとしているのです」と。公は言った。「これは分かりにくいことではない」と。そこで駕籠を数台呼び、関係する僧たちに一人ずつ入らせ、門を壁に向けて互いに見えないようにし、黄色い泥を渡して、それぞれ引き継いだという金の形を模させ、証拠にさせた。新任の僧は金の形を知らなかったので、とうとう型が作れなかった。前の数人はみな罪を認めた。

解説

この話は、書類上だけの引き継ぎが長年の不正を覆い隠していた構造を、見事に破る検証法を示しています。李徳裕は、それぞれの僧を別々の駕籠に入れて互いに見えない状態にし、泥で金の形を模させました。実物を実際に引き継いでいたなら、形を知っているはずだからです。管理職も、引き継ぎが書類だけで形骸化していないか、実物を確認する習慣が必要です。在庫や資産の引き継ぎで、数字だけを回し続ける慣行は、不正の温床になります。孤立した人に責任が集中する構図にも、注意が必要です。

この章句が説くこと

交領分両黄泥兜子引き継ぎ実物確認

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