智囊 / 狡黠・高歡
歡計圖爾朱兆,陰收眾心。乃詐為兆書,將以六鎮人配契胡為部曲,眾遂愁怨。又偽為并州符,徵兵討步落稽,發萬人,將遣之,而故令孫騰、尉景偽請留五日,如此者再。歡親送之郊,雪涕執別,於是眾皆號哭,聲動地。歡乃喻之曰:「與爾俱失鄉客,義同一家,不意乃爾。今直向西,當死;後軍期,又當死;配胡人,又當死。奈何?」眾曰:「唯有反耳。」歡曰:「反是急計,須推一人為主。」眾願奉歡,歡曰:「爾等皆鄉里,難制,雖百萬眾,無法終灰滅。今須與前異,不得欺漢兒,不得犯軍令,否者,吾不能取笑天下。」眾皆頓首:「生死唯命。」於是明日遂椎牛享士,攻鄴,破之。
新字:歓計図爾朱兆,陰収衆心。乃詐為兆書,将以六鎮人配契胡為部曲,衆遂愁怨。又偽為并州符,徴兵討歩落稽,発万人,将遣之,而故令孫騰、尉景偽請留五日,如此者再。歓親送之郊,雪涕執別,於是衆皆号哭,声動地。歓乃喩之曰:「与爾倶失郷客,義同一家,不意乃爾。今直向西,当死;後軍期,又当死;配胡人,又当死。奈何?」衆曰:「唯有反耳。」歓曰:「反是急計,須推一人為主。」衆願奉歓,歓曰:「爾等皆郷里,難制,雖百万衆,無法終灰滅。今須与前異,不得欺漢児,不得犯軍令,否者,吾不能取笑天下。」衆皆頓首:「生死唯命。」於是明日遂椎牛享士,攻鄴,破之。
書き下し
歓、爾朱兆を図らんことを計り、陰かに衆心を収む。乃ち詐りて兆の書を為し、将に六鎮の人を以て契胡に配して部曲と為さんとし、衆は遂に愁怨す。又た偽りて并州の符を為し、兵を徴して步落稽を討たしむ。万人を発し、将に之を遣わさんとして、故に孫騰、尉景をして偽りて留むること五日を請わしめ、此くの如くする者再たびす。歓は親ら之を郊に送り、涕を雪ぎて別れを執り、是に於いて衆は皆号哭し、声は地を動かす。歓は乃ち之を喩して曰く、「爾と俱に郷を失える客にして、義は一家に同じ。意わず乃ち爾るとは。今直ちに西に向かえば、当に死すべし。後軍期は、又た当に死すべし。胡人に配せらるるも、又た当に死すべし。奈何せん」と。衆曰く、「唯だ反するのみ有り」と。歓曰く、「反するは是れ急計なり。須く一人を推して主と為すべし」と。衆は歓を奉ぜんことを願う。歓曰く、「爾等は皆郷里なり、制し難し。百万の衆と雖も、法無くんば終に灰滅せん。今須く前と異なるべし。漢児を欺くを得ず、軍令を犯すを得ず。否ざれば吾は天下に笑いを取る能わず」と。衆は皆頓首して「生死唯だ命のままに」と。是に於いて明日遂に牛を椎して士を享し、鄴を攻めて之を破る。
現代語訳
高歓は、爾朱兆を倒そうと計画し、ひそかに人々の心をつかんでいた。そこで偽って爾朱兆の書状を作り、六鎮の人々を契胡に所属させて部下にしようとしていると見せかけ、人々はこれを憂い恨んだ。さらに并州の偽の命令書を作り、兵を集めて步落稽を討伐させようとした。一万人を出発させ、送り出そうとするときに、わざと孫騰と尉景に偽って五日間の延期を願い出させ、こうしたことを二度繰り返した。高歓は自ら郊外まで見送り、涙をぬぐって別れを惜しんだので、人々はみな大声で泣き、その声は地を揺るがした。高歓はそこで彼らに諭して言った。「おまえたちと私はともに故郷を失った身で、義は一家と同じだ。まさかこうなるとは思わなかった。いま、まっすぐ西に向かえば死ぬ。後続の軍が期日に遅れても死ぬ。契胡に配属されても死ぬ。どうしたらよいか」。人々は言った。「反乱するしかありません」。高歓は言った。「反乱は急場の策だ。ぜひ一人を推して主にしなければならない」。人々は高歓を奉じたいと願った。高歓は言った。「おまえたちはみな同郷の者で、まとめにくい。百万の軍勢でも、規律がなければ最後は滅びてしまう。いまは以前と違うようにせねばならない。漢人を欺いてはならず、軍令を犯してはならない。そうでなければ私は天下の笑いものになるだろう」。人々はみな頭を地につけて言った。「生死はご命令のままに」。そこで翌日、牛を屠って兵士をもてなし、鄴を攻めてこれを破った。
解説
この章句が説くこと
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