智囊 / 雄略・李寄
請好劍及咋蛇犬,至八月朝,懷劍將犬詣廟中坐,先作數石米餈蜜麥少,以置穴口,蛇夜便出,頭大如囷,目如二尺鏡,聞餈香氣,先啖食之。寄便放犬,犬就齧咋,寄從後斲蛇。因踴出,至庭而死。寄入視穴,得其九女髑髏,悉舉出,咤言曰:「汝曹怯弱,為蛇所食,甚可哀愍!」於是寄女緩步而歸。越王聞之,聘寄為後,拜其父為將樂令,母及姊皆有賞賜,自是東冶無復妖邪。〔議〕劉季斲殺蛇,遂作帝;李寄斲殺蛇,遂作後。天下未嘗無對。
新字:請好剣及咋蛇犬,至八月朝,懐剣将犬詣廟中坐,先作数石米餈蜜麦少,以置穴口,蛇夜便出,頭大如囷,目如二尺鏡,聞餈香気,先啖食之。寄便放犬,犬就齧咋,寄従後斲蛇。因踴出,至庭而死。寄入視穴,得其九女髑髏,悉舉出,咤言曰:「汝曹怯弱,為蛇所食,甚可哀愍!」於是寄女緩歩而帰。越王聞之,聘寄為後,拝其父為将楽令,母及姊皆有賞賜,自是東冶無復妖邪。〔議〕劉季斲殺蛇,遂作帝;李寄斲殺蛇,遂作後。天下未嘗無対。
書き下し
好剣と咋蛇犬とを請い、八月の朝に至り、剣を懐き犬を将いて廟中に詣りて坐す。先ず数石の米餈の蜜麦少なきを作り、以て穴口に置く。蛇は夜に便ち出で、頭の大きさ囷の如く、目は二尺の鏡の如し。餈の香気を聞ぎ、先ず之を啖食す。寄は便ち犬を放ち、犬は就きて齧咋し、寄は後ろより蛇を斲る。因りて踴り出で、庭に至りて死す。寄は入りて穴を視、其の九女の髑髏を得て、悉く挙げ出し、咤して言いて曰く、「汝が曹、怯弱にして、蛇の食らう所と為る。甚だ哀愍すべし」と。是に於いて寄女は緩歩して帰る。越王之を聞き、寄を聘して后と為し、其の父を拝して将楽令と為し、母及び姊には皆賞賜有り。是れより東冶に復た妖邪無し。〔議〕劉季蛇を斲殺して、遂に帝と作る。李寄蛇を斲殺して、遂に后と作る。天下未だ嘗て対無きにあらず。
現代語訳
寄は良い剣と蛇を噛む犬を願い出て、八月の祭りの朝になると、剣を懐に入れ犬を連れて廟に行って座った。まず数石分の米の餅に蜜と麦こがしを少し混ぜたものを作り、穴の入り口に置いた。蛇は夜になって出てきたが、頭は米倉ほどの大きさで、目は直径二尺の鏡のようであった。餅の香りをかぎつけ、まずそれを食らい始めた。寄はすぐに犬を放ち、犬が飛びかかって噛みつくと、寄は後ろから蛇に斬りつけた。蛇は跳ね上がって出て、庭までたどり着いて死んだ。寄は穴に入って中を見て、九人の娘の髑髏を見つけて、すべて運び出し、嘆いて言った。「おまえたちは、臆病で弱かったから、蛇に食われたのだ。なんとも哀れなことだ」。そうして寄は悠然と歩いて帰った。越王はこれを聞き、寄を迎えて后とし、その父を将楽県の令に任じ、母と姉たちにもみな褒美を与えた。それ以来、東冶には二度と妖しい災いはなくなった。〔議〕劉邦は蛇を斬って、ついに皇帝になった。李寄は蛇を斬って、ついに后になった。世の中に好敵手がいなかった試しはない。
解説
この章句が説くこと
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『智囊』雄略・李寄東越の閩中に庸嶺有り、高さ数十里。其の西北の隰中に大蛇有り、長さ七八丈、囲み一丈。土俗常に懼れ、東冶の都尉及び属城の長吏の死する者多く有り、祭るに牛羊を以てするも、故に禍を得ず。或いは人に夢し、或いは巫祝に喻し、童女の年十二三なる者を啖わんと欲す。都尉、令長之を患い、共に人家の生婢子兼ねて罪有る家の女を求めて之を養い、八月の朝祭に至りて蛇穴の口に送れば、蛇は輒ち夜に出でて之を呑み齧う。年を累ぬること此の如く、前後已に九女を用う。一歳、将に之を祀らんとして、募索するも未だ得ず。将楽県の李誕の家に六女有り、男無し。其の小女の名は寄、募に応じて行かんと欲す。父母聴さず。寄曰く、「父母相留むること無かれ。今唯だ六女を生みて、一男も有ること無く、有りと雖も無きが如し。女は緹縈の父母を済うの功無く、既に供養する能わず、徒らに衣食を費やして、生きて益する所無し。早く死するに如かず。寄の身を売らば、少鈔を得て以て父母に供すべし。豈に善からずや」と。父母慈憐して去らしめず。終に禁止すべからず、寄は乃ち行く。
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『智囊』雄略・李成梁夫人相伝う、李帥成梁の夫人は乃ち遼陽の民家の女なり。遼民は時に寇掠に苦しみ、往往にして深き井を掘りて以て貨財を蔵す。此の家は寇を避けて去り、独り女を留めて井中に伏して守らしむ。二寇有り、其の室に入り、井中に人有るを覚る。一人は縋を懸けて下り、女を得て甚だ喜び、党を呼びて先ず女を牽き上げしむ。党は復た臨み視て、縋を下らんと欲す。女は後より遽かに推し墮とし、即ち物を以て之に圧蓋し、馬を門に繋ぐを得て、跨りて走る。数日して寇退き、父母俱に家に還り、女は其の故を言う。相与に二寇を斃し、首を取りて賞を邀む。李帥は時に伍に在り、女の智略を聞き、求めて婦と為し、後に一品夫人と為る。
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『智囊』雄略・竇良女李希烈が汴に入ったとき、参軍の竇良の女を強いて娶った。女は父を顧みて言った、「慎んで戚うことなかれ。我は賊を滅ぼせる。」女は希烈の将の陳仙奇が忠勇であると聞き、よって希烈にこれを任ずることを勧めた。また、その妻もまた竇姓であると聞き、希烈に言って、通家して往来することを願い、以てその心を結んだ。希烈に疾があるに及び、竇女は間に乗じて仙奇の妻に謂って言った、「賊は強いといえども、終には必ず敗れます。どうしますか。」妻が仙奇に告げ、仙奇ははじめて悟り、医人に賂して毒殺させ、希烈は已に死んだ。子は喪を発することを肯んぜず、悉く諸将を誅して自ら立とうとした。たまたま桃を献じる者があり、竇女は分け遺って諸将に示し暇を示すことを請い、因って帛を染めて絮を裹み桃の状のようにして、書信をその中に藏した。仙奇の妻が桃を剖り、始めて希烈の凶信を知った。仙奇は兵を率いて入り、希烈の子を斬り、並びに希烈の一門を梟して共に七首し、天子に献じた。詔して淮西節度使に拝した。
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『智囊』雄略・邑宰妾守る者は金を分かつを貪り、忍ぶ能わず、足は覚えず前む。宰は間を以て潜かに逸す。衆は金を懐にして既に饜き、出でて宰を失うを視、懼れて走らんと欲す。妾は弱き者一人を択びて力めて之を持し、大いに呼ぶ、「攫金の賊在り」と。衆は奮拳して斉しく毆り、歯甲俱に集う。妾は且に死せんとするも、終に釈かず、声愈いよ厲し。外の人を動かし、外の人入り、衆は竄り、其の一を獲たり。並びに妾の持する所の者と両人を、巡城の潘御史の中に送る。妾は群凶の淫貪の状を訴え、兼ねて失う所の鬻産の銀数を具す。此の両人は諱む能わず、尽く其の党の姓名を供す。頃之くして、悉く擒えて至り、銀は猶お懐に在り。而して犯官の逸出するを以て解と為す。御史は詔獄を視しむるに、則ち宰焉に在り、衆は語塞がり、乃ち罪を不肖の姪に委ぬ。御史は姪を収め、尽く箠の下に斃す。妾は故の金を取りて帰り、数を籍して宰に報じ、病むこと数日にして、乃ち死す。〔評〕獄中の囚の私に出入するは、法に非ざるなり。詔獄甚だし。方に群邏の押し至るや、宰を以て奇貨と為さざらんや。膽薄と言いて其の志を堅くし、金多しと言いて其の欲に中て、謔を忍びて以て之を堅くし、空橐を以て之を餌す。守者を怠らせて宰を逸すは、固より已に吾が算の中に在り。其の不意に出で、一弱を持して以て衆強を羈す。仮令い身は老拳の下に斃るるとも、罪人其れ免れんや。群凶先に我が死するに至りても、目は瞑すべきなり。婦の智は言うを必とせず。独り其の猝にして乱れず、死して怵れず、従容として功に就くは、丈夫の智の逮ばざる所有り。惜しむらくは伝うる者其の名を逸す。然りと雖も、千秋の下、一邑宰の妾有りて浣紗女、鋭司徒の妻、車中の女子の儔に在るを知らば、斯れ友無しと為さざるなり。
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『智囊』雄略・謝小娥更に男子の服を為し、江湖の間に傭保す。歳余にして、潯陽郡に至り、紙の榜子もて傭者を召すを見る。娥応じて召され、其の主を問えば、果たして申蘭なり。娥は心に憤るも貌は順い、蘭の左右に在ること、積むこと二歳余、甚だ親愛せられ、金帛の出入の数は之に委ねざる無し。謝の衣物器具を睹る毎に、未だ嘗て暗に泣かずんばあらず。蘭と春とは、宗の昆弟なり。春の家は大江の北、独樹浦に在り、往来して密洽す。一日、春は大鯉と酒とを携えて蘭に詣り、夕に至りて、群賊畢く至り、酣飲す。諸凶既に去るに暨び、春は沈酔して内室に臥す。蘭も亦庭に覆寝す。小娥は潜かに春を内に鎖し、佩刃を抽きて先ず蘭の首を斬り、呼号して鄰人並びに至る。春は内に擒われ、蘭は外に死し、贓貨を獲ること数千万に至る。初め、蘭、春に党数十人有り、暗に其の名を記し、悉く擒えて戮に就かしむ。時に潯陽の太守張公、其の孝節を嘉して死を免ず。娥は竟に髪を剪りて尼と為り以て終わる。〔評〕其の智勇は或いは之有らん、其の堅忍の処は、万万及び難し。
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