導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

智囊 / 詭道・田單

世充托夢以誓師。王世充欲擊李密,恐眾心不一,乃假托鬼神,言夢見周公,乃立祀於洛水之上,遣巫言「周公欲令僕射急討李密,當有大功,不則兵皆疫死。」世充兵皆楚人,信巫,故以惑之,眾皆請戰。遂破密,皆神師之遣教也。王德征秀州賊邵青,諜言將用火牛,德曰:「此古法也,可一不可再,彼不知變,只成擒耳。」先命合軍持滿,陣始交,萬矢齊發,牛皆反奔,我師乘之,遂殘賊眾,此可為徒讀父書者之戒。陳濤斜之車戰亦猶是。伯比羸師以張之,賈則累北以誘之。至於田單,直請降矣,其詐彌深,其毒彌甚。勾踐以降吳治吳,伯約以降會謀會。真降且不可信,況詐乎?漢王之誑楚,黃蓋之破曹,皆以降誘也!岑彭、費禕,皆死於降人之手。噫,降可以不察哉?必也,諒己之威信可以致其降者何在?而參之以人情,揆之以兵勢,斷之以事理,度彼不得不降,降而必無變計也。--斯萬全之策矣!

新字:世充托夢以誓師。王世充欲撃李密,恐衆心不一,乃仮托鬼神,言夢見周公,乃立祀於洛水之上,遣巫言「周公欲令僕射急討李密,当有大功,不則兵皆疫死。」世充兵皆楚人,信巫,故以惑之,衆皆請戦。遂破密,皆神師之遣教也。王徳征秀州賊邵青,諜言将用火牛,徳曰:「此古法也,可一不可再,彼不知変,只成擒耳。」先命合軍持満,陣始交,万矢斉発,牛皆反奔,我師乗之,遂残賊衆,此可為徒読父書者之戒。陳濤斜之車戦亦猶是。伯比羸師以張之,賈則累北以誘之。至於田単,直請降矣,其詐弥深,其毒弥甚。勾践以降呉治呉,伯約以降会謀会。真降且不可信,況詐乎?漢王之誑楚,黄蓋之破曹,皆以降誘也!岑彭、費禕,皆死於降人之手。噫,降可以不察哉?必也,諒己之威信可以致其降者何在?而参之以人情,揆之以兵勢,断之以事理,度彼不得不降,降而必無変計也。--斯万全之策矣!

書き下し

世充、夢に托して以て師に誓う。王世充、李密を撃たんと欲するも、衆心の一ならざるを恐れ、乃ち鬼神に仮托し、夢に周公を見ると言い、乃ち祀を洛水の上に立て、巫を遣わして言わしむ、「周公は僕射をして急に李密を討たしめんと欲す。当に大功有るべし。不ずんば則ち兵皆疫死せん」と。世充の兵は皆楚人にして、巫を信ず。故に以てこれを惑わす。衆皆戦を請う。遂に密を破る。皆神師の遣教なりと。王徳、秀州の賊邵青を征するに、諜言う、将に火牛を用いんとすと。徳曰く、「此れ古法なり。一たびすべくして再びすべからず。彼変を知らず、只だ擒と成るのみ」と。先ず全軍に命じて満を持せしめ、陣始めて交わるや、万矢斉しく発し、牛皆反って奔り、我が師これに乗じ、遂に賊衆を残す。此れ徒らに父の書を読む者の戒めと為すべし。陳濤斜の車戦も亦猶し是くのごとし。伯比は羸師以てこれを張り、賈は則ち累北以てこれを誘う。田単に至りては、直ちに降を請えり。其の詐彌々深く、其の毒彌々甚だし。勾践は降を以て呉を治め、伯約は降を以て会を謀る。真の降すら且つ信ずべからず、況んや詐をや。漢王の楚を誑き、黄蓋の曹を破るも、皆降を以て誘うなり。岑彭・費禕は、皆降人の手に死す。噫、降は以て察せざるべけんや。必ずや、己の威信の以て其の降を致すべき者何くに在るかを諒り、而して参するに人情を以てし、揆るに兵勢を以てし、断ずるに事理を以てし、彼の降らざるを得ず、降りて必ず変計無きを度らん。――斯れ万全の策なり。

現代語訳

王世充は夢に託して兵に誓わせた。王世充は李密を討とうとしたが、兵の心がまとまらないのを恐れ、鬼神にかこつけて、夢に周公が現れたと言い、洛水のほとりに祠を立て、巫女に「周公は僕射に急ぎ李密を討たせようとしておられる。必ず大きな手柄があるだろう。そうしなければ兵は皆疫病で死ぬ」と言わせた。世充の兵は皆楚の人で巫女を信じていたので、これで惑わしたのである。兵たちは皆戦いを望み、ついに李密を破った。すべては神がかりの軍の仕掛けによる。王徳が秀州の賊の邵青を討とうとした時、間者が、敵は火牛を使うつもりだと告げた。王徳は「これは古い戦法だ。一度は使えるが二度は通じない。敵は変化を知らず、捕らえられるだけだ」と言った。まず全軍に弓を満月のように引き絞らせ、陣が接した途端に万の矢を一斉に放つと、牛は皆向きを変えて逃げ戻り、わが軍がそこにつけ込んで賊の軍勢を打ち破った。これは、ただ父の書を読んだだけの者への戒めとすべきである。陳濤斜の車戦も同じことだ。伯比は弱い軍を見せて敵を驕らせ、賈は何度も負けて敵を誘った。田単に至っては、まっすぐ降伏を願い出た。そのいつわりはいよいよ深く、その毒はいよいよ甚だしい。勾践は降伏して呉を治め、伯約は降伏を装って鍾会を謀った。本当の降伏でさえ信じられないのに、まして偽りの降伏はなおさらだ。漢王が楚をあざむき、黄蓋が曹操を破ったのも、皆降伏で誘ったものである。岑彭と費禕は、皆降伏した者の手で殺された。ああ、降伏は見極めずにいられようか。必ず、自分の威信で降伏させられる根拠はどこにあるかをはかり、人情で照らし合わせ、軍の勢いで推し量り、事の道理で判断して、相手が降らざるを得ず、降ったあとに心変わりがないと見きわめるべきである。それこそ万全の策である。

解説

神がかりで兵の心をまとめた王世充の話と、古い奇策は二度通じないと見抜いた王徳の話が並んでいます。馮夢龍の評の中心は降伏の扱いで、偽りの降伏は見抜けず、本物の降伏も信じ切れないと説きます。現代の管理職に引き寄せれば、相手の好条件の申し出や、急な恭順に対しても、威信の裏づけ、人情、情勢、道理の四点で確かめる姿勢が要るということでしょう。前例のある手法は相手に読まれることも忘れてはなりません。成功例の模倣より、相手と状況に合わせた判断が肝心です。

この章句が説くこと

托夢火牛降可不察人情兵勢事理判断危機管理

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る