智囊 / 狡黠・斷腳盜
有躄盜者,一足躄,善穿窬。嘗夜從二盜入巨姓家,登屋翻瓦,使二盜以繩下之,搜資入之櫃,命二盜係上已,復下其櫃,入資上之,如是者三矣。躄盜自度曰:「櫃上,彼無置我去乎。」遂自入坐櫃中,二盜係上之,果私語曰:「資重矣,彼出必多取,不如棄去。」遂持櫃行大野中,一人曰:「躄盜稱善偷,乃為我二人賣。」一人曰:「此時將見主人翁矣。」相與大笑歡喜,不知躄盜乃在櫃中,頃二盜倦,坐道上,躄盜度將曙,又聞遠舍有人語笑,從櫃中大聲曰:「盜劫我。」二盜惶訝遁去,躄盜顧乃得金資歸。何大復作《躄盜篇》。
新字:有躄盗者,一足躄,善穿窬。嘗夜従二盗入巨姓家,登屋翻瓦,使二盗以縄下之,捜資入之櫃,命二盗係上已,復下其櫃,入資上之,如是者三矣。躄盗自度曰:「櫃上,彼無置我去乎。」遂自入坐櫃中,二盗係上之,果私語曰:「資重矣,彼出必多取,不如棄去。」遂持櫃行大野中,一人曰:「躄盗称善偸,乃為我二人売。」一人曰:「此時将見主人翁矣。」相与大笑歓喜,不知躄盗乃在櫃中,頃二盗倦,坐道上,躄盗度将曙,又聞遠舎有人語笑,従櫃中大声曰:「盗劫我。」二盗惶訝遁去,躄盗顧乃得金資帰。何大復作《躄盗篇》。
書き下し
躄盗なる者有り。一足躄にして、善く穿窬す。嘗て夜に二盗に従いて巨姓の家に入る。屋に登り瓦を翻し、二盗をして縄を以て之を下さしむ。資を捜して櫃に入れ、二盗に命じて上に係げ已わらしめ、復た其の櫃を下す。資を入れて之を上す。是くの如くする者三たびす。躄盗自ら度りて曰く、「櫃上らば、彼、我を置き去ること無からんか」と。遂に自ら入りて櫃中に坐す。二盗、之を係げて上す。果たして私語して曰く、「資重し。彼出でなば必ず多く取らん。棄て去るに如かず」と。遂に櫃を持ちて大野の中を行く。一人曰く、「躄盗、善く偷むと称するに、乃ち我ら二人の為に売らる」と。一人曰く、「此の時、将に主人翁に見えんとす」と。相い与に大いに笑い歓喜す。躄盗の乃ち櫃中に在るを知らず。頃くして二盗倦み、道上に坐す。躄盗、将に曙けんとするを度り、又遠舎に人の語笑する有るを聞き、櫃中より大声にて曰く、「盗、我を劫す」と。二盗惶訝して遁れ去る。躄盗、顧みて乃ち金資を得て帰る。何大復「躄盗篇」を作る。
現代語訳
足の不自由な盗賊がいた。片足が不自由だったが、盗みがうまかった。あるとき夜に、二人の盗賊について、大きな家に忍び込んだ。屋根に上り瓦をはがして、二人に縄で自分を下ろさせた。財物を探して櫃に入れ、二人に上へ引き上げさせ、また櫃を下ろしてもらう。財物を入れては引き上げさせる。このようにして三度繰り返した。足の不自由な盗賊は心の中で考えた。「櫃が上がったら、仲間は私を置き去りにするのではないか」。そこで自分で櫃の中に入って座った。二人は縄をつないで引き上げた。案の定、ひそひそと言い合った。「財物が重いな。あいつが出てきたら、きっと多く取るだろう。捨てて行くに限る」。そして櫃を持って広い野原の中を歩いた。一人が言った。「あの足の不自由な盗賊は盗みがうまいと言われていたのに、結局、私たち二人に売られたな」。もう一人が言った。「今ごろは、主人に会っているだろう」。二人は大笑いして喜んだ。足の不自由な盗賊が櫃の中にいるとは知らなかった。しばらくして二人は疲れ、道端に座った。盗賊は夜が明けようとしているのを計算し、遠くの家で人の話し声や笑い声がするのを聞くと、櫃の中から大声で言った。「盗賊が私を襲った」。二人は驚き怪しんで逃げ去った。足の不自由な盗賊は、そのあと金品を手に入れて帰った。何大復が「躄盗篇」を作った。
解説
この章句が説くこと
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