智囊 / 狡黠・李道古・鄒老人
李道古便佞巧宦,常以酒餚棋博游公卿門。角賭之際,偽為不勝而厚償之。故得一時虛名,而嗜利者悉與之狎。鄒老人,吳之猾徒也。有富人王甲夜殺其仇家李乙而事露,有司捕置於獄,以重賄求老人,老人索百金,懷之走南都,納交於刑曹徐公。往來漸密,時留宿,忽中夜出金獻徐,訴以內親王甲枉獄,徐曰:「吾不吝為謀,然吳越事隔,何可致力?」老人曰:「不難,昨公捕得海盜二十餘人,內兩人吳產也,公第敕二盜,認李乙為其夜殺,則此不加罪,而彼得再生矣。」徐許之,老人退,又密訪二盜妻子,許以養育,二盜亦許之。及鞫,刑曹問:「若吳人,曾殺人否?」二盜即招某月日殺李乙於家,掠其資。老人抱案還吳,令王甲之子鳴於官,竟得釋。甲自獄歸,遇李乙於門,竟死。
新字:李道古便佞巧宦,常以酒餚棋博游公卿門。角賭之際,偽為不勝而厚償之。故得一時虚名,而嗜利者悉与之狎。鄒老人,呉之猾徒也。有富人王甲夜殺其仇家李乙而事露,有司捕置於獄,以重賄求老人,老人索百金,懐之走南都,納交於刑曹徐公。往来漸密,時留宿,忽中夜出金献徐,訴以内親王甲枉獄,徐曰:「吾不吝為謀,然呉越事隔,何可致力?」老人曰:「不難,昨公捕得海盗二十余人,内両人呉産也,公第勅二盗,認李乙為其夜殺,則此不加罪,而彼得再生矣。」徐許之,老人退,又密訪二盗妻子,許以養育,二盗亦許之。及鞫,刑曹問:「若呉人,曽殺人否?」二盗即招某月日殺李乙於家,掠其資。老人抱案還呉,令王甲之子鳴於官,竟得釈。甲自獄帰,遇李乙於門,竟死。
書き下し
李道古は便佞巧宦にして、常に酒餚・棋博を以て公卿の門に游ぶ。角賭の際、偽りて勝たざるものとなして、厚く之に償う。故に一時の虚名を得て、利を嗜む者は悉く之と狎る。鄒老人は呉の猾徒なり。富人王甲、夜に其の仇家の李乙を殺して事露わる。有司、捕えて獄に置く。重賄を以て老人に求む。老人、百金を索め、之を懐きて南都に走り、交わりを刑曹の徐公に納る。往来漸く密にして、時に留宿す。忽ち中夜に金を出して徐に献じ、訴うるに内親の王甲の獄に枉げられたるを以てす。徐曰く、「吾は謀を為すを吝まず。然れども呉越は事隔つ。何ぞ力を致すべけんや」と。老人曰く、「難からず。昨、公は海盗二十余人を捕え得たり。内の両人は呉の産なり。公、第だ二盗に敕して、李乙を認めて其の夜の殺す所と為さしめば、則ち此は罪を加えられず、而して彼は再生を得ん」と。徐これを許す。老人退き、又密かに二盗の妻子を訪い、許すに養育を以てす。二盗も亦た許す。鞫するに及び、刑曹問う、「若は呉人なり、曾て人を殺せしや否や」と。二盗即ち招す、某月日、李乙を家に殺し、其の資を掠めたりと。老人、案を抱きて呉に還り、王甲の子をして官に鳴らしめ、竟に釈さるるを得たり。甲、獄より帰り、李乙に門に遇い、竟に死す。
現代語訳
李道古は、口がうまく世渡り上手な男で、いつも酒や肴、碁や博打を手土産に、高官たちの屋敷に出入りしていた。賭けごとのときには、わざと負けたふりをして、相手に多く払った。このため一時は人気という虚名を得て、利をむさぼる連中がみなこの男と親しくなった。鄒老人は呉の悪賢い男である。富豪の王甲が、夜に仇である李乙を殺し、事が露見した。役人が捕らえて獄に入れた。王甲は老人に重い賄賂を使って助けを求めた。老人は百金を要求し、それを懐に南京へ走り、刑曹の徐公に近づいた。往来がしだいに親密になり、ときには泊まることもあった。ある夜中、突然金を出して徐に献上し、身内の王甲が無実の罪で獄にあると訴えた。徐は言った。「私は謀を巡らすのを惜しまないが、呉と越は遠く、事情が離れている。どう力を尽くせるだろうか」。老人は言った。「難しくありません。先日、公は海賊二十余人を捕えました。その中の二人は呉の生まれです。公がこの二人に命じて、李乙をその夜に殺したのは自分だと認めさせれば、こちらは罪に問われず、あちらは生き延びられます」。徐はこれを許した。老人は退き、さらに密かに二人の海賊の妻子を訪ね、養育を約束した。二人の海賊もまた承諾した。取り調べになると、刑曹が問うた。「お前は呉の人間だな。人を殺したことはあるか」。二人はたちどころに、某月某日に李乙を家で殺し、その財物を奪ったと自白した。老人は記録を抱えて呉に戻り、王甲の子に役所へ訴えさせた。ついに王甲は釈放された。甲は獄から帰り、門のところで李乙に出会い、そのまま死んだ。
解説
この章句が説くこと
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