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智囊 / 武案・任瑰・唐太宗

徐敬業舉兵,問計於軍師魏思溫。對曰:「公既以太后幽係天子,宜身自將兵,直趨洛陽、山東,韓、魏知公勤王,附者必眾,天下指日定矣。」敬業曰:「不然,金陵負江,王氣尚在,宜先並常、潤為霸基,然後鼓行而北。」思溫曰:「鄭、汴、徐、亳,世皆豪傑,不願武後居上,蒸麥為飯,以待我師,奈何欲守金陵,投死地乎?」敬業不從,使敬猷屯淮陰,韋超屯都梁山,而自引兵擊潤州,下之。思溫歎曰:「兵忌分,敬業不知席捲渡淮,率山東士先襲東都,吾知無能為矣!」李密為玄感策何智,自為策又何愚也?思溫之謀善矣,而敬業本謀,實不為勤王,奈何從之?李士實亦勸逆濠直搗南都,勿攻安慶,亦李、魏之故智,濠不聽而敗。夫隋煬弒虐,則天篡統;二李舉兵,猶曰有名。彼逆濠何為者哉?天不佑叛賊,即直搗南都,亦未見其必勝也。按,宸濠兵起,聲言直取南京,道經安慶。太守張文錦與守備楊銳等合謀,令軍士鼓噪登城大罵,激怒逆濠,使頓兵挫銳於堅城之下,而守仁得成其功,雖天奪其魄,而文錦諸人之智亦足術也。

新字:徐敬業舉兵,問計於軍師魏思温。対曰:「公既以太后幽係天子,宜身自将兵,直趨洛陽、山東,韓、魏知公勤王,附者必衆,天下指日定矣。」敬業曰:「不然,金陵負江,王気尚在,宜先並常、潤為覇基,然後鼓行而北。」思温曰:「鄭、汴、徐、亳,世皆豪傑,不願武後居上,蒸麦為飯,以待我師,奈何欲守金陵,投死地乎?」敬業不従,使敬猷屯淮陰,韋超屯都梁山,而自引兵撃潤州,下之。思温嘆曰:「兵忌分,敬業不知席捲渡淮,率山東士先襲東都,吾知無能為矣!」李密為玄感策何智,自為策又何愚也?思温之謀善矣,而敬業本謀,実不為勤王,奈何従之?李士実亦勧逆濠直搗南都,勿攻安慶,亦李、魏之故智,濠不聴而敗。夫隋煬弒虐,則天篡統;二李舉兵,猶曰有名。彼逆濠何為者哉?天不佑叛賊,即直搗南都,亦未見其必勝也。按,宸濠兵起,声言直取南京,道経安慶。太守張文錦与守備楊鋭等合謀,令軍士鼓噪登城大罵,激怒逆濠,使頓兵挫鋭於堅城之下,而守仁得成其功,雖天奪其魄,而文錦諸人之智亦足術也。

書き下し

徐敬業兵を挙げ、計を軍師魏思温に問う。対えて曰く、「公既に太后の天子を幽係するを以てす、宜しく身自ら兵を将い、直ちに洛陽、山東に趨くべし。韓、魏は公の勤王を知らば、附く者必ず衆く、天下指日にして定まらん」と。敬業曰く、「然らず。金陵は江を負い、王気尚お在り、宜しく先ず常、潤を並せて覇基と為し、然る後に鼓行して北すべし」と。思温曰く、「鄭、汴、徐、亳は、世々皆な豪傑、武后の上に居るを願わず、麦を蒸して飯と為し、以て我が師を待つ。奈何ぞ金陵を守らんと欲し、死地に投ぜんや」と。敬業従わず、敬猷をして淮陰に屯せしめ、韋超をして都梁山に屯せしめ、而して自ら兵を引いて潤州を撃ち、之を下す。思温歎じて曰く、「兵は分かつを忌む。敬業は席巻して淮を渡り、山東の士を率いて先ず東都を襲うを知らず、吾れ能く為す無きを知る」と。李密の玄感の為に策するは何ぞ智なるや、自ら策を為すは又た何ぞ愚なるや。思温の謀は善し、而して敬業の本謀は、実は勤王を為さず、奈何ぞ之に従わん。李士実も亦た逆濠に勧めて直ちに南都を搗き、安慶を攻むる勿れと。亦た李、魏の故智なり。濠聴かずして敗る。夫れ隋煬は弑虐し、則天は統を篡う。二李の兵を挙ぐるは、猶お名有りと曰う。彼の逆濠は何為る者ぞ。天叛賊を佑けず、即い直ちに南都を搗くも、亦た未だ其の必勝を見ざるなり。按ずるに、宸濠の兵起こるや、声して直ちに南京を取らんと言い、道は安慶を経。太守張文錦、守備楊鋭らと合謀し、軍士をして鼓噪して城に登りて大罵せしめ、逆濠を激怒せしめ、兵を堅城の下に頓し鋭を挫かしむ。而して守仁其の功を成すを得たり。天其の魄を奪うと雖も、文錦諸人の智も亦た術とするに足るなり。

現代語訳

徐敬業が挙兵したとき、軍師の魏思温に策を尋ねた。思温は答えた。「あなたは太后が天子を幽閉していることを名分としているのですから、自ら兵を率いてまっすぐ洛陽と山東へ向かうべきです。韓や魏の地は、あなたが王室を助けるために立ったと知れば従う者が多く、天下はすぐに定まります」。敬業は言った。「そうではない。金陵は長江を背にして王者の気がまだある。まず常州と潤州を併せて覇業の基礎とし、そののちに太鼓を鳴らして北上すべきだ」。思温は言った。「鄭、汴、徐、亳は代々豪傑の地で、武后が上にいるのを望まず、麦を蒸して飯を作って我が軍を待っています。どうして金陵を守って死地に身を投じるのですか」。敬業は従わず、敬猷を淮陰に、韋超を都梁山に駐屯させ、自分は兵を率いて潤州を攻めて落とした。思温は嘆いて言った。「兵は分けることを忌む。敬業は筵を巻くように淮水を渡り、山東の兵を率いてまず東都を襲うことを知らない。私にはもう打つ手がない」。李密は楊玄感のためにはなんと賢く策を立て、自分のためにはなんと愚かな策を立てたのか。思温の謀は善いが、敬業の本心は実は王室を助けることではなかった。どうして従えようか。李士実も逆賊の宸濠に、まっすぐ南京を突き、安慶を攻めるなと勧めた。これも李密と魏思温の策と同じだが、濠は聞かずに敗れた。隋の煬帝は君主を殺し民を虐げ、則天は帝位を奪った。この二人に挙兵した李氏には、まだ名分があったといえる。あの宸濠は何者だというのか。天は叛賊を助けないから、たとえ南京を突いても必ず勝てたかは分からない。考えてみると、宸濠が挙兵したとき、南京を直接取ると言いふらし、道は安慶を通った。太守の張文錦は守備の楊鋭らと謀り、兵に鬨の声を上げさせ城に登って大いに罵らせ、宸濠を怒らせて、堅城の下に兵を止めて鋭気を削がせた。そして王守仁が功を成せた。天が彼の魂を奪ったとはいえ、文錦らの知恵も称賛に値する。

解説

ここでは、良い策を示す軍師と、それを選べない主君の対比が描かれます。魏思温は敵の中心を直接突く策を出しましたが、徐敬業は縁起や本拠の居心地を優先して兵を分散させ、勝機を逃しました。馮夢龍は、策の良し悪しだけでなく、挙兵の名分が本物かどうかで人がついてくるかが決まると見ています。後半の安慶の話では、相手の短気を逆手に取って堅城に足止めさせる、守る側の知恵も語られます。現代でも、戦力を分散する癖のある経営者や、感情を挑発されて本筋から外れる組織は多いものです。集中すべき一点を見極め、相手の怒りに乗らない冷静さが勝敗を分けます。

この章句が説くこと

兵忌分直搗南都鼓行而北戦略判断人材登用名分

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