智囊 / 制勝・趙臣
璋即令人為猛具草,促猛出印封之,既知猛印所在,乃置酒賀猛,鼓樂殷作,酒半,璋持鴆飲猛曰:「天兵索君甚急,不能相庇。」猛大呼曰:「墮老奸矣。」遂飲藥死。璋斬其首,並印從間道馳詣軍門。而斬他囚貫猛屍,詣擲諸軍,諸軍囂爭,擊殺十餘人,飈馳軍門,則猛首已梟一日矣。諸將大恚恨,遂浸淫毀璋,而布政某等復陰害鏌,倡言猛實不死,死者道士錢一真也。御史石金遂劾鏌落職,而希儀等功俱不敘。璋怏怏,遂黃冠學道。〔述〕田汝成曰:「岑猛之伏誅也,岑璋掎之,趙臣啟之,沈希儀王之,而功皆不錄,其何以勸後?兩廣威令浸不行於土官,類此。書生無遠略,瑣瑣戚戚,興逸參也,寧惜軍國重輕哉!」王弇州一代史才,其敘岑猛事,亦云猛實不死,豈惑於石侍御之言耶?李福達之獄,朝是暮非,迄無確見。不知異日又何以定真偽也!
新字:璋即令人為猛具草,促猛出印封之,既知猛印所在,乃置酒賀猛,鼓楽殷作,酒半,璋持鴆飲猛曰:「天兵索君甚急,不能相庇。」猛大呼曰:「堕老奸矣。」遂飲薬死。璋斬其首,並印従間道馳詣軍門。而斬他囚貫猛屍,詣擲諸軍,諸軍囂争,撃殺十余人,飈馳軍門,則猛首已梟一日矣。諸将大恚恨,遂浸淫毀璋,而布政某等復陰害鏌,倡言猛実不死,死者道士銭一真也。御史石金遂劾鏌落職,而希儀等功倶不敘。璋怏怏,遂黄冠学道。〔述〕田汝成曰:「岑猛之伏誅也,岑璋掎之,趙臣啓之,沈希儀王之,而功皆不録,其何以勧後?両広威令浸不行於土官,類此。書生無遠略,瑣瑣戚戚,興逸参也,寧惜軍国重軽哉!」王弇州一代史才,其敘岑猛事,亦云猛実不死,豈惑於石侍御之言耶?李福達之獄,朝是暮非,迄無確見。不知異日又何以定真偽也!
書き下し
璋、即ち人をして猛の為に草を具えしめ、猛に促して印を出して之を封ぜしむ。既に猛の印の所在を知り、乃ち酒を置きて猛を賀し、鼓樂殷として作る。酒半ばにして、璋、鴆を持して猛に飲ませて曰く、「天兵、君を索むること甚だ急なり。相い庇う能わず」と。猛、大いに呼びて曰く、「老奸に墮ちたり」と。遂に藥を飲みて死す。璋、其の首を斬り、印と並せて間道より軍門に馳せ詣る。而して他の囚を斬りて猛の屍に貫き、諸軍に詣りて擲つ。諸軍、囂爭し、擊殺すること十餘人。飈のごとく軍門に馳せ、則ち猛の首、已に梟して一日なり。諸將、大いに恚恨し、遂に浸淫して璋を毀つ。而して布政某ら、復た陰かに鏌を害し、倡言す、猛は實は死せず、死する者は道士錢一真なりと。御史石金、遂に鏌を劾して職を落とし、而して希儀らの功、俱に敘せられず。璋、怏怏として、遂に黃冠して道を學ぶ。〔述〕田汝成曰く、「岑猛の伏誅するや、岑璋、之を掎み、趙臣、之を啟き、沈希儀、之を王す。而れども功は皆な錄せられず。其れ何を以て後を勸めんや。兩廣の威令、浸く土官に行われざるは、類は此の如し。書生は遠略無く、瑣瑣戚戚として、逸參を興す。寧ろ軍國の重輕を惜しまんや」と。王弇州は一代の史才なるに、其の岑猛の事を敘ぬるに、亦た猛は實は死せずと云う。豈に石侍御の言に惑わされしか。李福達の獄、朝に是とし暮に非とし、迄に確見無し。知らず、異日、又何を以て真偽を定めんや。
現代語訳
岑璋はすぐに人に岑猛のために草稿を作らせ、岑猛に印を出して封をするように促しました。すでに岑猛の印の所在を知ると、酒席を設けて岑猛を祝い、鼓や楽の音が盛んに起こりました。酒宴の半ばに、岑璋は毒酒を持って岑猛に飲ませて言いました。「天兵が君を求めること急で、庇いきれない」。岑猛は大声で叫びました。「老獪な奸物にしてやられた」。そのまま毒を飲んで死にました。岑璋はその首を斬り、印と共に間道から軍門に馳せ参じました。そして別の囚人を斬って岑猛の屍に見せかけ、諸軍に投げ与えました。諸軍は争い騒ぎ、十人余りを打ち殺しました。疾風のように軍門に馳せて見ると、岑猛の首はすでに晒されて一日経っていました。諸将は大いに恨み、次第に岑璋を中傷しました。さらに布政使の某らは、またひそかに姚鏌を陥れ、岑猛は実は死んでおらず、死んだのは道士の銭一真だと言いふらしました。御史の石金は、とうとう姚鏌を弾劾して罷免し、沈希儀らの功績もみな叙されませんでした。岑璋は不満をつのらせ、ついに道士の冠をつけて道を学びました。〔述〕田汝成は言います。「岑猛が誅殺されたのは、岑璋が牽制し、趙臣が口火を切り、沈希儀が決着をつけたからである。しかし功績はみな記録されなかった。これでは後の者をどう励ますのか。両広で朝廷の権威が土官にだんだん行き渡らなくなったのは、こうしたことが原因だ。書生は遠大な謀りごとがなく、細かいことにこだわり、讒言を起こす。軍や国の重大さに構わないのか」。王弇州は一代の優れた史家であるのに、岑猛のことを述べて、岑猛は実は死んでいないと言っています。石侍御の言葉に惑わされたのでしょうか。李福達の獄は、朝に是とされ夕べに非とされ、いまだに確かな見解がありません。後世、また何をもって真偽を定めるのでしょうか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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説苑・雜言祁射子、秦の惠王に見え、惠王之を說ぶ。是に於いて唐姑之を讒し、復た見ゆるに、惠王怒りを懷きて以て之を待つ。其の說く所異なるに非ざるなり、聽く所の易わればなり。故に徵を以て羽と為すは、絃の罪に非ざるなり。甘きを以て苦しと為すは、味を限るの過ちなり。
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『大和俗訓』巻之五・言語一人をほめ毀ること、つつしんで過不及なかるべし。人の小悪を大悪に言ひなし、小過を大過に言ひなし、虚なることを実に言ひなすは、讒言なり。又左程なきことを、甚しく人をほめ過すも、正直の道にあらず。へつらひて其人に私するなり。誉めそしること、かるがるしくすべからず。たとへば権量を以て、物の軽重をはかるが如くなるべし。一毫もかろくし重くして、過不及あるべからず。誉むべからざる人をほめ、毀るべからざる人をそしり、或はほめ過し、そしり過すは、ともに不智なり。論語に子貢曰、君子は一言以て智とし、一言以て不智とす。言慎まずんばあるべからずといへり。よき人は、許可をつつしむとて、人をみだりにゆるしほめず。されども、小善をもすてず、一芸をも用ふるは、君子のする所なり。
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史記 項羽本紀項羽是に由りて始めて諸侯の上将軍と為り、諸侯皆焉に属す。章邯棘原に軍し、項羽漳南に軍し、相持して未だ戦はず。秦の軍数(しばしば)卻(しりぞ)く、二世人をして章邯を譲(せ)めしむ。章邯恐れ、長史欣をして事を請はしむ。咸陽に至り、司馬門に留まること三日、趙高見ず、信ぜざるの心有り。長史欣恐れ、還りて其の軍に走る、敢へて故道に出でず、趙高果たして人をして之を追はしむるも、及ばず。欣軍に至り、報じて曰く、「趙高中に用事す、下に為すべき者無し。今戦ひて能く勝たば、高必ず吾が功を疾妒せん。戦ひて勝つ能はずんば、死を免れず。願はくは将軍孰(つらつら)之を計れ。」と。陳余も亦章邯に書を遺りて曰く、「白起秦の将為り、南のかた鄢郢を征し、北のかた馬服を阬にし、城を攻め地を略すること、勝げて計ふべからず、而るに竟に死を賜はる。蒙恬秦の将為り、北のかた戎人を逐ひ、楡中の地数千里を開くも、竟に陽周に斬らる。何となれば、功多くして、秦尽くは封ずる能はず、因りて法を以て之を誅すればなり。今将軍秦の将為ること三歳、亡失する所十万を以て数ふ、而るに諸侯并び起こること滋(ますます)益々多し。彼の趙高素より諛ふこと日久し、今事急にして、亦二世の之を誅せんことを恐る、故に法を以て将軍を誅して以て責を塞ぎ、人をして更に将軍に代はらしめて以て其の禍を脱せんと欲す。夫れ将軍外に居ること久しく、内に卻(ひま)多し、功有るも亦誅せられ、功無きも亦誅せらる。且つ天の秦を亡ぼすは、愚智と無く皆之を知る。今将軍内に直諫する能はず、外に亡国の将と為る、孤特独立して常に存せんと欲す、豈に哀しからずや。将軍何ぞ兵を還して諸侯と従を為し、約して共に秦を攻め、其の地を分かちて王とし、南面して孤と称せざる。此れ身鈇質(ふしつ)に伏し、妻子僇(りく)と為るに孰与(いづれ)ぞや。」と。章邯狐疑し、陰かに候始成をして項羽に使ひせしめ、約せんと欲す。約未だ成らず、項羽蒲将軍をして日夜兵を引きて三戸を度(わた)らしめ、漳南に軍し、秦と戦ひ、再び之を破る。項羽悉く兵を引きて秦の軍を汙水の上に撃ち、大いに之を破る。
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『酔古堂剣掃』集醒・謗を造る者は甚だ忙し謗を造る者は甚だ忙しく、謗を受くる者は甚だ閒なり。
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『春秋左氏伝』成公十六年 晋の政、門多し七月、公尹武公及び諸侯に會して鄭を伐つ。將に行かんとす。姜又公に命ずること初めの如し。公又守を申ねて行く。諸侯の師、鄭の西に次る。我が師督揚に次り、敢へて鄭を過ぎず。子叔聲伯叔孫豹をして逆を晉の師に請はしめ、食を鄭の郊に為る。師逆へて以って至る。聲伯四日食はずして以って之を待ち、使者に食はしめて、而る後に食ふ。諸侯制田に遷る。知武子下軍に佐たり、諸侯の師を以って陳を侵し、鳴鹿に至る。遂に蔡を侵して未だ反らず。諸侯潁上に遷る。戊午、鄭の子罕宵に之に軍し、宋・齊・衞皆軍を失ふ。曹人復た晉に請ふ。晉侯子臧に謂ふ、「反れ。吾而の君を歸さん」と。子臧反り、曹伯歸る。子臧盡く其の邑と卿とを致して、出でず。宣伯郤犨に告げしめて曰く、「魯の季・孟有るは、猶ほ晉の欒・范有るがごときなり。政令是に於いてか成る。今其の謀りて曰く、『晉の政は門多し、從ふ可からざるなり。寧ろ齊・楚に事へん。亡ぶる有るのみ。晉に從ふこと蔑からん』と。若し志を魯に得んと欲せば、請ふ行父を止めて之を殺せ。我蔑を斃して晉に事へん。貳有ること蔑からん。魯貳せずんば、小國必ず睦まじ。然らずんば、歸りて必ず叛かん」と。
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