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智囊 / 武案・張巡

尹子奇圍睢陽,張巡應機守備。賊為雲梯,勢如半虹,置精卒二百於其上,推之臨城,欲令騰入。巡預於城潛鑿三穴,候梯將至,一穴中出大木,末置鐵鉤鉤之,使不得退;一穴中出一大木,柱之使不得進;一穴中出一木,末置鐵籠,盛火焚之。賊又以鉤車鉤城上柵閣,巡以大木置連鎖大環,撥其鉤而截之。賊又造木驢攻城,巡熔金汁灌之;賊又以土囊積柴為磴道,欲登城,巡潛以鬆明,乾蒿投之。積十餘日,使人順風持火焚之。賊服其智,不敢復攻。

新字:尹子奇囲睢陽,張巡応機守備。賊為雲梯,勢如半虹,置精卒二百於其上,推之臨城,欲令騰入。巡預於城潜鑿三穴,候梯将至,一穴中出大木,末置鉄鉤鉤之,使不得退;一穴中出一大木,柱之使不得進;一穴中出一木,末置鉄籠,盛火焚之。賊又以鉤車鉤城上柵閣,巡以大木置連鎖大環,撥其鉤而截之。賊又造木驢攻城,巡熔金汁灌之;賊又以土嚢積柴為磴道,欲登城,巡潜以鬆明,乾蒿投之。積十余日,使人順風持火焚之。賊服其智,不敢復攻。

書き下し

尹子奇、睢陽を囲む。張巡、機に応じて守備す。賊、雲梯を為る。勢いは半虹のごとく、精卒二百を其の上に置き、推して城に臨み、騰入せしめんと欲す。巡、預め城に於いて潜かに三穴を鑿ち、梯の将に至らんとするを候ち、一穴の中より大木を出だし、末に鉄鉤を置きて之を鉤し、退くを得ざらしむ。一穴の中より一大木を出だし、之を柱えて進むを得ざらしむ。一穴の中より一木を出だし、末に鉄籠を置き、火を盛りて之を焚く。賊又た鉤車を以て城上の柵閣を鉤す。巡、大木に連鎖の大環を置き、其の鉤を撥ねて之を截つ。賊又た木驢を造りて城を攻む。巡、金汁を熔かして之に灌ぐ。賊又た土囊と積柴を以て磴道を為り、登らんと欲す。巡、潜かに松明、乾蒿を以て之に投ず。積むこと十余日、人をして風に順いて火を持して之を焚かしむ。賊其の智に服し、敢えて復た攻めず。

現代語訳

尹子奇が睢陽を囲んだ。張巡は臨機応変に守りを固めた。賊は雲梯を作った。その姿は半分の虹のようで、精兵二百を上に乗せ、押して城に迫り、一気に飛び込ませようとした。張巡は前もって城に密かに三つの穴を掘っておき、梯子がいよいよ来ようとするとき、一つの穴から大木を出し、先に鉄の鉤を付けて雲梯を引っ掛け、退けなくした。もう一つの穴から別の大木を出して雲梯を支え、進めなくした。残る一つの穴からは木を出し、先に鉄の籠を付け、火を盛って雲梯を焼いた。賊はまた鉤車で城上の柵や楼閣を引っ掛けようとした。張巡は大木に鎖の大きな輪を付け、その鉤を払って切り取った。賊はまた木驢を作って城を攻めた。張巡は金属を溶かした汁をそれに注いだ。賊はまた土嚢と積んだ柴で階段状の道を作り、登ろうとした。張巡は密かに松明と枯れ草を投げ込んだ。積むこと十日余り、風上から人に火をつけさせて焼いた。賊は張巡の智に感服し、二度と攻めなかった。

解説

雲梯には、引っ掛ける、支える、焼くという三方向の穴からの対処を用意し、鉤車には鎖の輪、木驢には溶けた金属、積柴には十日待っての風上からの火と、敵の道具の性質に合わせた反撃が描かれます。張巡の強みは、相手の攻め手を観察し、その弱点に最も合う道具を事前に準備した点にあります。後に敵が智に服して攻めなくなったとあるのは、守りの徹底が相手の戦意を断つことを示します。現代の管理職も、リスクを一つの対策で済ませず、複数の方向から想定し、事前に仕込んでおく習慣が、いざという時の落ち着きを生みます。

この章句が説くこと

睢陽雲梯三穴金汁風に順う事前準備

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