智囊 / 詭道・田單
田單知士卒之可用,乃身操版鍤,與士卒分功,妻妾編於行伍之間,盡散飲食饗士,令甲卒皆伏,使老弱女子乘城,遣使約降於燕。燕皆呼「萬歲」,田單乃收民金,得千鎰,令即墨富豪遺燕將,曰:「即墨即降,願無擄掠吾族家妻妾。」燕將大喜,許之,燕軍由此益懈。單乃收城中,得千餘牛,為絳繒衣,畫以五彩龍文,束兵刃於其角,而灌脂束葦於尾,燒其端,鑿城數十穴,夜縱牛,壯士五千人隨其後,牛尾熱,怒而奔,燕軍夜大驚,牛尾炬火光炫耀,燕軍視之,皆龍文,所觸盡死傷,五千人因銜枚擊之,城中鼓噪從之,老弱皆擊銅器為聲,聲動天地。燕軍大駭,敗走,遂殺騎劫。〔述評〕勝、廣假妖以威眾。陳勝與吳廣謀舉事,欲先威眾,乃丹書帛曰:「陳勝王」。置人所罾魚腹中。卒買魚,烹食,得腹中書,怪之。又令廣於旁近叢祠中,夜篝火作狐鳴,呼曰:「大楚興,陳勝王。」於是卒皆夜驚,旦相率語,往往指目勝。
新字:田単知士卒之可用,乃身操版鍤,与士卒分功,妻妾編於行伍之間,尽散飲食饗士,令甲卒皆伏,使老弱女子乗城,遣使約降於燕。燕皆呼「万歳」,田単乃収民金,得千鎰,令即墨富豪遺燕将,曰:「即墨即降,願無擄掠吾族家妻妾。」燕将大喜,許之,燕軍由此益懈。単乃収城中,得千余牛,為絳繒衣,画以五彩竜文,束兵刃於其角,而灌脂束葦於尾,焼其端,鑿城数十穴,夜縦牛,壮士五千人随其後,牛尾熱,怒而奔,燕軍夜大驚,牛尾炬火光炫耀,燕軍視之,皆竜文,所触尽死傷,五千人因銜枚撃之,城中鼓噪従之,老弱皆撃銅器為声,声動天地。燕軍大駭,敗走,遂殺騎劫。〔述評〕勝、広仮妖以威衆。陳勝与呉広謀舉事,欲先威衆,乃丹書帛曰:「陳勝王」。置人所罾魚腹中。卒買魚,烹食,得腹中書,怪之。又令広於旁近叢祠中,夜篝火作狐鳴,呼曰:「大楚興,陳勝王。」於是卒皆夜驚,旦相率語,往往指目勝。
書き下し
田単、士卒の用うべきを知り、乃ち身ずから版鍤を操り、士卒と功を分かち、妻妾を行伍の間に編し、飲食を尽く散じて士を饗し、甲卒をして皆伏せしめ、老弱女子をして城に乗らしめ、使いを遣わして燕に降るを約す。燕皆「万歳」と呼ぶ。田単乃ち民の金を収め、千鎰を得て、即墨の富豪をして燕将に遺らしめて曰く、「即墨即ち降らば、願わくは我が族家の妻妾を擄掠する無かれ」と。燕将大いに喜び、これを許し、燕軍これより益々懈る。単乃ち城中を収め、千余の牛を得て、為に絳繒の衣を為り、画くに五彩の竜文を以てし、兵刃を其の角に束ね、脂を灌ぎし葦を尾に束ね、其の端を焼き、城に数十の穴を鑿ち、夜牛を縦ち、壮士五千人其の後に随う。牛の尾熱く、怒りて奔り、燕軍夜大いに驚く。牛尾の炬火光り炫耀し、燕軍これを視るに、皆竜文にして、触るる所尽く死傷す。五千人因りて枚を銜みてこれを撃ち、城中は鼓噪してこれに従い、老弱皆銅器を撃ちて声を為し、声天地を動かす。燕軍大いに駭き、敗走し、遂に騎劫を殺す。〔述評〕勝・広、妖に仮りて以て衆を威す。陳勝と呉広と事を挙げんと謀り、先ず衆を威さんと欲し、乃ち丹もて帛に書して曰く「陳勝王たらん」と。人の罾する所の魚の腹中に置く。卒魚を買い、烹て食らい、腹中の書を得て、これを怪しむ。又広をして旁近の叢祠の中に、夜篝火して狐鳴を作し、呼びて曰わしむ、「大楚興り、陳勝王たらん」と。是に於いて卒皆夜驚き、旦に相率いて語り、往往にして勝を指目す。
現代語訳
田単は兵士たちが使えるとみて、自分で板と鍬を手に取り、兵士と仕事を分け合い、妻や妾まで軍の隊列に編み入れ、飲食物をすべて兵士にふるまった。鎧を着た兵は皆伏せさせ、老人や弱者、女子を城壁に上らせ、使者を出して燕に降伏を申し入れた。燕軍は皆「万歳」と叫んだ。田単は民から金を集めて千鎰を得ると、即墨の富豪に燕の将軍へ贈らせ、「即墨がすぐ降伏したら、どうか私たちの一族の妻や妾を略奪しないでほしい」と言わせた。燕の将軍は大いに喜んで承知し、燕軍はますます気をゆるめた。そこで田単は城中から千頭余りの牛を集め、赤い絹の衣を着せて五色の竜の模様を描き、刃物を角に結び、脂を染み込ませた葦を尾に結んで先端に火をつけ、城壁に数十の穴を開けて夜に牛を放ち、屈強な兵五千人がその後に続いた。尾が熱くなった牛は怒って走り、燕軍は夜に大いに驚いた。牛の尾の松明は光り輝き、燕軍が見ると皆竜の模様で、触れたものはことごとく死傷した。五千人は声を出さないよう枚をくわえて攻めかかり、城中は鐘や太鼓を鳴らしてこれに続き、老人や弱者も皆銅の器を打ち鳴らして、その音は天地を揺るがした。燕軍は大いに驚いて敗走し、ついに騎劫を殺した。〔述評〕陳勝と呉広は怪しげな術を借りて人々を威圧した。陳勝と呉広は挙兵を謀り、まず人々を畏れさせようとして、朱で白い絹に「陳勝王たらん」と書き、人が網で捕った魚の腹の中に入れた。兵卒がその魚を買って煮て食べ、腹中の書を見つけて不思議がった。さらに呉広に、近くの叢にある祠で夜に篝火をたき、狐の鳴き声をまねて「大楚が興り、陳勝が王となるぞ」と叫ばせた。兵卒たちは皆夜に驚き、朝にはみなで語り合い、あちこちで陳勝を指さして見るようになった。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『長短経』掩発孫子曰く「善く戦う者は、其の勢い険しく、其の節短し」と。「利を以て之を動かし、卒を以て之を待つ」と。又た曰く「善く敵を動かす者は、之に形すれば、敵必ず従う」と。何を以て其の然るを明らかにせんや。燕、斉を平らげ、即墨城を囲む。即墨城中、田単を推して将と為し以て燕を拒ぐ。田単其の卒を激怒せしめんと欲し、乃ち宣言して曰く「吾唯だ燕の将の得る所の斉の卒を劓し、及び城外の墳墓を掘り、先人を擢かんことを恐る。寒心すべし」と。燕の将其の言の如くす。即墨の人皆涕泣し、共に出でて戦わんと欲し、怒り皆十倍す。単乃ち人の金を収め、千鎰を得て、即墨の富豪をして燕の将に遺らしめ、書して曰く「即墨即ち降らん。願わくは吾が家族を虜にせざれ」と。燕の将大いに喜び、益々懈る。乃ち牛を収めて千頭を得、葦を尾に束ね、其の端を焼き、数十の穴を鑿ち、夜牛を縦ちて出だす。壮士五千人を以て其の後に随わしむ。牛の尾熱くして燕に奔る。燕の軍大いに驚く。随う所の五千、因りて枚を銜みて之を撃つ。燕の軍大いに敗れ、其の将騎劫を殺し、斉の七十余城を復す。
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孫子・虚実篇その趨かざる所に出で、その意わざる所に趨く。
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孫子・始計篇その備えなき所を攻め、その意に出でざる所に出づ。
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孫子・行軍篇兵怒りて相迎え、久しくして合わず、又相去らざるは、必ず謹んでこれを察すべし。
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史記 秦本紀繆公聞き、怒りて曰く、「孤兵を発して子沮みて吾が軍を哭するは、何ぞや」と。二老曰く、「臣敢へて君の軍を沮むに非ず。軍行くに、臣の子与に往く。臣老いたり、遅く還らば相見ざらんことを恐る、故に哭するのみ」と。二老退きて、其の子に謂ひて曰く、「汝の軍即し敗れなば、必ず殽の阨に於てせん」と。三十三年春、秦の兵遂に東し、晋の地を更り、周の北門を過ぐ。周の王孫満曰く、「秦の師礼無し、敗れずして何をか待たん」と。兵滑に至る。鄭の販売の賈人弦高、十二牛を持ちて将に之を周に売らんとす。秦の兵を見て、死虜を恐れ、因りて其の牛を献じて、曰く、「大国将に鄭を誅せんとすと聞く。鄭君謹んで守御の備へを修め、臣をして牛十二を以て軍士を労はしむ」と。秦の三将軍相謂ひて曰く、「将に鄭を襲はんとす。鄭今已に之を覚る、往くも及ぶ無し」と。滑を滅ぼす。滑は、晋の辺邑なり。是の時に当たり、晋の文公の喪尚ほ未だ葬らず。太子襄公怒りて曰く、「秦我が孤を侮り、喪に因りて我が滑を破る」と。遂に衰絰を墨くし、
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『春秋左氏伝』昭公十七年 彗星と火災の予言九月、丁卯、晉の荀吳師を帥ゐて、棘津より涉り、祭史をして先づ牲を雒に用ゐしむ。陸渾の人知らず。師之に從ふ。庚午、遂に陸渾を滅ぼす。之を數むるに其の楚に貳するを以てす。陸渾子楚に奔り、其の衆甘鹿に奔る。周大いに獲たり。宣子、文公荀吳を攜へて之に陸渾を授くるを夢む。故に穆子をして師を帥ゐしめ、俘を文宮に獻ず。冬、星大辰に孛する有り、西のかた漢に及ぶ。申須曰く、「彗は舊を除き新を布く所以なり。天事は恆に象あり。今火に除く。火出づれば必ず布かん。諸侯其れ火災有らんか」と。梓慎曰く、「往年吾之を見る。是れ其の徵なり。火出でて見ゆ。今茲火出でて章かなり。必ず火入りて伏せん。其の火に居ること久し。其れ然らざらんや。火出づるは、夏に於いては三月為り、商に於いては四月為り、周に於いては五月為り。夏數天を得たり。若し火作らば、其れ四國之に當たらん。宋・衛・陳・鄭に在らんか。宋は大辰の虛なり。陳は大皞の虛なり。鄭は祝融の虛なり。皆火房なり。星孛して天漢に及ぶ。漢は水祥なり。衛は顓頊の虛なり、故に帝丘為り。其の星は大水為り。水は火の牡なり。其れ丙子若しくは壬午を以て作らんか。水火の合する所以なり。若し火入りて伏せば、必ず壬午を以てし、其の見ゆるの月を過ぎず」と。鄭の裨竈子產に言ひて曰く、「宋・衛・陳・鄭、將に同日に火あらんとす。若し我瓘斝玉瓚を用ゐば、鄭必ず火あらず」と。子產與へず。
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