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智囊 / 雄略・劉太妃

太妃劉氏,晉王克用妻也。克用追黃巢,還軍過梁,朱溫陽為歡宴,陰伏兵,夜半攻之。克用逃歸,即議擊溫,劉諫曰:「公本為國討賊,今梁事未暴,而遽反兵相攻,天下聞之,莫分曲直,不若斂軍還鎮,自訴於朝,然後可聲罪也。」克用悟,從之,天下於是不直溫。〔按〕克用困上源驛,左右先脫歸者,以汴人為變告劉。劉神色不動,立斬之,陰召大將約束,謀保軍以還。此其智勇,豈克用所可及哉?假令克用不幸而死,必能為張茂之妻;設猶幸未死,必能為邵續之女。雖然,為張茂之妻、邵續之女易,為劉太妃難。何也?其勇可及,其智不可及也!張茂為吳郡守,被江充所害,妻陸氏率茂部曲為先登討充。充敗,遂為陸所殺。邵續女嫁劉遐,遐為石季龍所困。女將數騎拔圍,出遐於萬人之中。

新字:太妃劉氏,晋王克用妻也。克用追黄巣,還軍過梁,朱温陽為歓宴,陰伏兵,夜半攻之。克用逃帰,即議撃温,劉諫曰:「公本為国討賊,今梁事未暴,而遽反兵相攻,天下聞之,莫分曲直,不若斂軍還鎮,自訴於朝,然後可声罪也。」克用悟,従之,天下於是不直温。〔按〕克用困上源駅,左右先脱帰者,以汴人為変告劉。劉神色不動,立斬之,陰召大将約束,謀保軍以還。此其智勇,豈克用所可及哉?仮令克用不幸而死,必能為張茂之妻;設猶幸未死,必能為邵続之女。雖然,為張茂之妻、邵続之女易,為劉太妃難。何也?其勇可及,其智不可及也!張茂為呉郡守,被江充所害,妻陸氏率茂部曲為先登討充。充敗,遂為陸所殺。邵続女嫁劉遐,遐為石季竜所困。女将数騎抜囲,出遐於万人之中。

書き下し

太妃劉氏は、晋王克用の妻である。克用が黄巣を追って軍を還して梁を過ぎたとき、朱温は陽に歓宴を為し、陰に兵を伏せ、夜半にこれを攻めた。克用は逃げ帰り、すぐに温を撃つことを議した。劉は諫めて言った、「公は本もと国の為に賊を討ったのです。いま梁の事はまだ暴かれず、遽かに兵を反して相い攻めるなら、天下はこれを聞いて、曲直を分かたないでしょう。軍を斂めて鎮に還り、自ら朝に訴え、しかる後に罪を声すべきです。」克用は悟ってこれに従い、天下はここにおいて温を直しとしなかった。〔按〕克用が上源駅に困しんだとき、左右の先に脱して帰った者は、汴人が変を為したことを劉に告げた。劉は神色を動かさず、立ちどころにこれを斬り、陰かに大将を召して約束し、軍を保って還ることを謀った。これは智勇であり、どうして克用の及ぶ所であろうか。仮令い克用が不幸にして死んでも、必ず張茂の妻となり得ただろう。設い猶お幸いに未だ死ななくても、必ず邵続の女となり得ただろう。そうであっても、張茂の妻、邵続の女となるのは易く、劉太妃となるのは難い。なぜか。その勇は及ぶべきだが、その智は及ぶべからざるからである。張茂は呉郡の守となり、江充に害せられ、妻の陸氏は茂の部曲を率いて先登となり充を討った。充は敗れ、ついに陸に殺された。邵続の女は劉遐に嫁ぎ、遐は石季龍に困しめられた。女は数騎を将いて囲みを抜け、遐を万人の中から出した。

現代語訳

太妃劉氏は、晋王李克用の妻である。克用が黄巣を追討して軍を引き返し、梁(汴州)に立ち寄ったとき、朱温は表向きは歓迎の宴を開きながら、密かに兵を伏せ、夜中に攻撃した。克用は逃げ帰り、すぐに朱温を攻撃しようと相談した。劉氏は諫めて言った。「あなたはもともと国のために賊を討伐されたのです。いまは梁の悪事がまだ世間に明らかになっていません。それなのに急に兵を返して攻めれば、天下はそれを聞いて、どちらに非があるかを判断できないでしょう。軍をまとめて任地に戻り、自ら朝廷に訴え出て、そのうえで罪を責めるべきです。」克用は悟ってこれに従い、天下は朱温に非があると判断した。〔按〕克用が上源駅で窮地に陥ったとき、先に逃げ帰った側近が、汴の人が謀反を起こしたと劉氏に告げた。劉氏は顔色も変えず、その場でその者を斬り、密かに大将たちを呼んで申し合わせ、軍を保って引き返す計画を立てた。これこそ智勇であり、克用の及ぶところではない。もし克用が不幸にして死んだとしても、きっと張茂の妻のようになれただろう。もし幸いに死ななかったとしても、きっと邵続の娘のようになれただろう。しかし、張茂の妻や邵続の娘のようになるのは易しく、劉太妃のようになるのは難しい。なぜか。その勇は真似できても、智は真似できないからである。張茂は呉郡太守となり、江充に害され、妻の陸氏は茂の部下を率いて先陣に立って江充を討った。江充は敗れ、ついに陸氏に殺された。邵続の娘は劉遐に嫁いでいたが、遐が石季龍に包囲されたとき、娘は数騎を率いて囲みを破り、万人の中から遐を救い出した。

解説

劉氏は、奇襲を受けて怒りに燃える夫を止め、まず朝廷に訴えて天下に正邪を示すという順序を提案しました。報復を急げば、非は朱温だけにあるという構図が崩れてしまいます。企業でも、不当な扱いを受けたとき、感情のまま反撃すると、第三者から見て争いの両成敗になってしまう場合があります。事実を記録し、正式な場で訴え、世論や組織の判断を味方につける手順が、結果として強い立場を作ります。馮夢龍は、勇を示した他の女性と比べ、劉氏の智を一段上に置いています。ただし、側近をその場で斬った処置は動揺を抑えるための非情な措置で、現代の組織運営には当てはまりません。

この章句が説くこと

莫分曲直自訴於朝声罪危機管理世論順序

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