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智囊 / 集哲・李衡妻

丹陽太守李衡,數以事侵瑯琊王。其妻習氏諫之,不聽。及瑯琊即位,衡憂懼不知所出。妻曰:「王素女善慕名,方欲自顯於天下,終不以私嫌殺君明矣。君宜自囚詣獄,表列前失,明求受罪,如此當逆見優饒,非止活也。」衡從之,吳主詔曰:「丹陽太守李衡以往事之嫌,自拘司獄,其遣衡還郡。」

新字:丹陽太守李衡,数以事侵瑯琊王。其妻習氏諫之,不聴。及瑯琊即位,衡憂懼不知所出。妻曰:「王素女善慕名,方欲自顕於天下,終不以私嫌殺君明矣。君宜自囚詣獄,表列前失,明求受罪,如此当逆見優饒,非止活也。」衡従之,呉主詔曰:「丹陽太守李衡以往事之嫌,自拘司獄,其遣衡還郡。」

書き下し

丹陽太守の李衡は、たびたび事に託して瑯琊王を侵した。その妻の習氏は諫めたが、聞き入れなかった。瑯琊王が即位すると、衡は憂え懼れて出づる所を知らなかった。妻は言った、「王は素より名を慕うことを善しとし、まさに自ら天下に顕れようとしておられます。私嫌を以て君を殺すことはないのは明らかです。君は自ら獄に詣でて囚われ、表して前の失を列べ、明らかに罪を受けんことを求めなさい。かくすればかえって優遇され、ただ命が助かるだけではありません。」衡はこれに従い、呉主は詔して言った、「丹陽太守李衡は、往事の嫌を以て、自ら司獄に拘された。衡を郡に還らせよ。」

現代語訳

丹陽太守の李衡は、何かにつけて瑯琊王を侵害していた。妻の習氏は諫めたが、衡は聞き入れなかった。のちに瑯琊王が即位すると、衡は恐れ憂えてどうしてよいか分からなくなった。妻は言った。「王はもともと名声を重んじる方で、いまこそ天下に自分を顕そうとしておられます。私的な恨みで君を殺すことはないはずです。君は自ら獄に出向いて身柄を預け、上表して以前の過失を列挙し、はっきりと罪を受けたいと願い出なさい。そうすれば、かえって厚遇されるでしょう。命が助かるどころではありません。」衡はこれに従った。すると呉主は詔を下して言った。「丹陽太守李衡は、過去のいきさつのために自ら獄に身を拘束した。衡を郡に帰らせよ。」

解説

李衡は新しい君主にかつて逆らった立場で、報復を恐れていました。妻は、相手が名声を大事にする人物だと見抜いたうえで、逃げ隠れせず先に罪を認めるのが最善と助言しました。度量を示したい新君主にとって、許す機会を与えられることは都合のよい展開です。立場が入れ替わった上司に対し、過去の対立を放置して怯えるより、自分から事実を認めて誠実に動くほうが信頼を取り戻しやすいことを示します。相手の価値観と欲しがっているものを読む力が、保身の策としても働いています。ただし、これは相手が名を重んじる場合に限る賭けでもある点は注意が必要です。

この章句が説くこと

自囚詣獄表列前失慕名危機管理人心把握謝罪

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