智囊 / 雄略・新婦
某家娶婦之夕,有賊來穴壁。已入矣,會其地有大木,賊觸木倒,破頭死。燭之,乃所識鄰人。倉惶間,懼反餌禍,新婦曰:「無妨。」令空一箱,納賊屍於內,舁至賊家門首,剝啄數下,賊婦開門見箱,謂是夫盜來之物,欣然收納。數日夫不還,發視,乃是夫屍。莫知誰殺,因密瘞之而遁。
新字:某家娶婦之夕,有賊来穴壁。已入矣,会其地有大木,賊触木倒,破頭死。燭之,乃所識鄰人。倉惶間,懼反餌禍,新婦曰:「無妨。」令空一箱,納賊屍於内,舁至賊家門首,剥啄数下,賊婦開門見箱,謂是夫盗来之物,欣然収納。数日夫不還,発視,乃是夫屍。莫知誰殺,因密瘞之而遁。
書き下し
某家、婦を娶るの夕、賊有り、来たりて壁を穴す。已に入るに、会たま其の地に大木有り、賊は木に触れて倒れ、頭を破りて死す。之を燭すれば、乃ち識る所の鄰人なり。倉惶の間、反って禍を餌けんことを懼る。新婦曰く、「妨げ無し」と。一箱を空しくせしめ、賊の屍を内に納め、舁きて賊の家の門首に至り、剝啄すること数下す。賊の婦は門を開き箱を見て、是れ夫の盗み来たれる物と謂い、欣然として収納す。数日、夫は還らず、発き視れば、乃ち是れ夫の屍なり。誰の殺す所か知る莫く、因りて密かに之を瘞めて遁る。
現代語訳
ある家で嫁を迎えた夜、賊がやって来て壁に穴を開けた。すでに侵入したとき、たまたまその場所に大木があり、賊は木にぶつかって倒れ、頭を割って死んだ。明かりで照らして見ると、顔見知りの隣人であった。あわてふためく中、かえって災いを受けるのではないかと恐れた。新婦は言った。「かまいません」。箱の中身を空にさせ、賊の死体をその中に納め、担いで賊の家の門前まで運び、数回戸を叩いた。賊の妻は門を開いて箱を見て、夫が盗んで来た品だと思い、喜んで受け取った。数日たっても夫は戻らず、開けてみると、それは夫の死体であった。だれが殺したのか分からず、そこでひそかに死体を埋めて逃げ去った。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『智囊』雄略・鄒僕妻梁の末、襄州都軍務の鄒景温は職を徐に移され、また都軍の務めを管した。勁僕があり、拳勇を自ら恃み、独り妻と驢を策いて行き、芒、碭の澤の間に至って、大声で言った、「聞く、ここは素より豪客が多いと。どうして一人として吾が曹と勝負を決する者がいないのか。」言い畢ると、五六人の盗が叢薄の間より躍り出た。一人の夫が後ろより双手で交抱し、搏って之を仆し、短刃を抽いて以てその喉を断った。蓋し其の不備を掩ったのである。ただ妻が側にあり、殊に惶駭せず、ただ矯って大呼して言った、「快いかな、今日方に吾が恥を雪いだ。吾は良家の子で、其の俘掠に遭って、ここに致った。誰が神明がないと言うか。」賊は其の誠と謂って殺さず、行李と二驢とともに、驅って南に邁き、五六十里に近づき、亳の北界の達孤荘の南に至って息んだ。荘の門に器甲があり、蓋し近戍の巡警の卒である。この婦は遂に径ちに村人の中堂に入った。盗もまた其の食を謀ると謂って疑わなかった。そこで其の総首に泣いて拝し、且つ其の夫が屠られた状を告げた。総首は潜かに其の徒を召し、一時に執縛した。ただ一盗だけが逸れた。械して亳城に送り、咸な棄市された。婦は襄陽に返り、尼となって終えた。
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『智囊』雄略・邑宰妾守る者は金を分かつを貪り、忍ぶ能わず、足は覚えず前む。宰は間を以て潜かに逸す。衆は金を懐にして既に饜き、出でて宰を失うを視、懼れて走らんと欲す。妾は弱き者一人を択びて力めて之を持し、大いに呼ぶ、「攫金の賊在り」と。衆は奮拳して斉しく毆り、歯甲俱に集う。妾は且に死せんとするも、終に釈かず、声愈いよ厲し。外の人を動かし、外の人入り、衆は竄り、其の一を獲たり。並びに妾の持する所の者と両人を、巡城の潘御史の中に送る。妾は群凶の淫貪の状を訴え、兼ねて失う所の鬻産の銀数を具す。此の両人は諱む能わず、尽く其の党の姓名を供す。頃之くして、悉く擒えて至り、銀は猶お懐に在り。而して犯官の逸出するを以て解と為す。御史は詔獄を視しむるに、則ち宰焉に在り、衆は語塞がり、乃ち罪を不肖の姪に委ぬ。御史は姪を収め、尽く箠の下に斃す。妾は故の金を取りて帰り、数を籍して宰に報じ、病むこと数日にして、乃ち死す。〔評〕獄中の囚の私に出入するは、法に非ざるなり。詔獄甚だし。方に群邏の押し至るや、宰を以て奇貨と為さざらんや。膽薄と言いて其の志を堅くし、金多しと言いて其の欲に中て、謔を忍びて以て之を堅くし、空橐を以て之を餌す。守者を怠らせて宰を逸すは、固より已に吾が算の中に在り。其の不意に出で、一弱を持して以て衆強を羈す。仮令い身は老拳の下に斃るるとも、罪人其れ免れんや。群凶先に我が死するに至りても、目は瞑すべきなり。婦の智は言うを必とせず。独り其の猝にして乱れず、死して怵れず、従容として功に就くは、丈夫の智の逮ばざる所有り。惜しむらくは伝うる者其の名を逸す。然りと雖も、千秋の下、一邑宰の妾有りて浣紗女、鋭司徒の妻、車中の女子の儔に在るを知らば、斯れ友無しと為さざるなり。
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『智囊』詰奸・吉安某老吏吉安州の富豪、婦を娶る。盗有り、人の冗雑なるに乗じて婦の室に入り、牀下に潜伏して、夜に行竊するを伺う。意わず、明燭は旦に達すること三夕、飢うること甚だしく、奔り出づ。執えて以て官に聞す。盗曰く、「吾は盗に非ず、医なり。婦に癖疾有り、我をして相随わしめ、常に為に薬を用いしむるのみ」と。宰、詰問すること再三、盗は婦家の事を言うこと甚だ詳らかなり。蓋し潜伏の時に聞きし所の枕席の語なり。宰、之を信じ、婦を逮えて供証せしめんとす。富家は懇ろに免れんことを願うも、従わず。之を老吏に謀る。吏、宰に白して曰く、「彼の婦、初めて帰ぐに、勝負を論ぜず、辱めは焉より大なるは莫し。盗は潜入して突出し、必ず婦を識らず。若し他の婦を以て出でて対せしめ、盗若し之を執らば、其の誣いなるを見るべし」と。宰曰く、「善し」と。一妓を選び、盛服して輿して至らしむ。盗呼びて曰く、「汝は我を邀えて病を治せしめ、乃ち我を執えて盗と為すか」と。宰大いに笑い、盗遂に罪に伏す。
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『智囊』雄略・藍姊紹興中、京東の王寓、新淦の濤泥寺に寓し、嘗て客を宴す。中夕に散じ、主人は酔いて臥す。俄にして群盗入り、諸子及び群婢を執えて之を縛る。群婢呼びて曰く、「庫の鑰を司る者は藍姐なり」と。藍は即ち応じて曰く、「有り。主人を驚かす毋かれ」と。匙鑰を付し、席上の燭を秉りて之を指引し、金銀の酒器首飾、数を尽くして取り去る。主人醒めて、方に知り、明け発ちて県に訴う。藍姐は密かに主人に謂いて曰く、「捕うること易し。群盗は皆白を衣る。妾は燭を秉りし時に、尽く燭の涙を以て其の背を汚せり。当に密かに捕者をして是を以て験せしむべし」と。後に果たして皆獲らる。事は《賢奕編》に見ゆ。
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『智囊』詰奸・張升張升、潤州に知たりし日、婦人の夫出でて数日帰らざる有り。,忽ち人の報じて菜園の井中に死人有りと言う者有り。婦人驚き往きて之を視、号哭して曰く、「吾が夫なり」と。遂に以て官に聞こゆ。公は属官をして鄰里を集め、井に就きて其の夫なるや否やを験せしむ。皆以えらく、井深くして弁ずべからず、請う屍を出して験せんと。公曰く、「衆皆弁ずること能わず、婦人は独り何を以て是れ其の夫なるを知るか」と。所司に収付して鞫問すれば、果たして奸人の其の夫を殺し、婦人は謀に与る者なり。
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『智囊』狡黠・老嫗騙局子婦、其の請を允し、且つ衣飾を多く貨して、盛妝して往く。嫗の子婦出迎す。面黄にして病者の如し。日の晡なるに、嫗の子、二姆に迎親を請い、且つ曰く、「郷間の風俗は是くの若きのみ」と。嫗、佯りて曰く、「汝の妻、病むと雖も、今日は姑と称さる。何ぞ自ら往きて迎えずして、二位を煩わすや」と。其の子曰く、「規模雅ならず。以て重きを取る無し。既に来たれり、何ぞ一往を惜しまん」と。嫗乃ち之を許す。是に於いて嫗と病婦と及び二子婦、俱に船に下りて去る。更余にして返らず。嫗の子、假りに出でて覘うとして、孫又之に継ぎ、皆去れり。天明に及んで、遍く覓むれども蹤無し。之を房主に訪うに、則ち云う、「五六月前に来たりて房を租りて住めり。其の故を知らず」と。翁父子、悵悵として帰る。親友来たりて衣飾を取る。嚢を傾けて之を償う。而して二婦の家、女を覓むるも得ず、之を官に訟う。翁と子、恨み極まり、因りて自尽す。
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